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韓国の独立リーグ・独立球団の歴史と現状(2024年5月加筆)

はじめに

筆者はこれまで、韓国の独立リーグ・独立球団に関する情報をTwitterで発信してきた。
韓国の独立リーグの歴史も積み重なり、紹介すべき球団が増えたことを受けて、note記事としてまとめたものが本稿である。

※原則として、韓国人の人名はカタカナ表記とした
※敬称は省略した
※リーグや球団側からの発信が少ないため、主として韓国のWikiサイト「namuwiki」および各種報道記事を参照した

追記
独立野球団京畿道リーグでは、チームアップキャンパス野球場での試合を中心に、試合の生中継とハイライト配信をYouTubeで行なっている

独立野球団京畿道リーグ公式YouTube→https://youtube.com/@user-ic7ve7oj2t
京畿道リーグ公式Instagram→gyeonggido_league

韓国独立野球史

韓国の高卒・大卒選手の進路選択について

日本の高卒・大卒の野球選手が現役続行を希望する場合、その進路選択の幅は意外に広い。
「NPB」「社会人野球(企業チーム/クラブチーム)」そして「独立リーグ」さらには「海外進出」である。高卒の選手の場合「大学進学」がこれに加わる。
韓国の高卒・大卒選手は、日本に比べて選択肢の少ない状態に長年おかれていた。
2003年に、韓国電力と第一ガラスが実業野球(日本でいう「社会人野球」)リーグから撤退し、事実上、韓国の実業野球が”消滅”した。
2009年以降、何度か実業野球復活に向けた取り組みがなされてきたが、いずれも成功には至らなかった。
(韓国実業野球については、別途記事を立ててそちらに詳述する予定である)
実業野球の消滅により、2003年以降、韓国の高卒・大卒選手は「KBO」か「海外進出」か…という究極の二択を迫られて来たのである。

もっとも、KBOには「育成ドラフト」が存在せず、ドラフト会議で指名漏れした選手は「育成選手」(2014年までの旧称:申告選手)としてKBO球団と契約が可能である、という点に留意する必要はある。
また、実業野球が消滅する2003年以前から、実業野球からKBOに移籍する選手は殆どいなくなっていた。したがって、実業野球の消滅と関係なく、もともと韓国の高卒・大卒選手の進路選択の幅は狭かったと言う事も出来よう。

追記
「社会人野球」という単語は日韓で意味合いが異なり、日本語の媒体でもしばしば誤訳や文脈の取り違えがみられる。ここで用語を整理する。

日本語の「社会人野球」→韓国語では「実業野球」(실업야구)と表記
韓国語の「社会人野球」(사회인 야구)→日本語では「草野球」に相当

なお、韓国の「社会人野球」は基本的に硬式球を使用することや、かなり大規模な大会の開催、さらにはYouTubeで実況中継が行われるリーグも存在するなど、日本の「草野球」とは若干印象が異なる。天安メティスのように、事実上の企業チームとして活動し、後に実業野球チームへと転換したケースもある。

2011年~2014年:「高陽ワンダーズ」という試み

2011年11月、京畿道高陽市にある「国家代表グラウンド」を本拠地として、韓国初の独立球団である「高陽ワンダーズ」が誕生した。
名将の呼び声高いキム・ソングン(金星根)が監督を務め、石嶺和彦(元阪神)ら日本人指導者を迎え入れて、KBOフューチャーズリーグ(二軍リーグ)にエキシビションマッチの形で参戦し、年間48試合をこなした。

KBOの二軍よりも充実した設備を用意するなどして一定の評価を受けたが、放漫経営がたたって資金難に陥り、2014年9月に解散を余儀なくされた。
高陽ワンダーズは結局、3シーズンしか活動できなかった。しかし、韓国の歴史上初めて「KBOドラフトから漏れた選手」「KBOを戦力外になった選手」の受け皿を作ったという功績は小さくない。
韓国の選手にとっても、KBOでも海外進出でもない「第三の選択肢」が現れたことは、大きな意味を持っていたはずである。

2015年~2016年:「漣川ミラクル」の誕生とその影響

高陽ワンダーズの解散によって、「第三の選択肢」は完全消滅かと思われた。
しかし、2015年3月、京畿道漣川郡を拠点とする新球団「漣川ミラクル」が韓国史上2番目の独立球団として設立され、「第三の選択肢」消滅の危機は回避された。
高陽ワンダーズと異なり、漣川ミラクルはKBOフューチャーズリーグに参加せず、2015年から2016年の2シーズンは、週2回、ハンファイーグルスの三軍や大学野球、高校野球チームとの練習試合を行った。

