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WASH OUT!! TALK LIVE vol.4

WASH OUT!! PROJECTではこのコロナによって影響を受け、困難な状況にある途上国、及び日本の若者の問題解決のために寄付を募っています。
その寄付先の状況やコロナによる影響を幅広く知っていただくために、途上国の活動家や日本の子供たちの貧困等に詳しい専門家をお呼びして「WASH OUT!! TALK LIVE」を開催しています!

第4回目は今までの国際協力の現場とは少し目線を変えて、新興国であるベトナムでビジネスをやられている2人のゲストをお呼びして、新興国のビジネス面での影響についてお話を伺いました!
ベトナムのホーチミンを拠点として、料理教室の開催や高島屋、スターバックスといった大手でも販売しているスイーツを製作しているStar Kitchen代表の荒島由也さんと、ベトナムのソーシャルビジネスと日本の学生をつなげるハバタク代表の小原祥嵩さんにお越しいただきました。

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今回もお2人から伺ったお話を紹介していこうと思います!

1)社会主義ならではの強制力と効果
まず初めに、ベトナムでのコロナ対応のお話から伺っていきました。ベトナムはWHOの情報によると5月25日現在感染者数が325人、死者数は0人と国家全体としてコロナを抑え込めている状況です。
これにはベトナムの社会体制が大きく影響しています。社会主義国であるため、政府の強制力が強く、迅速かつ強力な対応が取れたことが大きいです。都市部の飲食店等は急遽あと2時間で閉店、休業をしなさいという命令が下り、慌てて閉店したと荒島さんにもお話しいただきました。この命令による休業補償等はなかったものの、判断から実行、そして実際に人々を動かすところまでのスピード感は他国ではありえないような状況なのではないでしょうか。強制力が高く、人々に無理を強いているという見方も出来ますが、結果として、コロナを完璧と言えるまでに抑え込めた政府の動きは一定の評価を得る対応だったと思います。

2)帰る場所がある
このように強制的なロックダウンが行われた都市部では、出稼ぎに来たような貧しい人々は失業し生活できなくなってしまいます。そのような人々は、前回のカンボジアやインドネシアでもあったように農村へと帰っていったようです。そこでは農業をしながら、何とか自給自足の生活ができ、家族と共にお互いを助け合いながら生活が出来ているとのことでした。このようにベトナムでも、セーフティネットとしての実家という存在が価値を発揮しています。

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話は日本側に移り、なぜ日本ではそのような実家に戻るというような選択が取られないのかということが疑問として浮上しました。確かに、大規模に拡散した4月以後は移動の自粛が出ていましたが、拡散し始めて緊急事態宣言が出そうだという状況になっても、地方の実家へ帰るという動きは目立ちませんでした。
トーク内では、これは実家との心理的距離感と都市部での仕事の特性が影響しているのではという話になりました。日本人、特に都市部に出てきている人からすると実家という場所は、相当困難な状況になった際に帰る場所という位置づけになっている人が多いのではないでしょうか。その位置づけになっているからこそ、帰るべき状態にあるかという判断が難しく、気軽に使えるセーフティネットになっていないというのが現状だと思います。また、日本の就職市場は徐々に変化しているとはいえ転職が多い状態ではないため、一度辞めて地方に出て行ったら、もう一度都市部での生活に戻ることが出来ないという不安感が強く働いて、都市部での生活にこだわる人が多いのではという結論になりました。
確かに、自分も実家に帰るということは相当の危機に面したときという認識がありますし、(自分の実家は地方ではないですが、)もし地方だった場合には都市での生活を捨てるような覚悟が必要だなという印象を受けました。

3)ベトナム人の起業家精神と互助精神
ではなぜベトナム人は簡単に農村部へと帰ることが出来たのでしょうか。そこにはベトナム人の自力で何とかしていくという起業家精神が大きく関わっているとのことでした。ベトナムでは確かに転職が一般的で都市部に再度戻ってくることが出来るということも1つの要因です。それに加え、就職のような安定した職業でなくても、多くの人が何かしらの事業を自分で始めて、何とか都市部でも生活していくということが一般的のようです。例えば、ベトナム人はなんでも直せると言われているようで、誤って閉めてしまった鍵を開けたり、エアコン等の電子機器を直したり、こんがらがった配線をほどいたりなど、様々な形で個人業者のような人々がいるということでした。

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これは、政府が行っている教育というものをほとんど信頼しておらず、塾や公文式など独自の教育を好む家庭が多く、その過程で大きな力に頼らずに自分の力で生きていく力が自然と身についていくという教育の部分が影響しているようです。子供の時からそのような教えのもとで育つので、困難な状況になったとしても、政府の補助金をあてにしたりせず、自分の力で何とか生きていくということが染みついているのでしょう。そのため、都市部から農村に帰ったとしても、全てを捨てたという印象ではなく、また戻ってこれるというような考え方になるのだと感じました。

また、もう1つ特徴的なお話が、ベトナム人の互助精神でした。ロックダウンによって多くの人が失業し、地方に帰った人も多い中、都市部での生活を様々な事情から続けなければならない人々もいました。例えば、屋台(ベトナムでは屋台での食事が一般的です)で働いていた高齢の方などは、帰る場所もないため、都市部で何とか暮らしていかなければなりません。そのような人々に対して、ベトナム人はお米を配ったり、お手伝いのボランティアをしたりと非常に積極的に助け合う行動を取っているのです。小原さんからも、日本にベトナムの学生を招いた際に、高齢者が自転車を押しながら重い荷物を運んでいるのを率先して手伝っていたというお話もありました。個人のパーソナリティの部分も大きいですが、全体として国が何か助けてくれるわけではない中で、自分たちで助け合おうという姿勢と仏教の流れが上手くかみ合って出来た国民性なのかもしれません。

このようにインドネシアに続き、ベトナムもコロナによる経済面への影響は大きかった(荒島さんの会社では売上が10%にまで下がってしまっていました)ものの、強制的なロックダウンでコロナを封じ込めた政府、そして農村に帰ることや、お互いで助け合うということでそれを乗り切ったことで、人道的な大危機にはつながっていなかったというお話でした。
今回は特に日本人との比較のお話などは新鮮な視点であり、政府や行政に休業補償や生活保障を求めるという姿勢は社会保障として正しい姿勢である一方で、私たち自身、たくましく自分の力で生きていくことが知らぬ間に出来なくなってしまっていたのだなと痛感しました。

次回は、ラオスとカンボジアをフィールドに訪問看護を中心として国際保健医療で長年活躍されてきたフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN代表の赤尾和美さんをゲストに、ラオスの現状と国際保健医療分野から見たコロナの影響についてお話を伺おうと思います!


文責:杉谷

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