stominaga

はじめまして!

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マガジン

  • IYO夢みらい館てのひら小説講座専用マガジン

    • 121本

    2020年からIYO夢みらい館で開催している「てのひら小説講座」受講生作品のマガジンです。

  • PJ Novelフリー投稿マガジン

    • 87本

    PJ Novelとは「小説」を 軸に活動する “クリエイターズ コミュニティーです。 このマガジンにはメンバーの自由投稿作品を集めています。

  • てのひら小説作品集

    • 209本

    愛媛の作家によるてのひらサイズの短い小説。 500文字以下の小物に印刷したら映えるサイズ。 それが「てのひら小説」です。 1000文字超えてても2000文字以上でも「いや、これが私のてのひらサイズなんじゃい」と言い張る気持ちがあればそれでOK。 広がれてのひら小説の輪。

  • PJ Novel 素材壁打ちアラカルト

    • 539本

    たてヨコ愛媛クリエイターグループ「PJ Novel」メンバーのチャレンジ作品や素材を集めたマガジンです。

最近の記事

田舎町のタクシー

 「来月からうちの町のタクシー、午後10時までだってさ」  「え〜、じゃあゆっくり飲んでもいられねえな」  「わざわざ隣の町のタクシー呼ぶやつもいるくらいだからなあ」  田舎のタクシーは台数も少ない。夜間だと1〜2台くらい。電車はというと午後10時台で終電である。そもそも田舎では、電車に乗って飲みに行くという感覚がない。  遠い昔、私は深夜、彼女にふられ、タクシーで帰路についたことがある。手持ちが少なかったため、運転手さんにそのことを告げ、途中で降ろしてもらうよう頼んだ。気を

    • 猫と一緒に暮らす犬の悩み相談

       私は8歳のバーニーズとニューファンドランドのミックス犬である。体重も40kgほどある。ご主人様のペットとして、一人気ままに暮らしていたが、3年前、新入りがやってきた。生後1ヶ月の保護猫である。とってもちっちゃくて、ご主人様の手のひらに乗るほどの大きさだった。なので、私はてっきり私のおやつなのかと、思いっきりおすわりして待っていたくらいだ。  ところがこの新入り、なかなかに図々しい。もうすっかり大人になったが、私の20分の1くらいの大きさにもかかわらず、平気で私の部屋に入って

      • 宝くじに当たったら

         私の母は宝くじマニアだ。若い頃は1回に5万円ほど使っていたらしい。定期的に5万円購入するのが、最も効率の良い買い方だと聞いたことがあるが、母も10万円の当たりくじを当てたことはあるらしい。  今は年老いて、往年の勢いはないが、それでも宝くじのシーズンになると、「宝くじを買いたい」と言い出す。そして宝くじが当たったら、あの人にいくら、この人にいくらあげる、などと算段を始める。  宝くじを当てる人より車に当たる人の方が多いんだからね。宝くじなんかに当たったら、お母さん死んじゃう

        • 「ワイルドターキー、ロックで」

           バーボンはロックに限る。やや太めのグラスに氷を入れ、コトコトと手で揺らす。しばらくなじませた後、しばし口の中に含み、そのまま息を吸い込む。気化したアルコール分が肺の中に入り、続いてバーボン特有の苦味を感じながら、アルコールが体の中に染み渡る。キラキラと輝くグラスを眺めながら、だんだんと自分が壊れていくのが、心地良かった。  あれから40年、今ではロックはおろか、水で十分だ。

        田舎町のタクシー

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        記事

          由布岳の輝き

           四国愛媛から一路湯布院を目指す。1時間のフェリー乗船の後、一般道路から高速道路に乗る。しかし、あいにくの雪模様の中、高速道路は通行止めに。仕方なく高速道路を降り、車のナビを頼りに別ルートを行くこととなった。  道は山道、山越えである。当然の如く、雪は深い。しかし、私の車は四輪駆動でスタッドレスタイヤをはき、南国愛媛にもかかわらず、寒冷地仕様の車だ。かつてタイヤチェーンを装着するのに2時間かけた上に断念した自分は、車を買うなら四駆と固く心に誓っていた。このような天候の1日のた

          由布岳の輝き

          名前の由来

          「佐藤正一君、6票」  クラス委員長選挙の結果、私は選ばれなかった。ほっとしたと同時に自分の得票数が気になる。誰も気づいていないようだ。  授業で、自分の名前の由来を親に尋ねてくるように言われた時の、親の答えに愕然とした。正月一月一日に生まれたから、正一にしたんだよ。そんな理由で正一に、、、、。キラキラネームの友人が、自分の名前の由来を滔々と語る中で、自分は進んで語る気にはなれなかった。 「正一君」 不意に彼女が声をかけてきた。 「名前と同じ投票数だったね」 いたずらっぽい目

          名前の由来

          クリスマスはクルシミマス

           ミスターパウェルは悩んでいた。クリスマスシーズンが近づいていたからだ。  日本では、クリスマスは楽しい行事だと思われているが、欧米ではそれだけではない。妻や夫、恋人に限らず、家族、親族、友人にまでプレゼントを贈らなければならない。デパートやスーパー、通販業者にとって、クリスマスは一大商戦であり、家のクリスマスツリーの下には、届けられたプレゼントが、すずなりに置かれる。  しかし、アメリカの片田舎の安月給の英語教師の彼にとっては、大変な負担である。まるで自分の体が、ツバメやカ