漣川ミラクルの後を追って、ソウルを拠点とする「ジャーニーマン外人球団」(※ここでの「外人」とは「外国人」ではなく「アウトサイダー」という意味)が2016年に設立され、同年11月には「坡州チャレンジャーズ」の創設が発表された。

2017年:「韓国独立野球連盟リーグ」発足

漣川ミラクルの取り組みに目を付けたのは、2010年に設立され細々と活動してきた、韓国実業野球連盟だった。2015年には大韓野球協会の理事会において「韓国独立野球連盟」に団体名が変更され、2017年に入って「韓国独立野球連盟リーグ」が発足し、2017年4月24日にソウルの木洞野球場で開幕戦を行った。

韓国独立野球連盟リーグは、ジャーニーマン外人球団と漣川ミラクルの二球団でスタートし、2017年シーズンは18試合を戦って9勝8敗1分けでジャーニーマン外人球団が優勝した。

2018年:独立リーグも「2リーグ制」へ

2018年に入ると、韓国独立野球連盟リーグは「KIBAドリームリーグ」と改称し、ジャーニーマン外人球団、漣川ミラクル、そして坡州チャレンジャーズの3球団が正規リーグ16試合を戦った。正規リーグでは坡州チャレンジャーズが11勝2敗3分で優勝した。また、交流リーグと銘打って、新設の「議政府新韓大学フェニックス」と各チームが8試合ずつの練習試合を行った。議政府新韓大学フェニックスは24試合を戦って7勝14敗3分という結果だった。

前年秋に設立された「高陽ウィナーズ」「楊州レボリューション」「城南ブルーパンダズ」は、KIBAドリームリーグに合流せず、京畿道野球ソフトボール協会が設立した「京畿道チャレンジリーグ」に参加した。このリーグは試合数がチームによってバラバラで、初年度は高陽ウィナーズが50試合、城南ブルーパンダズが44試合、楊州レボリューションが48試合を戦い、高陽ウィナーズが優勝した。

2018シーズン終了後、京畿道チャレンジリーグはKIBAドリームリーグの運営母体である韓国独立野球連盟と統合して「京畿道独立野球連盟」を発足させると発表したが、韓国独立野球連盟側は総裁名義でこれを否定し、京畿道独立野球連盟は韓国独立野球連盟とは別団体として歩み始めることとなった。

2019年:二つの「京畿道リーグ」と、KIBAドリームリーグの崩壊

京畿道チャレンジリーグは「GIBF京畿道独立野球団リーグ」という名称に変更して開催されることとなり、KIBAドリームリーグから漣川ミラクル、坡州チャレンジャーズ、議政府新韓大学フェニックスが移籍し、楊州レボリューション、高陽ウィナーズ、城南ブルーパンダズとあわせて6球団制となった。この年は城南ブルーパンダズが優勝した。

「GIBF京畿道独立野球団リーグ」と並行して京畿道独立野球連盟主催の「GBSA韓国独立野球団京畿道リーグ」が開催され、議政府新韓大学フェニックスを除く5球団が参加し、高陽ウィナーズが優勝した。なお、二つの「京畿道リーグ」いずれも球団ごとに試合数が異なっていたほか、楊州レボリューションは10試合消化時点で「GBSA韓国独立野球団京畿道リーグ」への参加を取りやめた。

2019年は二つの「京畿道リーグ」が、ほぼ同じチーム構成により開催されたが、2020年以降は「GBSA韓国独立野球団京畿道リーグ」が「独立野球団京畿道リーグ」と改称して、京畿道野球ソフトボール協会の主催により開催されることとなった。

一方のKIBAドリームリーグは、2019年から「参加球団に会費(参加に対する手当)を出さない」という方針を発表したところ、坡州チャレンジャーズと漣川ミラクルが脱退し、ジャーニーマン外人球団と議政府新韓大学フェニックスの2球団でリーグ戦を行った。
議政府新韓大学フェニックスは本拠地が京畿道に存在したため、前述の「GIBF京畿道独立野球団リーグ」にも参加できたが、ソウルが本拠地のジャーニーマン外人球団はそれも出来ず、KBOの二軍との交流戦や高校野球、大学野球チームとの練習試合を行うほかなかった。
結局、KIBAドリームリーグの活動は2019年シーズン終了をもって事実上停止し、ジャーニーマン外人球団も、存続はしているものの、2020年以降活動休止状態となっている。

