似ているようで違う「糸かがり」と「中ミシン綴じ」

極くたまにですが、市販されているノートの中に「中ミシン綴じ」という製法を「糸かがり」と表記しているものがあります。
どちらも「糸を使って紙を綴じる」という点から見ると同じです。
けれど、製本という観点からすると、製法や特徴がそれぞれ違います。

赤い糸を使った「糸がガリ」の写真

上の写真と下の「中ミシン綴じ」と比べてみてください。綴じ方のピッチがまるで異なります。

ノートでよく見かける「中ミシン綴じ」


大学ノートなどでおなじみの「中ミシン綴じ」
頁の少ない絵本でも用いられています。


色糸を使った「中ミシン綴じノート」

実はこれ、某国のミュージアムショップで買ったというお土産なのです。色糸で綴じてあるので分かりやすいので載せましたが、正直日本製だともっと美しく仕上がっていますね(笑)
…などと貰っておきながら失礼ですが。
「中ミシン綴じ」は二つ折りした用紙の真ん中にミシン掛けしたものです。
ミシンは工業用のミシンが使われることが多いです。とはいっても、裁縫が上手いからといって誰でも同じように出来るものではありません。れっきとした職人さんの仕事なんです。
「中ミシン綴じ」の良いところは、少ない頁数に対応できるのと、用紙は二つ折りなので左右の罫線や絵柄のずれが無いなどです。
但し、厚みに制限があるので、比較的薄いノートや絵本の製本でよく使われています。

中央を開くと分かるのですが、一番内側の用紙と外側の用紙とは面積が異なります

頁が多くなったら「糸かがり綴じ」


「中ミシン綴じ」とは別に、ある程度の厚みのあるノートを作る場合のやり方の一つとして『糸かがり』があります。


色糸を使った「糸綴」の背中

一枚の紙を8ページ、16ページ、32ページなどの何れかに折って、それを一単位として何単位かをまとめたものを糸で綴じる製法です。
この場合は、ミシン機で綴じるのではなく、「糸カガリ機」という全く違う機械で綴じられます。

折る回数が多いということは、それだけ罫線が左右でずれる確率が高くなりますので、そこは折本の業者さんの腕の見せどころです。
はっきり言って難しいのです。

弊社の『BOOK NOTE』を開発する際、
「100パーセント罫線ずれを無いものにしたい」と言ったら、「そんなリクエストを出したら何処の折本やさんも腰が引けて、やってくれない」と社長に言われましたが、頼んだ会社の職人さんは相当頑張ってくれました。

見学させて貰いましたが、機械を流しっぱなしにするのではなく、時折一部抜いて出来を確かめてくれていました。

そのような訳で、展示会の際には「方眼が左右で揃っている。
今まではズレていて当たり前くらいに思っていたので」という言葉を頂いた時は「やった!」と思った次第です。

『BOOK NOTE』の方眼のこだわりについてはまたいずれ書きます。


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