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【感想メモ】『狂言三代』2023.8.2

2023月8月2日に国立劇場で上演された『狂言三代』が大変とても素晴らしく、すごく良かったので、覚え書きとして感想を残そうと思います。推しに狂ってるオタクもある意味エンターテイメントだと思いますので。


参考記事↓
野村萬斎・裕基に聞く“狂言三代”「お客さまと共犯関係を結びながら、どこかで絶対に裏切っていく」| SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

〜2023年7月(公演3週間前)〜

野村家三代が!!!狂言ばっかりの舞台を国立劇場でやる!?!?

能狂言にハマりたての私、まだまだ情弱でこの公演の存在をTwitterで公演の数週間前に知る。(気のせいかもしんないけど伝統芸能のチケットって売り出すのすごく早くない…?半年前とかから売ってません…?)

演目を見ると、狂言師が袴で舞う「小舞」のほか、観てみたいなと思っていた池澤夏樹先生原作の新作狂言『鮎』、そして先日(※3日くらい前)DVDを買って初めて観て、いつか絶対生で観たいと思っていた『MANSAIボレロ』。
えっこれは絶対に観たいぞ。ド平日で東京で夜公演だけど。なんとかなる…なるか?なる??
結局、仕事のスケジュールも(無理言って)調整させてもらい、弾丸で行くことになりました!本当にすみません!!!ありがとうございます!!!

ある程度公演期間がある演劇と違って、能楽は「その日、一回きり」の場合がほとんど。演目の内容自体は繰り返し上演されますが、出演者や演目の組み合わせはほとんどの場合その公演一度きり。
観たいものは観れるうちに観ておきたい。映画や映像作品と違って、舞台作品は観客・演者ともに生きている者同士でしか観ることができない。観に行けない理由は数あれど、観に行かずにする後悔はもう散々経験したし、もうたくさんだ。これはもう半ば私の意地で、後悔していたあの時の私との約束なので。

能と狂言

私も初心者なので偉そうに解説できないけど、フォロワー親切な補足として能と狂言の簡単な説明を。

「能」は、例えるならミュージカルやオペラに近い舞台演劇です。歴史上の偉人や鬼、物の怪などを登場人物に、ファンタジーや悲劇のストーリーを音楽や謡で表現し、ほとんど台詞がありません。能面を被って舞うのも能の方。

「狂言」は、雑な言い方をすると室町時代から続くコントで、コメディです。町民など、比較的身近な人を登場人物に、日常生活での出来事を面白おかしく表現したものです。能と違って台詞回しが多く、言葉遣いは古来のものですが内容もわかりやすいです。客席もドッカンドッカンウケてるし。

この能と狂言、ふたつをまとめて「能楽」とも呼びます。

ちなみに、能も狂言も基本的に上演中には拍手をしないようで、鬼滅の時にちょっとビビりました。拍手喝采は西洋由来のものだから能楽の雰囲気に合わないなどの理由だそうですが、いちばん最後の演目の終了後、演者さんの退場時に拍手をすることが多いようです。私は毎回周りの雰囲気に合わせて拍手しています。したいじゃん拍手…!

いきさつ

いつの間にかこんなことになった私のいきさつを書いておきます。どこかに書き残しておきたいので…。

今年の5月末、『能狂言 鬼滅の刃』を「鬼滅も好きだし能狂言て面白そ〜!」と、気軽〜〜〜な気持ちで観に行って、それから音を立てて沼に落ちました。私が1番ビックリしてる。最初の客席降りの時に野村萬斎無惨様と目が合ってからの記憶があんまりない。

あと、別記事で書いてるこないだうちに転がり込んできた刀のことも意識してなかったと言えば嘘になります。能狂言鬼滅観て少し経ってから知ったけど、この刀の先々代の主が能好きで有名だったようです。その時代からほぼほぼ変わらず続いてる伝統芸能、今でも観られるって凄くない?推せる。

中学生の時に授業で観たきりだった能狂言、フワッとしたイメージだけの知識で観に行きましたが、すごく楽しめました。
小さな能舞台の上で、最小限で描かれる舞台表現が想像よりも何倍もパワフルで、細やかな表現がとても豊かで、色鮮やかで、そして何よりとても美しかった。あと鼓の音がすごい。銃声?
気が付いたら数週間後にはもう野村萬斎さんのファンクラブに入ってたし、鬼滅の方ではすっかり鬼(舞辻無惨推し)にされていた。何で人生狂うかわかりませんね!!!能狂言鬼滅の感想もちゃんと書き残しておきたい…。


国立劇場

8月2日当日、国立劇場。職場から直行のギリギリ日程、無事に到着。
最寄りの半蔵門駅からは明らかに目的地が同じのお着物を着ている方がちらほらいて道に迷うこともありませんでした。この酷暑の中でも夏着物が涼しげで素敵だった。私もいつかお着物着て能楽観に行きた〜い。

国立劇場は初めて来たんだけれど、あらゆる所に「さよなら国立劇場」のポスターが貼ってあってビックリした。今年の10月から建て替えなのか…!最初で最後だ…!
ほんと今まで縁がなかったけど、歌舞伎や落語など伝統芸能に特化した劇場という感じで、提灯がたくさん並んでいて雰囲気があっておしゃれ。ジャンルは全く違うけど何となく宝塚大劇場のような雰囲気を感じる。

あとコインロッカーが10円。見間違えたかと思った。何時代?