2020年~:変化を続ける独立野球団京畿道リーグ

2020年以降、韓国の独立野球界は京畿道リーグがその中心を占めている。
2020年は漣川ミラクル、高陽ウィナーズ、坡州チャレンジャーズに加えて、新設球団の「龍仁パタ兄野球団」が参加した。チーム紹介の項で詳述するが、龍仁パタ兄野球団は、韓国の独立リーグ球団として初めて「選手から参加費を徴収しない」ことを謳っていた。2015年以降に設立された韓国の独立リーグ球団は、基本的に選手に給与を出すのではなく、選手から参加費を徴取する形態で運営されることが基本である。つまり韓国の独立リーガーはアメリカの独立リーグで言うところの「タックス・プレーヤー」が殆どであり、そこに風穴を開けたのが龍仁パタ兄野球団であった
長らく参加チームごとに試合数がバラバラの状態で開催されてきた京畿道リーグであったが、2020年にようやく「全球団48試合」という制度が確立した。優勝は坡州チャレンジャーズ(28勝19敗3分)であった。

なお、2020年には、リーグに所属しない独立球団として「仁川ウェーブス」が設立された。
この球団は当初、京畿道リーグとは別の独立リーグを立ち上げてそこに参加することを想定していたが、COVID-19の影響でリーグ設立が立ち消えとなり、2021年はSK、キウムの二軍や大学野球チームと、2022年はSSG、ハンファ、KT、キウムの二軍や大学野球チームと練習試合を行った。
その後、独立球団ではなく実業野球(日本で言うところの社会人野球)チームへ転換したものの、2023年シーズン途中で球団が消滅した。

2021年に入り、京畿道リーグは一気に加盟球団が増えた。
1シーズンで龍仁パタ兄野球団が撤退した一方で、「SCORE BONハイエナス」「城南マグパイズ」「始興ウルブス」が加盟し、6球団制となった。
この年はチームごとに試合数が変動し、新設のSCORE BONハイエナスが41試合を戦って28勝8敗5分で優勝した。
SCORE BONハイエナスは、龍仁パタ兄野球団と同様選手から会費を徴取しない方針を掲げ、充実した設備を誇ったが、運営コストが他球団の2倍かかっており、結局1シーズンのみで解散を余儀なくされた。

2022年には始興ウルブスが拠点を移し「加平ホエールズ」として再出発した。また、新球団として「抱川モンスター」が加盟した。この年は全球団40試合制となり、城南マグパイズが優勝(27勝8敗5分)した。

2023年は、新たに「水原パインイグス」が加盟し7球団制となった。なお、同じ水原を本拠地として設立準備を進めていた「水原ドリームス」については、京畿道リーグへの参加が認められず解散に至ったが、水原市当局がドリームスの参加を意図的に妨げたのではないかという疑惑がもたれている。

高陽ワンダーズが誕生してから10年以上が経過し、韓国にもようやく「独立リーグ」が定着しつつある。しかしその活動範囲は京畿道に限られ、また近年では新規参入球団が1年で解散という事態が相次いでいる。その先行きは極めて不透明だ。

(2024年5月加筆)
2024年、韓国の独立リーグは激震と共に幕開けした。1月11日、ある独立リーグ球団の上級幹部がKBO球団の監督との交友関係を匂わせて選手から巨額の金品を受け取っていたが、当該選手はKBO球団に入団できず、この事実を「KBOクリーンベースボールセンター」に告発したということが報道された。本件については、2024年5月の時点では目立った続報がないが、事態発覚直後に、当該選手が警察の事情聴取に対して「他の選手が、上級幹部に金品を渡してKBOに移籍した」という陳述をしたと報じられているため、今後問題が大きくなる可能性も否定できない。

また、2023年シーズンオフに高陽市が高陽ウィナーズを買収し、「高陽ワンダーズ」の呼称を復活させたことが、開幕前に明らかとなった。10年ぶりにワンダーズのロゴとユニフォームも復活した。選手も3名を残して刷新された。

