<大阪レトロビル>どのように彩色したか解説します
はじめに
「線スケッチ」における基本の塗り方について、別途記事をまとめています。初めてこの記事を読む方は、先に下記の記事をおよみいただければ、より理解しやすいかと思います。
お急ぎの方は、基本の塗り方の要点を以下にまとめましたので、念頭に置いてお読みください。
・線スケッチでは、あくまで線描が主体で、色は線の表情をを活かすよう
に塗ります。
・滲みやぼかしといった一般の透明水彩で使われている様々な技法は使い
ません。
・透明水彩絵の具の「明るさ」「鮮やかさ」「透明感」を保つために、原
則として混色はせず、薄く溶いた絵の具を塗っては乾かす工程を繰り返
す「塗り重ね」を用います。
なお、解説の中で説明する具体的な色は、あくまで私が使った色です。この色を使わなければいけないという意味ではなく、あくまで参考例としてお読みください。
(1)ビルの壁面
どこから塗り始めるかとよく聞かれますが、塗り始めの場所が決まっているわけではありません。一般的には、面積の広い部分から塗ると、最終的な出来上がりのイメージを掴みやすいということが言えると思います。
一方、好きな部分から塗る場合は、つい気合が入って濃く塗ってしまいがちです。その場合ほかの部分も同じような濃さで塗らなければならないため全体が濃くなりすぎ、最終的にこんなはずではなかった。もっと薄めにしておけばよかったと後悔する場合もありますので、最初の段階は薄めに全体を塗って、最終的な出来上がりを考えながら全体を塗り重ねていく方が失敗は少ないと思います。
この絵では面積の広いビルの壁面を最初に塗りました。まず全体をオレンジで薄めに塗ります。右側の壁のタイルが貼られていない部分は、太陽の光が右上から当たっているので、白っぽく見えるぐらいに薄めに塗ります。
次にタイルが貼られている部分の全体を薄茶色で塗り重ねます。さらに、一枚一枚のタイルは、年月を経て、濃さがまばらになっているので、色の濃いタイルを選んでイエローオーカーで塗り重ねて濃くします。
(2)一階の正面のアーチ状の石壁
オレンジを薄めて塗ります。
(3)緑の看板、緑の樹木、赤い日よけ傘、赤いコーン、2階の黄色の看板他の下地塗り
緑および黄色、赤に彩色する部分は、下地に黄色を塗っておきます。下地を塗り終わったあと、赤い日よけ、赤いコーンなど、赤を塗り重ねて彩色します。ビル正面の看板、右側の樹木は、緑を塗り重ねて完成します。
(4)電柱とブロック塀
ペインズグレイで、薄く塗ります。
(5)車と道路
ビリジャンで、道路及び車を塗ります。(タイヤの部分はペインズグレイ)
(6)窓ガラス
窓ガラスの彩色は決まりはありません。空が反射したり、全体が暗い、あるいは、室内の物が見えるなど様々です。ここでは正面のガラス窓はシンプルにビリジャンで一様に彩色しました。
右側の壁の窓では、右上から左下に斜めに筆跡が残るように筆で塗りました。そのため光が反射しているように見えます。
(7)陰影
最後に陰影をつけます。
ここでは右側から強い日差しがさしているので、樹木が右側の壁およびブロック塀に強い影を落としています。まずフレンチウルトラマリンで壁に樹木の影を付けた後、バイオレット(赤紫)で下の部分を塗り重ねました。右側の壁だけでなく、正面の右側の斜めの影も描き入れます。
次に陰の部分ですが、バイオレットで、電柱の左側の陰を付けます。ビルの屋上のでっぱりの下側、正面の装飾の凹凸や、引っ込んだ窓、ベランダの下にできる陰をフレンチウルトラマリンで薄めに塗り完成です。
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