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「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」 異次元スパイダーマンだよ!全員集合!


 2019年に公開された「スパイダーマン イントゥザスパイダーバース」は、3DCGアニメでありながら、アメコミ風な演出を取り込み、革新的な映像表現が高い評価を受け、米アカデミー賞最優秀長編アニメーション賞を受賞した。

私も当時鑑賞した際は、今まで見たこともない映像表現とアニメーションならではのアクションシーンの連続に度肝を抜かれた思い出がある。

また、この作品はマーベル映画としては初めて「マルチバース」という概念を物語に落とし込み、ストーリー面でもエポックメイキングな作品となった。

そんな、これまでのアニメーションという世界に風穴を開けた作品の続編がこのたび公開された。

前作同様の3DCGと漫画風な表現、スタイリッシュなアクションシーンはそのままに、今作は「マルチバース」という概念をさらに奥深くストーリー上に落とし込み、その上で主人公マイルス・モラレスやスパイダーウーマンことグウィンの人間ドラマを重厚なものにしている。

物語オープニングのグウィンが暮らす宇宙における、グウィンと警察署長である父親との人間ドラマは物語にグイグイ引き込ませるのに成功している。

前作では語られなかったグウィンの物語は、そもそもマイルスの別次元的な物語であるので、二人の生活は自然と似てくるとはいえ、それでも別次元における自分の人生とはどんなものなのかと考えさせれるくらい惹き込ませる仕掛けが施されている。
そしてこの署長とスパイダーマンの関係性は、物語上の大きな鍵となる。


前作でピーターから後を引き継ぎ、スパイダーマンとなったマイルスは、マルチバースの崩壊を防ぐために結成された様々な次元で活躍するスパイダーマンたちの組織に入ったグウィンと再会を果たす。

この出会いがマイルスをマルチバースを巻き込んだ事件へと誘っていくことになる。

とにかく本作は多次元宇宙という概念を物語のフックとし、そこにマイルスと両親の家族のドラマを絡ませたSFとアクション、そして人間ドラマという多機能を備えた一作となっている。

この多次元宇宙、今自分がいる世界とは別の次元で暮らす自分がいるという設定がもたらす普遍的なメッセージも本作の魅力の一つである。これは物語中マイルスの父親ジェフが語るセリフからも明らかになるので、未見の方はぜひご自分の目と耳で確かめていただきたい。

本作には、色々な宇宙で活躍するスパイダーマンが登場するのだが、そのキャラクターの造形もまた魅力的だ。その宇宙によってスパイダーマンの形状は異なっているのだが、これもまたマルチバースを題材にするからこそ発揮される面白さである。

どんな次元があり、そこにはどんな生物がいるのか。どんな暮らしがあるのか。そしてそこに存在するスパイダーマンとはどんな姿をしているのか。全ては自由なわけである。人間であるとも限らないし、動物なのかもしれないし。その想像の自由さがキャラクターの造形の面白さにつながっている。


終わり方も、はっきりと物事が解決して終わるというようなエンディングではないところが面白い。
おそらく次回作は時系列的にこのエンディングの直後から始まるのかなぁという終わり方である。

この終わり方はどちらかといえば連続ドラマのエンディングである。
あまり映画では見ない。

連続ドラマは次週続きが見れるからいいが、映画はそういうわけにもいかない。
そういう理由からかどうかは不明だが、映画ではあまり味わえない鑑賞感である。

盛り上げて盛り上げて終わっていく感じ。そして次回作への期待を煽る感じもこの作品をエポックメイキングな作品たらしめる所以なのかもしれない。

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