2024年2月23日には、京畿道華城市を本拠地とする新球団「華城コリヨ」が設立された。当初は、京畿道リーグが毎年7月に参加申請を受け付けていることもあり、2024年のリーグ参加を見送っていたが、既存の京畿道リーグ球団が独立野球発展という理念に共感してリーグ側に参加への同意を求め、京畿道野球ソフトボール協会、京畿道体育会、京畿道が協議し、規定を一部変更して2024年からの参加が認められた。リーグ戦の日程が再調整され、2024年4月24日から華城コリヨが正式に参戦した。

2024年からは、従来使用して来たチームアップキャンパス野球場に加えて、3月14日の開幕戦で水原KTウィズパークを使用するなど、球場の選択に変化が生じている。
週に二日ないし三日、平日中心で試合を組み、華城コリヨの参戦後はチームアップキャンパス野球場の第1球場と第2球場で午前・午後に2試合ずつ同時進行でダブルヘッダーにて開催している。

京畿道リーグのレベル

京畿道リーグのレベルについて簡単に紹介しておきたい。
全球団40試合制だった、2022年シーズンの選手成績から、おおよそのレベルを推し量ることができる。
2022シーズンの各部門トップの成績を見てみよう。

最多勝:7勝(イ・チャンユル/漣川ミラクル)
最優秀防御率:3.71(パク・スンス/城南マグパイズ)
最多奪三振:96奪三振(ユン・ミンジェ/加平ホエールズ)
セーブ王:1セーブ(5選手が該当)
首位打者:.467(イ・ジョンジェ/加平ホエールズ)※2位の選手も打率.400
打点王:52打点(イ・ジョンジェ/加平ホエールズ)※リーグは40試合制
本塁打王:10本(イム・ドギョン/漣川ミラクル)
盗塁王:26盗塁(ソン・ジョンビン/加平ホエールズ)
WHIP:1.238(パク・スンス/城南マグパイズ)
OPS:1.360(イ・ジョンジェ/加平ホエールズ)
投手WAR:-1.717(アン・スンジュン/高陽ウィナーズ)
打者WAR:0.765(ファン・ヨンムク/漣川ミラクル)

端的に言って、京畿道リーグは「超絶打高リーグ」である。

韓国独立球団紹介(2024年現在活動中のチーム)

漣川ミラクル

創立:2015年3月20日
縁故地:京畿道漣川郡
ホーム球場:ソンゴクベースボールパーク

高陽ワンダーズに続き、韓国で2番目に誕生した球団。現存する球団では最も歴史が長い。
2018年9月には、ベースボール・ファースト・リーグ(当時、現・関西独立リーグ)の兵庫ブルーサンダーズ、和歌山ファイティングバーズと交流協約を締結した。
元ハンファのパク・ジェヒョン、元斗山・ネクセン・KTのキム・ミンチョルなど、KBO出身選手も一定数在籍している。また、KBOへの移籍選手を数多く輩出しており、イ・ガンヒョク(サムスン出身、2015年12月にNCへ移籍)から、パク・ヨンビン(NC出身、2022年11月にNCへ復帰)に至るまで、6人の選手が漣川ミラクル経由でKBOに移籍している。

日本と縁がある主なOB選手
パク・セジュン:漣川ミラクルを経て、2017年に信濃グランセローズでプレー。
キム・ウォンソク:元ハンファ。SNS炎上が原因で退団を余儀なくされ、漣川ミラクルを経て2019年に福島レッドホープスに入団。
イ・ジョンウ:2016年にシンセリティ硬式野球部でプレーしたのち、漣川ミラクルに入団。

坡州チャレンジャーズ

創立:2016年11月28日
縁故地:京畿道坡州市
ホーム球場:キョハ野球場

韓国国内で3番目の独立球団。KBO新人ドラフトで指名漏れした選手や、KBO球団を戦力外になった選手にチャンスを与えることを目的として創設された。2018年には韓国独立野球リーグに参入し、いきなり優勝を果たした。
2017年10月にはヒョン・ドフン、キム・ホジュンの二名が斗山に育成選手として入団し、2018年9月10日には、ハン・ソンテが坡州チャレンジャーズ所属選手として初めてドラフト指名を受けLGに入団した。

