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『福祉の仕事も悪くない』〜新人ガイドヘルパーのある一日〜

『福祉の仕事も悪くない』【前編】

福祉で働くちょっと斜めなあなたへ

本編より
42歳で会社を辞めて、しばらく何もやる気が起きず布団を頭から被って秋之は一日一日をやり過ごしていた。完全に昼夜が逆転して自堕落な生活だった。もう、どうでもいいやという半ば諦めみたいな気持ちがあった。
半年して外に出られるようにはなったが、それでも酒を飲んだりパチンコをしたり、ふらふら過ごしていた。

見かねた友人に半ば強引に誘われてこの「知的障害者のガイドヘルプ」の仕事をはじめた。どうせ長続きはしないだろう。話を聞くと楽そうだから暇潰しにちょうどいいかもしれない。それに体を動かす機会にもなるから健康維持のためにやってみるかという軽い気持ちだった。
(中略)
福祉という言葉はもちろん知っていて、働く人は偉いなー、でもたいへんそうだなー、と思っていた。ところがまさか自分自身が福祉で働くことになろうとは。

昔から福祉とか、優しさとか、笑顔とかそういうものは苦手なのだ。自分には絶対向いてないと秋之は思っていた。

『福祉の仕事も悪くない』【後編】
本編より
とにかく無駄を省き生産性を上げること。生産性が低い奴は無駄。会社に「できる組」と「できない組」が生まれて、「できない組」は白い目で見られるようになり、居たたまれない雰囲気に追い込まれていった。秋之も「できない組」に入れられていた。

若いスタッフは社長の価値観と同じような奴が多かった。可哀想に、殺伐とした中で生きてきたんだなー、と最初は同情さえしたくなったが、徐々にそちらが圧倒的多数を占めるようになり逆に同情される側になっていった。
昔からいるスタッフの中には社長についていけない人間もいて、彼等は次第に辞めていった。社長にとってはそれも大歓迎だった。