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「リターン・トゥ・ホグワーツ」 映画の記憶を辿るとその時の感情が蘇る


 映画やドラマ、小説などの物語に幼い時から魅了されてきた。
特に最も熱心に映画というものに対して向き合っていた高校生時代は、それがないと生きていけないというような、酸素やその他身体を維持していくのに必要なエネルギーと同等かそれ以上の存在として映画はあった。

受験勉強をしなくてはならないのに、近所のTUTAYAに出かけては映画を漁っていた。
その時の映画体験を思い出すと、様々な感情が自分の体内に湧き起こり、心を揺さぶられていた記憶が蘇る。
大人になってももちろん心動かされることはたくさんある。
しかし、あの時以上に言葉にできないような、エモーショナルな体験をすることはなくなってきた。

それだけ高校生という多感な時期と、社会に毒されていない純真無垢な精神が、素晴らしい映画たちを自分の中で全身全霊で受容していたのだなと改めて思う。

自分が過去に体験したこういった感情をこれからも忘れることなく映画やその他の物語に対して接していきたいと思う。
体は年を追うごとに確実に老いていくものだ。
しかし、精神は凝り固まることなく、若いままを保ちたいと願う。
それがきっと、高校生のあの頃の自分のように映画を受け入れる土台になってくれるはずだ。

導入が長くなってしまった。
今回取り上げる作品のことを考えてるうちに、自分にとって映画や物語がどんなものだったのだろうと、少し考えてしまった。


以前、動画配信サービスU-NEXTにて「ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ」というドキュメンタリー番組を拝見した。

「ハリー・ポッターと賢者の石」公開から20周年を記念して制作されたハリポタ初の同窓会というのが番組のふれ込みである。

ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソンら仲間たちがシリーズ終了後初めて、ホグワーツ魔法魔術学校で再会を果たす。

今だからこそ話せる「ハリー・ポッター」の知られざる舞台裏、撮影時のそれぞれの想いなどを出演者たちが赤裸々に語っている。

史上最も愛されている映画シリーズ「ハリー・ポッター」。海外、日本国内でも歴史的な興行収入を誇っており、読者の中にも観た事がある人は多いだろう。筆者も例に漏れず、全作品劇場に足を運んで鑑賞した。さらに映画だけでなく原作小説も全作読破している。

そんな世界的にファンも多い大ヒットシリーズの仲間たちが当時について語り合っているのがアメリカのHBO制作のこの番組である。


シリーズ最後の作品となった「ハリーポッターと死の秘宝 PART2」が公開されたのが2011年のこと。筆者もまだ高校生の頃だ。ということはほとんどの作品を幼少期に体験していることになる。
なのでその時には意識していなかったのだが、このシリーズには改めて見るとイギリスが誇る数々の名優たちが出演している。
レイフ・ファインズ、ゲイリー・オールドマン、ヘレナ・ボナム・カーターなど。

また、その後「ゼロ・グラビティ」でアカデミー賞を受賞することになるアルフォンソ・キュアロンがシリーズ3作目の「アズカバンの囚人」を監督している。

キャスティングにしても製作陣にしても、超一流たちが顔を揃えていたんだなあと、改めて思い知らされた。

語り出すとキリがないほど様々なことをあけすけに語っているのが印象的で、それと同時に20年という時間の積み重ねが彼らをこんなにもオープンな心持ちにしているのかなとも思う。

中でも、エマ・ワトソンがトム・フェルトン(ドラコ・マルフォイ役)との当時の関係性を語っているシーンは強い印象を残した。

簡単にいうと、二人の恋愛関係的な話なのだが、よくよく話を聞いていると単純な恋愛という間柄を超えた、心と心が通じ合うような、支え合うような人間関係が垣間見れる。
それは、幼い時から大ヒットシリーズに出演してきた彼らが感じてきたプレッシャーや精神状態、心の葛藤や悩み、苦しみをお互いに支え合いながら乗り越えてきたという一つの人間ドラマでもある。

やはりダニエル、ルパート、エマの3人が語り合う姿が最もグッとくる場面ではある。
ここまで包み隠すことなく語れるというのは、もはや時効という面もあるのだろうが、シリーズを通して築き上げてきた彼らの信頼関係が現在においてもずっと続いていることの証だろう。
なんだかその友情や関係性を垣間見れたのが、幼少期から見てきた筆者にとっては感動的な体験である。

この番組を見た後に、改めて第1作目「ハリーポッターと賢者の石」を見返してみた。おそらくこの番組から触発された懐かしさに堪えきれなくなったのかもしれない。
当時は幼かったので吹き替えで見ていた。大人になってからは洋画は基本的に字幕で見ているので今回も字幕で鑑賞した。

そうすると、今まで吹き替えでしか見たことのなかった作品がなんだか全く別の作品に思えてきた。あの頃見ていた作品とは明らかに異和を感じた。

それぐらい、主人公ハリーの吹き替えを担当した小野賢章さんら声優陣のイメージが強かったのだろう。

しかし、それが助けになったのか、何回も見ているはずの作品が新鮮に楽しめた。


幼少期の映画を体験するという行為。そこから感じ取った名も知れない感情。
それが少しはこのドキュメンタリー番組を見たことで取り戻せたんじゃないかと思う。

こんなセンチメンタルな気持ちをこれからも少しでも長く、そして多く感じれることを祈りながら本文の結びとしたい。

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