          クリスマスはクルシミマス

          北の工作員

           私は、羽田空港から島根出雲空港に向かっていた。取引先の工場に、あいさつがてら営業活動をするためだ。私の旅の楽しみといえば、旅先の温泉宿に泊まること。レンタカーを借り、営業活動を終えた後、その日の宿泊先を決めるため、車を止めた。  しかし、止めた場所が悪かった。小学校のすぐ近くである。小学生の女の子が、何人かで連れ立って下校中だった。停車中の大きなダンプカーの横を通り過ぎ、その先に車を止めて、あらかじめ買っておいたガイドブックを眺めていると、コンコンと運転席の窓ガラスを叩く音

          北の工作員

          芋煮会

           芋煮会のことを、わが故郷、愛媛では芋炊きという。私が芋煮会という言葉を知ったのは、東京で会社勤めをしていた頃である。私は人事部に配属され、会社の福利厚生全般を担当していた。その会社には、社員旅行の代わりに各部署単位で親睦会を開いており、一定の割合で会社から補助が出る。その手続きを私が取り仕切っていた。  そして、補助のために申請される、様々な活動計画書の中に、芋煮会という言葉があった。芋煮会?芋炊きのことだろうか? 「そうだよ」 山形県出身の先輩女性が、こちらに顔を向けずに

          線香花火

           二本の線香花火が火花を散らしている。  あっと思った瞬間、ジュッと音をたてて、線香花火の玉が落ちた。 「あ〜あ、まだ途中なのに。」 「俺のを少しやるよ。」 彼が自分の線香花火を突き出し、くっつける。一つの玉が二つになり、また二本の線香花火になった。

          線香花火

          ゾンビレンズ

          ゾンビレンズ   これはリアルなのか、バーチャルなのか。  時は20xx年、地球上ではゾンビウイルスが猛威をふるっていた。ワクチンはまもなく開発されたが、ウイルスの変異も早く、なかなか収束のめどが立たない。そんな中、日本のベンチャー企業、オプティカルテックジャパンが、画期的な商品を開発した。  ゾンビレンズ、コンタクトレンズにバーチャルリアリティを用いた特殊な加工を施し、そのレンズを通すとゾンビウイルス患者は顔が青白く光るのである。同社はすぐに特許を取得。大々的に売り出した

          ゾンビレンズ

          点滴ヒーロー

           シュワッチ!  彼は正義の味方、地球の平和を守る、子供達のアイドル、宇宙人ヒーローだ。今日も1匹、怪獣を退治してきた。テレビ局の都合とはいえ、週一で怪獣を始末するのは、なかなか大変なことである。  しかし、みんなは知らない。彼が戦いの後、空に飛び立った後、月の裏側で点滴を受けていることを。月の裏側では、看護師たちが待ち構え、宇宙人ヒーローの片腕に針をさす。地球で受けたダメージを、点滴で補うのだ。地球の大気は、宇宙人ヒーローにとって、とてつもなく臭い。雨が降った日には最悪であ

          点滴ヒーロー

          さらば人類

          「ご臨終です。」  医者の乾いた言葉が響いた。私の人生が終わった。長かったような短かったような、つらかったけれど、自分なりにがんばった人生。妹とその家族が、悲しそうに私を見守っていた。  これからどこに行くのだろう。私は自分の肉体から離れ、上に昇り始めた。昔、夢で見たあの感覚、幽体離脱というやつだ。病院の壁を突き抜け、空へ向かっていた。透き通ったような青空を抜け、日本列島を見下ろし、やがて青い地球が遠ざかっていく。暗黒の世界の中、太陽系の惑星を横目に見ながら、私はものすごいス

          さらば人類

          タイムマシンにお願い

           読経が続いている。ここは愛媛県、今治市。多島美を誇る瀬戸内海の中でも、ひときわ大きい島の中の小高い丘の中腹にある寺である。そこに百人ほどの人々が集まり、神妙な面持ちで和尚の背中を見つめていた。  戦後まもない1945年11月6日、ここ今治沖で復員軍人や一般人580人を乗せた船、第10東予丸が転覆し、死者・行方不明者397名を出す一大海難事故となった。そして毎年11月に遺族が集まり、犠牲者の鎮魂のための法要を行なっているのであった。  その後、希望者のみが漁船に乗り込み、事故

          タイムマシンにお願い

          ありがとう車掌さん

           駅の待合室の自販機で暖かいコーヒーを買った。座っていた木製のベンチを離れたのがよくなかったのか、列車を待つ時間が長すぎたのか。列車に乗り、目的地の駅に降りた途端に、気がついた。バッグを忘れた!ホームから列車の窓に手をかけ、窓越しに自分のいた席を覗き込む。座席にはない。では、駅の待合室に違いない。なぜ忘れてしまったのか。後悔の念が、心を揺さぶる。貴重品は手元にある。バッグや中の書類もどうでもいい。が、中にあったiPad は痛い。次の上りの列車に乗り、元の駅に戻ろう。  30分

          ありがとう車掌さん

          桃太郎プラス1

          桃太郎   おじいさん、おばあさんの元で桃から生まれた桃太郎。すくすくと育ち、ついには鬼ヶ島で鬼を退治することになります。家来には犬、猿、キジの三人。しかし、実はもう一人、うさぎがいたのです。  うさぎはおじいさん、おばあさんの家で家族として飼われていました。 「桃太郎さん、私も連れて行って下さい。」 うさぎは頼みました。 「お前は小さいし、非力だ。それにもう、きび団子がないのだよ。」 「きび団子はいりません。」 うさぎは食い下がります。 「私は小さくて、力もありません。でも

          桃太郎プラス1