日本と縁がある主なOB選手
ハン・ソンテ:学生時代に野球部所属経験なし。2017年に坡州チャレンジャーズに在籍したのち、2018年に栃木ゴールデンブレーブスでプレー。従来、KBOは「アマチュア野球経験者」のみにトライアウト受験を認めてきたが、国家人権委員会に「アマチュア野球未経験者にも門戸を開いてほしい」と訴えた結果KBOのルールが変わり、トライアウトを経て2018年にドラフト指名を受けLGに入団。2023年から坡州チャレンジャーズに復帰。
ヒョン・ドフン:京都国際高校、九州共立大学出身。2018年に斗山へ育成選手として入団。

高陽ウィナーズ⇒高陽ワンダーズ

創立:2017年6月12日(2023年オフに「高陽ワンダーズ」に改名)
縁故地:京畿道高陽市
ホーム球場:エースボールパーク

旧・高陽ワンダーズと同じ高陽市を縁故地とするチームだが、旧ワンダーズとの関係はない。
大学野球でプレーする息子の進路を確保するために一念発起したキム・チャンホン氏が立ち上げた球団。我が子の為に球団を立ち上げる、というのは、かつての関西独立リーグに短期間存在した「大和侍レッズ」を彷彿とさせる。
選手のセカンドキャリア形成に力を入れており、指導者講習受講、審判員課程修了、日本など国外のリハビリテーション学校留学などを支援している。
2019年に京畿道独立野球リーグへ参入していきなり優勝した。同年9月にはキム・ドファンがLGの入団テストに合格し、育成選手として入団した。
創立初年度にプレーしたオ・セフンは、兵役を終えたのち2021シーズンから斗山に育成選手として入団したものの、1年で放出され、高陽ウィナーズに復帰したのち2022年5月にハンファへと移籍した。このほか、キム・ギュナム(2018年12月SKに移籍)、チェ・スビン(元SK、2023年にKIAへ移籍)がKBOへ移籍している。
2023年オフに高陽市が球団を買収し、「高陽ワンダーズ」の名称を復活させた。

城南マグパイズ

創立発表:2019年12月18日
縁故地:京畿道城南市
ホーム球場:炭川野球場

2020年から京畿道リーグに新規参入予定だったが、COVID-19の影響によりリーグ参加を取りやめ、2021年から正式にリーグへ参加した。
城南ブルーパンダズの解散後、地元の大学教授と野球ソフトボール協会が創設した。
2022年、創設以来初めて公式戦を1位で終えたが、チャンピオン決定戦では2位の漣川ミラクルに1勝3敗で敗れた。韓国の独立野球史上初めて、公式戦1位チームがチャンピオン決定戦で敗れた例となった。
2021年11月にはリュ・ハソンがキウムへ移籍したほか、キウムからFA宣言していたチョン・チャンホンが、2023年3月6日からキウムと再契約した3月26日までの20日間だけ在籍した。
チョン・ユンファン(元KIA)などKBO出身選手や、高卒、大卒選手に加えて、実業野球の「天安メティス」出身選手(パク・スンス、イ・フンの2名)が在籍していることが特徴である。

日本と縁がある主なOB選手
キム・ジョンテク:2016年までLGでプレーし、2017年に群馬ダイヤモンドペガサス、2018年に栃木ゴールデンブレーブスでプレーした。2019年に漣川ミラクルに入団したのち、2021年に城南マグパイズでプレーした。

加平ホエールズ

創立:2021年(始興ウルブスとして)
縁故地:京畿道始興市→加平市
ホーム球場:加平市総合運動場野球場

韓国の独立リーグ球団として初めて「移転」を経験したチーム。当初は「始興ウルブス」としてスタートしたが、2022年から「加平ホエールズ」にチーム名を変更した。
新規参入球団が比較的上位につけることが多い京畿道リーグにおいて、創設初年度、2年目ともにやや低調な成績である。
元ネクセン・NC・ロッテのカン・リホのようなKBO出身選手が在籍する一方で、ファン・ジェヨンのように「野球部所属経験なし」の選手もいる。
創立からまだ間もないチームだが、シン・ジェヨン(ネクセン出身、2021年6月にSSGへ移籍)、イ・ジョンジェ(2022年10月、ハンファに育成選手として入団)の2名をKBOへ送り出している。

