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英語で日本語を教えるということ。

WaSh

最近、外国人の方から日本語でのプレゼンテーションについて
アドバイスを求められることがしばしばあります。
ボクたち日本人が外国語でプレゼンテーションをするときと同様に
それは多くの外国人にとってはチャレンジングなことです。

ボクは以前、自分のスキルを確認しさらに磨くことを目的として
「日本語と英語によるスピーチコンテスト」に何度か出場しました。
全国からエントリーされた原稿とその録音素材が予選にかけられ
決勝進出者10名だけがステージに立ちます。
ユニークなのはスピーチを日本語と英語で用意し
大きな段落毎に両言語を切り替えながらスピーチすること。
普通スピーチは複数の段落から成るので、交互に
段落1(日)→段落1(英)→段落2(日)→段落2(英)…
という具合で演じます。一人で逐次通訳してる感じですね。
世界的にも珍しい「バイリンガルスピーチ」コンテストでした。
日本で開催される大会でしたが、日本人は決勝進出者の2〜3割。
残りは日本に在住する、あるいは日本に留学中の外国人の方。
書類審査と録音選考をクリアして本選に残った方々は
いずれも素晴らしいスピーチをする腕の持ち主なのですが
コンテストなのでやはりその中でも順位は付きます。
テーマに関する洞察の深さ、内容の構成。主張の説得力。
そして言語としての英語、日本語の正確さ。
人にモノを伝えるためのアウトプットとして最も重要な部分ですね。
しかし論文やエッセイではなくスピーチである以上は
見せ方、聞こえ方の部分が全体の印象を決める重要な要因となります。
話す日本語や英語の上手さや、言語表現の豊かさや巧みさ。
そしてアイコンタクトや表情、緩急の付け方や間の置き方といった
演出(デリバリー)も創意工夫を以て周到に計画する必要があります。

こういった「見せ方、聞かせ方」は、日本語と英語では
これが最適だというやり方が異なるケースが非常に多いです。
強調したいことは先に言うのがイイのか、後出しする方がイイのか。
押韻は文章全体で考えるか、単語で考えるか。
取り上げている事象を的確に比喩する表現は何か。
どんなフレーズが「元はアレだな ニヤリ」としてもらえるか。
声のトーンによって聴き手が持つ印象はどう変わるか。
話すスピードによって聴き手は演者にどんな人間性を想像するか。
強調したいときには声を大きくするのか、小さくするのか。
アイコンタクトは相手を見据えるべきか、そうでないか。
ジェスチャーはどのぐらいダイナミックであるべきか。
これらは全体の中でいくつかの例に過ぎませんが
日本語と英語では考え方や効果的な実践が往々にして異なります。
そもそもジェスチャーは、同じモノでも国や文化によって
その意味がまったく異なることがあるので要注意な要素です。
(真逆だったり相手への侮蔑を表すことになると非常に厄介です)

ところが、この点の配慮が十分でない演者が実はとても多いのです。
日本語も英語もとても正しいコトバを上手に話せるのに
両語で同じ見せ方をしてしまう。あるいは聞かせ方をしてしまう。
もちろん同じで問題ないこともあるのですが
前述の理由で期待した内容が狙った強さで伝わらないことや
話している内容とその見え方、聞こえ方が矛盾することもあります。
とても重要な場面で多くの方が見聞きするステージに立つ方であっても
ここができていない「残念な」方がしばしば見受けられます。
外国人の方がそれをやってしまうと
「日本語上手だけど、結局は英語の直訳を丸覚えしてるだけだろうな」
と思われて、一気に借りてきた言葉扱いされてしまうわけです。

この問題を的確に説明し、しっかり理解してもらうには
相手がネイティブとする言語でアドバイスすることが最も効果的です。
最近興味を持って学んでいる第二言語習得論においても
「外国語を教えるために講義のすべてをその外国語で行う必要はなく
むしろ学習者の母語との差異やその背後を説明する際は
学習者の母語を適宜使うことが効果的」と唱えられています。
つまり、日本語のスピーチやプレゼンテーションの理論や技法を
英語を母語とする外国の方にきめ細かく指導するためには
それを実現する十分な英語力を持っていることが望ましいと言えます。
実際、巧みな英語で日本語を教えられる人材は稀少だそうです。

というわけで、最近ご相談いただく冒頭のようなケースも
ボクはユニークな支援ができる面白い領域だと考えていますので
積極的に取り組んでいきたいと思っています。
最近はその向きの指導力をさらに高める学びのひとつとして
日本語教育能力検定試験について調べています。これもまた興味深い。
どちらに軸足を置いても、もう一方を教えることができる。
そんな双方向のコンサルティングを目指していきたいと思います。

(Above photo by Xesc Arbona - Ready for the second level (2009) / CC BY-NC-SA 2.0)


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