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「最後まで行く」 韓国オリジナル版 サスペンススリラーの決定版

 藤井道人監督、岡田准一、綾野剛共演で話題の「最後まで行く」。絶賛公開中のこの作品は2014年公開の韓国映画「最後まで行く」の日本リメイク版である。

日本版を観る前に、まずは韓国オリジナル版を観ておこうということで、本日は韓国版「最後まで行く」のレヴューを語っていきたい。

殺人課の刑事ゴンスは、母の葬儀を抜け出し車で警察署へと向かっていた。急遽署内に監査が入る事になり、ゴンスは横領の証拠を隠さなければならなかった。しかし、無謀な運転が仇となり誤って通行人を轢いてしまう。なんとか隠蔽しようと考えたゴンスは、死体を持ち帰り母の棺桶に入れて一緒に埋葬する。そして数日後、警察内部でこの被害者不明のひき逃げ事件に対する捜査が始まり、あろうことかゴンス自身が事件の担当となってしまう。そんな中、謎の男からゴンス宛てに電話が入る。男は電話口で囁いた。「お前が殺した事を知っている―。」


「どうせ最低最悪の運命ならば行き着くところまで行ってやる」
この映画のキャッチコピーともなる言葉だ。

最初、日本語のタイトルを見た時に意味が伝わってこなかったが、このキャッチを読んだ時に初めてなるほどそういうことかと、納得した。

いや、本当にこのフレーズからのこの日本語題は言い得て妙だなと感心した。

映画を観終わった後に、ストーリーとタイトルの親和性がものすごく高いとおそらく大体の人が思うんじゃないだろうか。邦題考えた方、本当これだけでもこの映画の勝利である。

と、まずはタイトルから惹き込まれたところで肝心の中身の話。

主演は「パラサイト 半地下の家族」での寄生される側の富豪役が記憶に新しいイ・ソンギュン。

物語はオープニングからいきなり絶望的な幕開けを迎える。そこから主人公は次々と最悪な運命へと突き落とされていく。

110分という決して長くはない尺の中で、非常にテンポ良くストーリーが展開されていくので、誰しもが観やすく、そして何より感情を昂らせる映画の魔力がいかんなく発揮されている。

面白いように主人公が追い詰められ、転げ落ちていく様は観ている者の息をもつかせぬ展開の連続である。

110分の中で、何も起きていない時間がないんじゃないかと思わせるほど、実に様々な仕掛けが施されている。

これ多分映画館で集中して観ていたらあっという間に時間が過ぎ去っているように感じるんじゃなかろうか。まさにジェットコースタームービーの典型である。
しかし、映画を観ていて時間の経過が早く感じるというのは、つまりそれは最高に楽しい映画であることの証左ではないだろうか。楽しいことをしていて時間があっという間に過ぎるという経験は誰しもおありだろう。


この映画で最も印象的なシーンを聞かれれば、まず私はラスト近くの主人公と謎の男とのアクションシーンを挙げたいと思う。

ただ、このシーン。アクションと言えるほどカッコよく、派手なシーンであるわけでは決してない。

それはもはや、取っ組み合いと言った方がしっくりくるだろう。

物語中盤で明らかになるのだが、この謎の男も主人公同様、ある悪事を働いており、主人公を殺さなければそれが白日の下に晒されてしまう危うい立場なのである。

この終盤の乱闘シーンは、いわば互いの人生を賭けた命懸けの果たし合いなのである。

だからこそ、スタイリッシュでカッコいいアクションとはならない。
荒々しさが目立つ、命の取り合いが行われるわけだ。

まさにここまで来たら「最後まで行ってしまえ!!」という、ある種投げやりな、自分の運命を悟ったかのような清々しさまでもこの場面からは感じられる。


「極限のノンストップ・アクション」とは、この映画を表したワードであるが、それだけでなく、この作品はサスペンス・スリラーとしても最高の出来である。

主人公が正体もわからぬ謎の男によって追い詰められていく様相は、どこか不気味で怪しさを醸し出している。これが異質な雰囲気を助長する音楽と、ダークなイメージを切り出す映像によってサスペンススリラーとして最上級の体験を私たちにもたらしてくれる。

アクション、サスペンス、スリラーという映画の三要素を最高の形で調合した、まさに限界を超えた映像体験が味わえるのが本作である。


この最高の映画を観た後なので、日本リメイク版「最後まで行く」が楽しみでしょうがない。
また、この作品は日本以外でも様々国でリメイクされているそうだ。

なかでも、フランス版「レストレス」は、Netflixグローバル映画ランキングで1位を記録したそう。こちらも是非とも鑑賞したいと思う。


韓国映画界は、近年世界的にも非常に高い評価を受けている。その理由としては国家的な映画への投資が一つある。
それが、「パラサイト 半地下の家族」で結実したわけだ。

こういうことを考えると、我が日本の映画界は少々心配になってくる。

しかし、K-POPが世界的にヒットしているように、確実に韓国映画も世界でのその地位を固めていくことだろう。

その底知れぬパワーを本作からはひしひしと感じられた。




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