日本と縁がある主なOB選手
キム・ドンヨン:2019年に高知ファイティングドッグスでプレーしたのち、2021年に入団。

抱川モンスター

創立:2022年
縁故地:京畿道抱川市
ホーム球場:なし

2018年に設立された明知(ミョンジ)大学野球部が、大学リーグへの参加が困難になり、独立野球団へと転換するという珍しい経緯で生まれた球団。
初年度の2022年は、京畿道リーグにおいて1勝39敗、勝率.025を記録し最下位となった。他球団と異なり、高校卒業後上位レベルの試合を経験した選手が少ないため、厳しい戦いを余儀なくされている。また、KBO出身選手や、独立リーグ他球団出身の選手もゼロであったが、2024シーズンはSSGランダース出身のヤン・ソンリュルをはじめ、KBO経験者や独立リーグ経験者が増えている。
外野手のキム・ジェウォンは、中学校時代陸上部に在籍していた。

なお、2024年5月より、習志野高校→東洋大学準硬式→石狩レッドフェニックス→信濃グランセローズ→大分B-リングスと日本の独立リーグを渡り歩き、ニカラグアリーグのアギラス・インファンテスでもプレーした内野手の土屋剛(つちや・ごう)が、球団初の助っ人外国人選手として在籍している。

水原パインイグス

創立:2022年12月26日
縁故地:京畿道水原市
ホーム球場:クヮンギョ野球場

イ・ジェジュン水原市長の「水原を野球のメッカにする」という公約により設立された市民球団である。「パインイグス」というチーム名は、水原市を象徴する松の木(Pine)と白鷺(Egret)を掛け合わせた造語である。
元SSGのイ・ジェソン、元ロッテのチョン・デヒョクなど、KBO出身選手も在籍している。
また、パク・スンフンは水原パインイグスで6試合だけプレーしたのち、2023年4月26日に、二軍の人手不足にあえぐKIAに育成選手として入団し、チームのKBO移籍選手第1号となった。

華城コリヨ
創立:2024年2月23日
縁故地:京畿道華城市
ホーム球場:ビボン野球場

チョン・ミョングン華城市長の積極的な支援によって創立された。チーム名は華城市のマスコット「コリヨ」を冠している。
元斗山のイム・ジュンヒョン、元サムソンのチャン・ジフンをはじめ、KBO出身選手も在籍している。また、投手のキム・ギョンムクは龍仁パタ兄野球団、SCORE BON ハイエナス、坡州チャレンジャーズを渡り歩いてきた選手であり、過去の在籍球団のうち坡州を除く二球団が消滅している。
外野手のカン・ドンウは台湾呉鳳科技大学出身であり、韓国球界では比較的珍しい経歴をもつ。


韓国独立球団紹介(消滅球団)

高陽ワンダーズ

創立:2011年9月15日
解散:2014年9月11日
縁故地:京畿道高陽市
本拠地:高陽野球場

韓国史上初の独立球団。既に述べた通り、KBOフューチャーズリーグに参加した。
名将、キム・ソングンが監督を務め、日本人指導者も活躍したが、放漫経営で資金難に陥り解散した。日本と縁のある選手が数多く在籍した。

日本と縁がある主なOB選手
小林亮寛:元千葉ロッテ→香川オリーブガイナーズ。2012年から2シーズンをワンダーズで過ごした。
安田慎太郎:長崎セインツ、神戸サンズを経て2012年に入団。2020年、富士大学野球部監督に就任。
ディオーニ・ソリアーノ:元広島。CPBLの統一ライオンズを経て、2013年から2シーズンをワンダーズで過ごした。カープアカデミー在籍中に広東レパーズへ派遣経験があり、中国、日本、台湾、韓国でプレー経験をもつ数少ない選手の一人である。
シン・ソンヒョン:京都国際高校出身。元広島。2013年から2シーズンをワンダーズで過ごしたのち、ハンファを経て斗山に入団。
マキシモ・ネルソン:元中日。2014年にワンダーズでプレー。

ジャーニーマン外人球団
創立:2016年12月2日
解散:未発表だが事実上活動停止
縁故地:ソウル市
ホーム球場:南楊州室内野球場

KIBAドリームリーグに参加していたが、2023年現在事実上活動を停止している。
元NCのイ・ヒョジュンが2017年にプレーし、翌年NCへ復帰した。
2018シーズンから外国人選手を迎え入れ、ドミニカ共和国出身のフランシスコ・ロサリオ、ベネズエラ出身のラモン・ウラシオがプレーした。
2020年日本公開の韓国映画『野球少女』に、SKワイバーンズとともに実名で登場した。

