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100年前の料理本を訳してみます6-手引き

ということで索引は最後にし、次へ進みます。
次は「手引き」です。この本がどのような役割を果たす目的で書かれているのか、どのような読者を対象をしているのか、この本に託す思いが書かれています。

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はじめに

 家族の幸せには、どんな美しい芸術よりも料理の芸術(技術)が大切であり、この2つは長いこと義理の姉妹のように捉えられ、扱われてきました。料理技術は最近また見つめなおされてきています。裕福な家庭の主婦でも、自分にふさわしくないからと、簡単にすべての家事を使用人に任せたりはしないでしょう。そうではなく自分の家族の幸せと快適な生活のため、最善を尽くすことに面目をかけることでしょう。しかし前向きな意志に料理技術が伴わないことがしばしばあります。そのため思慮深い母親なら、早いうちから娘に主婦という将来就くべき職業の準備をさせるでしょう。将来新妻となった娘が家計を切り盛りするようになる時すでに、調理の基礎条件くらいはふまえていれば、そこから一人前の主婦になるまで研鑽を重ねていけるのです。 
 若い主婦が他に頼る人もなくたった一人で一人前になろうとすれば、もちろん長い時間がかかるでしょう。洗練された料理を食べたり過剰な刺激を受けたりすると、その食べ物がよいものかどうか観察する際、味覚が麻痺し判断を誤ってしまうからです。そのためどの料理を作るかを選び調理するにあたっては、より多くを考慮する必要があります。料理を学び、実践的な主婦の経験を自らの役に立て、徐々にそれらを調理技術の真髄へ浸透させていこうとする時、良い料理本は助けとなるのです。
 良きリーダーはゴールへ導こうとする者たちの力を知っています。そして最初は休憩を多く取りながら快適で楽な道を、その後で険しく困難な道へ導くべきであることを知っています。ですからここで前もって大事な助言をしますが、頻繁に登場する簡単な料理をきちんと習熟するまで、難しく複雑な組み立ての料理や、一流の料理法を試みることは避けてください。料理初心者に特に配慮した料理本は、読者が調理道具や補助用品を熟知しており、より簡単で頻繁に繰り返される道具の扱いにも完全に慣れているという前提で書かれてはなりません。道具類については基礎知識や前置きとして、扱い方については調理法の基礎の項で説明しています。またそれぞれの章でも、気を付けるべきルールを初心者へのヒントとして紹介し、調理の各ルールを理解しよく考えながら応用できるよう、そして機械的に手順を追うことのないように配慮しています。主婦が自分の作業全般においてその理由と目的を意識し、機械のように作業するのではなく、与えられたルールを特別な場合の必要時に応用できるようになってはじめて、料理のプロになれるのです。

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このように自主的な思考や行動を習慣づけることを、私は何よりも追求したいと思います。その他有能な主婦に求めるべきは、ある物だけで最良のものを作り出す倹約家であること、与えられたものを力の限り利用し、残り物を賢く使いまわすことの大切さを知ること、お金と時間を無駄にしない時間配分ができること、お金と時間をうまく利用できるよう小さなものも大きなものも整理し、そして健康上不可欠なだけでなく、主婦の芸術の美的要件でもある清潔さを心掛けること、です。
 以上の意味において、また主婦という職業をこのように捉え、若い女性が興味を持ってこの料理本の学びを深め、本書の助けを借りて良い成果を収め、自分の仕事に真の満足感を見出すことができることを願います。
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またいつか読み直して修正するところもあるかもしれませんが、とりあえず。

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