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金利とはそもそも何か?その1

1.金利とは

金利とは簡単に言うと、お金が余っている経済主体から、お金が足りない経済主体が、お金を借りた時に支払うお金の賃貸料のことである。この賃貸の仕組みは、8世紀頃(約1200年前)の日本にすでにあったそうだ。出挙(すいこ)と呼ばれるもので、国や裕福な人は、春に農民に稲を貸し付け、秋の収穫時に賃貸料を上乗せして返済させていた。現代の話で例えると、住宅購入を考えている人は大抵、金利を上乗せしたローンを組む。もし、お金を借りることができなかったら、せっかくの働き盛りの時に貯金ばかりをして、年をとってようやく住宅を購入できる、ということになるだろう。

このように双方にメリットがある賃貸の仕組みは、現代社会にも必要不可欠なものである。お金を借りるという手段があるからこそ、個人は高価なサービスやモノを手に入れて、豊かな生活を送ることができ、企業はモノやサービスを生み出し、提供することができる。経済を活性化させているのは、金利の仕組みだということができるだろう。


2.固定金利と変動金利の違い

固定金利とは、金利が最初から最後まで固定され、まったく変わらないものだ。代表的なものでいうと、定期預金や個人向け国債(5年物)など。

変動金利とは、一定期間ごとに金利が見直されるものである。代表的なものでいうと、変動金利定期預金、個人向け国債(10年物)など。

では、固定金利と変動金利のどちらを選んだ方が得なのか?それは、世の中の金利がどう変わってくるかで判断が違ってくる。

①今後、金利上昇が見込まれる場合
金利商品を買う際、金利上昇が見込まれるなら、変動金利が有利である。世の中の金利が上がれば、変動金利型金融商品の金利も上がるからである。反対に住宅ローンを借りるなら、固定金利が有利である。世の中の金利が上がっても、低い借入金利のまま固定されるからである。

②今後、金利低下が見込まれる場合
金利商品を買う際、金利低下が見込まれるなら、固定金利が有利である。世の中の金利が下がっても、固定金利型金融商品は高い金利のまま維持されるからである。反対に住宅ローンを借りるなら、変動金利が有利である。世の中の金利が下がれば、借入金利も下がるからである。


3.短期金利

金融市場は、取引期間の長さによって主に2つに分けられる。1つ目は、1年以下の取引が行われる短期金融市場である。
短期金利は、借りた翌日に返済する翌日物(オーバーナイト物)と、それ以外のターム物に分かれる。ターム物の代表格は、3か月後に返済する3ヵ月物である。

そしてこの短期金融市場には、主に2つの市場がある。①インターバンク市場②オープン市場である。

①インターバンク市場…銀行や証券会社などの金融機関だけが参加できる市場で、金融機関同士がお金を融通し合う。銀行は毎日の業務でお金の貸し借りをしているわけだが、預かったお金と貸し出すお金がぴったりと同じ額になることはまずない。そこで、銀行は互いにインターバンク市場でお金の貸し借りをしているのだ。
インターバンク市場の中心がコール市場と呼ばれるものである。コール市場は、呼べばすぐにお金が戻ってくるほど短期間のお金の貸し出しをするという意味が含まれている。このコール市場は担保を必要とするかしないかで、分けられる他、期間でも区分されている。コール市場の取引の中心は無担保コール翌日物(オーバーナイト物)。無担保でお金を借りて、翌日に返済する取引である。取引最低額は最低5億以上で1億円刻みだが、実際は50億円、100億円の大きい単位の取引が主流である。
またコール市場の取引手法には銀行同士が直接取引するダイレクトディーリング(D.D.)と、短資会社経由の取引がある。日本にある短資会社は上田八木短資、セントラル短資、東京短資の3社。

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②オープン市場…金融機関の他、商社などの大手事業法人、地方自治体等が参加する市場。オープン市場には主に5つの取引が存在している。