小銭10円玉しか持ってなかったから奇跡だと思った

もともと取ってた座席はA席の見切れ席(SS〜S席はとっくに売り切れ)だったんだけど、開演前に座ってたらスタッフの方が来て、空いてる別のA席を紹介してくださいました。親切…!!!そんなことあるんだ!!!結局、1階中列ド正面のすごく良い席に変更してもらいました。しかも偶然にもカメラ席の前で、多少背伸びしても後ろを気にしなくてよい。そんなことあんの??(2回目)

そうこうしているうちに開演。無事に来れて良かった…。

小舞

狂言の演目の中にある舞、主に狂言師が舞う『小舞』、これを今回野村家三代3本立て続けで。贅沢!!!とても素敵だった…。

小舞中心の演目自体この時初めて観たんだけど、能の舞ともちょっと違って、演目にもよるんだろうけど軽快でリズミカルな動きも多くて純粋に楽しいし、表現が美しい。「今の多分めちゃくちゃ難しい動きだろうな」というのがさりげなく散りばめられていてビビる。

三者三様の個性の表れた舞、どれも美しかった。伝統芸能はこういう見方もあるのか。

舟渡聟

ふなわたしむこ。こちらはストーリーがある狂言。お嫁さんのご挨拶に行く途中で船頭さんにお酒を強請られてしまうが、実はその船頭さんがお姑さんだった…というお話。

前に萬斎さんと祐基さん親子の『二人袴』を観て、それがもう大変良かった…!めちゃくちゃ笑ったし全員お茶目でかわいらしくて良かった。

今回は万作さんと祐基さんの祖父孫コンビ。良さしかない。思った以上にほのぼのしていて素敵だった。万作さんの芸の安定感と裕基さんのフレッシュさの相性が良いというか、話の内容も相まってコミカルで楽しく、なんとなく穏やかに観ることができる演目でした。

親子の『二人袴』観た時も思ったけど、ああいう伝統芸能の家系って我々庶民には計り知れない苦悩とか呪縛とかいろんな大変なことがあると存じますが、そういうのを微塵も感じさせないほのぼのさ…そういう風にしているだけなのか、見せ方がとても上手なのか…なんかわからんがすごく良いな………

小説家 池澤夏樹先生の小説を原作とした新作狂言『鮎』、すごい評判いいな〜とは思ってたけど観てみてわかった、これは面白いわ。狂言って何もわからないけどとりあえず観に来ました!みたいな人にも全然いいと思う。わかりやすいし純粋に面白くて、古典的な表現や技術を全面に活かしつつ、現代の舞台芸術として落とし込んでいてすごい。そしてどの場面も綺麗で、展開の移り変わりが目まぐるしくて楽しい。
若い人にこそ新しく映るだろうし、狂言玄人の方々が唸るであろう狂言あるあるみたいな場面もたくさんあって、上手く仕込まれてるなと思いました。「狂言」で私たちが観る面白い部分、コミカルな動きや、ユーモアのあるやりとりが更に現代向けに工夫されているのを感じました。
私は真面目な顔して面白いことやる人達に大変弱いのでめちゃくちゃ笑ったしすごく良かった。鮎達かわいいね。

他でも散々言われてると思うけど、演劇としての狂言という新しいジャンルを感じました。とても楽しかった!!!惜しむらくは今そんなにたくさん上演してないこと!!!地方公演またやって〜!!!

MANSAIボレロ

これを観に来た。いやもうこれほんと凄かっためっちゃ良かった、これが観たくて頑張って来た。観て良かった。

DVDで観た公演↓

の演出とは全然違って、いえこれもインスタレーションの演出がすごく美しくて一生観ていられるなって感じなんですけど、また全然趣が違って、
今回は国立劇場の広い舞台の真ん中、上部にしめ縄が飾られていて、
その下で移り変わる単色の照明で舞うボレロ、すごく神聖で、とても美しかった…

舞で表現する、感情、喜怒哀楽とそれ以外、言葉では表現できない別のものの表現、
あの空間でのあの照明とスモークの演出が神がかってて、神聖的で神秘的な祈りで奉納で、真っ直ぐな敬虔な神楽だった………凄かった………美しかった…………もっかい観たい……………円盤にしてください……………

萬斎さんのカリスマ性って、実際に観劇するまでは、言葉は悪いけどある意味で教祖的な、人を惹きつける求心力があるものなのかなと勝手に思ってたけど、
今回のMANSAIボレロを観ていたら、単純にそういうことじゃなくて、舞台表現のそのものがあらゆる感情の完成形で、それは祈りや願いや内面のものを総括したひとつの形で、そこに人が惹きつけられるんだなと思いました。伝統芸能という培われた歴史の上で今もなお育ち続ける終わりのない完成形、これからも生まれる新しい輝きが、絶えず光って在り続けるんだろうなと思います。
あと萬斎さんの演出作品、息子さんの祐基さん主演の『ハムレット』、監督映画の『虎の洞窟』も、どちらも内面性の描き方がすごく良かったので、今後の新しい演出作品もバンバン観たいなと思いました。
特に『虎の洞窟』、自分勝手な印象ですが私が大昔に作ってた同人誌をヨシとしてくれてたフォロワーの皆様と相性いいと思う。よろしくお願いします(?)


書き残しておきたかったので至極正直な感想をつらつら書きましたが、沼って数ヶ月の初心者だし変なこと書いてたらすみません。こういう沼りたての頃の感想、多分自分でも後から見返したら絶対面白いなと思って。


ここまでお読みくださり誠にありがとうございました。なんかいつもすみません!ちょっとでも気になった方はぜひ能狂言観ましょう!ぜひ劇場や能楽堂で!『能 狂言 鬼滅の刃』は9月に福岡・名古屋・横浜で公演です!!!


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