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詩集

159
現代詩をいくつかまとめた詩集です。どんな人にも届くように軽めでわかりやすいものを集めたつもりです。週に数回更新されます。
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2015年6月の記事一覧

確かな記憶

懐かしい風景の中で
つながる記憶は
暖かなものよりも
ひんやりとしたもののほうが確かで

楽しさの多くは
今はもういないあなただったり
ほかの誰かだったりが
欠けているから
ぼんやりとつかめない

冷たさをつきつけられても
体の芯が揺らがない
今の私は
むしろしっかりとここにあることを
確かな記憶が裏打ちする

感動の対象に優劣はない

感動

ひとのこころうごかすもの
そのかがやき
だれにもゆがめることはできない

本棚を見つめる
心揺らしたものたち
恥ずかしさなどどこにもない

自分だけの本当
だれにもはばかることのない涙とうれしさが
出会いという奇跡とともにここにある

それでも生きてゆくしかない僕たちのために

街にはべったりと嫌なことがこびりついていて
すきまをぬうように歩けば僕らは薄汚れてゆく

自分の意志で電車に運ばれて
見つめる景色を変えられず
空をのがし続けている日々

それでも生きてゆくしかない僕たちのために

何者かであろうとして
自分を削ぎ落としてゆく人たち
自分であるということだけではだめなのだという

でも
世界にさんざん嫌われてきた何かを
僕も嫌いになれるとは
誰もが嫌いになれるとは

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私は他人である

確かにコトバはココロを越えられないし
コトバはいつも想いに足りない

だから人はひとりぼっちだし
けれどひとりぼっちを寂しがる生き物でもあるから
始末が悪い

完全につながりあうことも理解しあうこともできないけれど
つながりあったつもりのつきあいも
理解しあったふりもしなくていいということでもある

ひとつ言えるのは
難しいことを考えずとも
偶然にも同じこの時間に生きていることはたがいにわかる

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だいじなもの

これは好きだなってものをみつけて
大事に抱えて持って帰っても
どこか距離を感じてしまう
これは本当に「だいじ」なのかな と
無理に見つけた夢のように

君が「好き」と言ったもの
それがあってよかったなぁ と
それがなくならないといいなぁ と
思っているときのほうが
僕は幸せに思えるんだ