【1】CD市場…CD(特殊な定期預金で、満期になる前でも自由に売買できる預金証書)。CDは流動性のある大口の定期預金とも言われている。

【2】CP市場…CP(コマーシャルペーパー)を売買する市場。CPとは、優良企業が資金調達をするために発行する短期の社債のこと。

【3】TDB市場…TDB(国庫短期証券)を売買する場。TDBとは、2009年にTB(割引短期国債)とFB(政府短期証券)が統合されてできた国債の1つ。TB発行の
目的は満期を迎えた国債の保有者に国が元本を返す、国債の償還と、借り換え(国債の償還のためにお金を確保するために国債をまた発行すること)をスムーズに行うことである。

【4】債権レポ市場…レポ(現金担保付債権貸借取引)が行われる市場。レポとは、主に現金を担保に債券を貸し借りする取引のこと。

【5】債権現先市場…あらかじめ決めた価格で将来買い戻すという約束で債権を売る取引が行われる市場のこと。債権を売った側は、債権を買い戻すまでの期間、資金を調達することができる。

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Q. 短期金利の代表的な指標は?
TIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)は日本の短期金利の代表的な指標だが、国際的な短期金利の代表的な指標はLIBOR(London Interbank Offered Rate)である。TIBORは、東京の金融機関がお互いに資金を貸し借りする際の金利を示す日本の金利指標。日本の金融市場で使用され、多くの金融商品や契約で基準として利用され、国内の変動金利のローンやスワップ契約などが該当する。LIBORは英国の金融業界で特に重要であり、世界中の金融商品や契約で利用されていたが、不正行為の問題や信頼性の問題が浮上し、2021年末に廃止されることが決定された。代替の金利指標(例:SOFR、SONIA、ESTERなど)が導入されている。

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Q. 短期金利の決まり方は?
短期金利は日銀の金利政策に強い影響を受ける。日銀は金融市場に対して公開市場操作を行う。その目的は、短期金利の指標となっている無担保コール翌日物金利を日銀が目標とする金利水準に誘導することである。日銀が無担保コール翌日物金利の誘導目標を引き上げることを利上げ、引き下げることを利下げという。


4.長期金利

短期金融市場は1年以内の取引だったが、反対に1年以上の取引は、長期金融市場と呼ばれる。長期金融市場=債券市場と考えてもいいだろう。債権市場は主に証券会社が発行体と投資家の間に入って、仲介役を務めている。債券市場は、大きく以下の2つに区分できる。

①発行市場(プライマリー市場)…国や地方自治体、企業などの発行体が新しく発行してお金を調達する市場。新しく発行された債権を新発債という。

②流通市場(セカンダリー市場)…すでに発行された債権をもっている人と、その債権を買いたい人が売り買いする市場。すでに発行されている債権を既発債という。

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債権の種類を発行体別に分けると次の7つ。

【1】国債・地方債…国債は国が、地方債は都道府県や政令指定都市が発行。【2】政府保証債…政府が元本払いを保証している債権。日本高速道路保有、日本政策金融公庫などの独立行政法人や政府関係機関が発行。
【3】財投機関債…【2】と異なり、独立行政法人や政府関係機関が発行するものの、政府保証のない債券。JICAや住宅金融う支援機構などが発行。
【4】サムライ債…海外の発行体が日本で円建てで発行する債券。外交企業が日本で資金調達したいケースが多い。
【5】社債…企業が発行する債券。
【6】金融債…【5】と違って、特定の金融機関だけが発行できる債権。
【7】資産担保証券(ABS)…金融機関が発行する債券。ABSのうち、住宅ローンを担保にしているのが、RMBS, 商業用不動産を担保にしているのがCMBS。

先の7つの債権のうち、発行量・取引量がずば抜けて多いのが国債。Japanese Government Bondで、JGBと呼ばれる。


参考文献はこちら↓

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