楊州レボリューション

創立:2017年
解散:2020年
縁故地:京畿道楊州市
ホーム球場:長興生活体育公園野球場

サンバンウルレイダースで活躍したパク・サングンが監督を務めた。
選手の負傷離脱や軍入隊を理由に、2019年シーズン途中にGIBFリーグを脱退。
シーズン途中からGBSAリーグに参加するも、同年オフに解散した。
GBSAリーグでは、試合数が他球団と異なるため参考記録だが、10試合、0勝8敗2分、勝率.000を記録した。これはおそらく、世界の「プロ野球・独立リーグ」におけるシーズン最低勝率記録である。

城南ブルーパンダズ

創立発表:2018年1月19日
解散:2019年11月20日
縁故地:京畿道城南市
ホーム球場:炭川野球場

2018年、京畿道チャレンジリーグに参入。翌年には独立野球団京畿道リーグで初優勝を成し遂げた。
しかし、所属選手のKBO進出という目標が叶わず、同年オフに解散した。
なお、京畿道独立野球連盟は、当初城南ブルーパンダズの運営母体「スポーツトゥ野球学校」が運営していた。

日本と縁がある主なOB選手
渡辺明貴:2017年から2シーズン、第一学院高校に在籍しつつ滋賀ユナイテッドBCでプレー。2018年に新潟アルビレックスBCに練習生として在籍したのち、2019年に城南ブルーパンダズでプレー。その後、TOKYO METS、茨城アストロプラネッツを経て、2022年に横浜DeNAベイスターズから育成ドラフト4位で指名され、現在育成選手として在籍

議政府新韓大学フェニックス

創立:2017年12月
解散:2020年
縁故地:京畿道議政府市
ホーム球場:なし

創立当初はKIBAドリームリーグに所属し、2019年には京畿道独立野球連盟リーグに加盟し、3勝18敗1分、勝率.143を記録した。
元サムソンのウ・ビョンゴル、ペ・ジンソンが在籍した。

龍仁パタ兄独立野球団

創立:2019年
解散:2020年
縁故地:京畿道龍仁市
本拠地:モヒョン・レスピア野球場

野球系YouTubeチャンネル「パタ兄」が運営するチームで、選手から参加費を徴収せず、YouTubeの収益で運営する形式を採用した。
所属選手を売り込むために、洗練されたビデオクリップをYouTubeに投稿するなど、斬新な取り組みが話題を呼んだ。
COVID-19の影響もあり、わずか1シーズンで解散したが、状況が良くなればチームを復活させる意向である。
2021年にはイ・ジテがアマチュアFAとしてフィラデルフィア・フィリーズと契約し、2022年にはキム・ソジンがロッテから2次ドラフト9巡目で指名された。
キム・ソジンは、2020年に龍仁パタ兄独立野球団、2022~23シーズンにオーストラリア・ABLのジーロング・コリアに在籍したほかは一切チーム所属経験が無く、また、高校をホームスクーリングで終えて「高卒認定試験」に合格し高卒資格を得た選手であり、韓国プロ野球史上初の「高卒認定試験」出身選手となった。

SCORE BON ハイエナス

創立:2020年
解散:2021年11月10日
縁故地:京畿道広州市
ホーム球場:チームアップキャンパス

BON ITというIT企業が設立したチーム。参加費徴収無し、寝食提供などは斯くの条件を掲げ、ハンファのレジェンドであるソン・ジンウを監督に迎えてスタートした。
元LGのイ・チャンユルをはじめ、KBO出身選手も多数参加した。
2021年の京畿道リーグでいきなり優勝するなど好調であったが、球団運営費が他球団の2倍に達し、莫大な運営費に耐えられず1年で解散した。
活動期間は短かったが、ユン・サムフム(元斗山、2021年6月にハンファへ移籍)、パク・ジョンジュン(元ネクセン→斗山、2021年10月にサムソンへ移籍)、クォン・グァンミン(元シカゴ・カブス傘下、2021年8月にハンファへ移籍)の3名がKBOへ移籍した。

日本と縁がある主なOB選手
ソン・ドンウン:2020年、埼玉武蔵ヒートベアーズに入団が発表されたが、COVID-19の影響で来日が叶わなかった。




















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