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刀剣登録審査会に行ってきましたレポ【登録証再交付手続き】


〜いきさつ〜


ある日、実家に帰ったら見知らぬ刀が私を待っていた。

というのも、以前、曽祖父の指揮刀を私が(金たわしで)ピカピカにしたことがあって、それを父が友人に話したところ、「うちにも刀あるから貰ってくれや」とのことで二つ返事で引き受けたそうな。どっちも軽率!!!

ただ、その刀の銘を見た初対面の第一声が「そんなわけあるかい」と言わざるを得ないようなもので、しかも鑑定書はおろか登録証すらない!これから私どうなっちゃうの〜!?


………ということがあり、体験として面白かったので記録に残しておきます。
この記事で主に紹介するのは、

・登録証再交付手続き
・所有者変更手続き
・銃砲刀剣類登録審査会

です。

ちなみに私個人の話をしますと、小学生の頃にアニメ「シャーマンキング」というジャンルを通っており、その中の阿弥陀丸という侍のキャラを今でも推し続けているオタクのため日本刀知識にはもともと明るく、さらに大人になってからゲーム「刀剣乱舞」というジャンルを通ったので、あちこち刀を巡って巡礼もしたし日本刀の勉強会にも何回か行っていました。
いろいろあって今は模擬刀と居合刀を数振、真剣は刀屋さんでお迎えした脇差を所持しており、真剣の手入れも日常的にしてたし基本的な知識もありました。
ただ、まさか登録証が付いてない刀が転がり込んでくるとは思っておらず、手続きについては慌てて調べました。

まず1番の問題は、この刀の登録証が単にどっか行っちゃっただけなのか、もしくは登録されてないのか。そこを調べることからスタート。

銃砲刀剣登録証

通称「登録証」、正式名称「銃砲刀剣登録証」。
日本刀(真剣)の所持に資格や免許は要りませんが、代わりにこの「登録証」が必要です。
登録証は各都道府県の教育委員会が発行したもので、いわば刀にとっての身分証明書でありパスポート。常に刀とセットで扱います。

銃砲刀剣登録制度は「文化財あるいは美術品として価値のあるものを個別に台帳に登録し、所有を可能とするもの」なので、真剣や銃を持っていてこの登録がない場合は銃刀法違反になってしまうというわけです。逆に言えば登録証があればオッケー。

ちなみに模擬刀や居合刀、刃の入っていないサーベルには登録証は必要ありません。以前私が(金たわしで磨いた)曽祖父の指揮刀も真剣ではなく刃が入ってないので登録証はありません。また、戦時中の一部の軍刀などで日本刀の製法で作られていないものも該当しません。

というわけで、今回のように既に登録されている登録証の再交付手続きは次の通り。
【再交付】
・その刀が登録されている都道府県の教育委員会に連絡
→再交付申請書を提出
→登録審査会にて手続き
→再交付手数料支払
→登録証発行
という流れです。

ちなみに、新規に登録する場合は最初に警察に届け出る必要があります。
【新規登録】
・最寄りの警察に発見の届出
→在住都道府県の教育委員会に連絡
→登録審査会で手続き
→登録料支払
→登録証発行
となります。

今回のこの刀の場合はそもそも登録されてるかどうかもわからず、登録されていたとしてどこの都道府県が発行したものかも定かではない状況だったので、まずは地元の教育委員会に問い合わせだ!ということでドキドキしながら電話をかけました。

教育委員会

県のホームページに載っていた、県の教育委員会の担当部署に電話で問い合わせ。刀を譲り受けたが登録証を紛失していること、そもそも登録されているか不明、ということを伝えました。

すると、県に登録されているデータベースから検索ができるので、登録の有無はそこで確認できるとのこと。それで見つからなかった場合は他県での登録の可能性が高いため、登録審査会で現物審査ののち、全国に照会して探すということでした。そこで一致するものがなければ新規登録になります、と。

今回の場合は刀に入っている銘のほかに前の持ち主(前の持ち主ってことは今はもう私が持ち主なのか…と思うなど)からの情報もあったので、それを伝えたら登録がすんなりと見つかりました。よかったー!!!ありがとう先代様!!!

これでこれから私のすることがはっきりしました。登録証の再交付の申請をし、指定された登録審査会に行き、登録内容と実物の刀を照会。合致すれば、登録証を再交付してもらえる!

電話する前は大丈夫かな?没収される?など、正直かなりドキドキしていましたが、教育委員会の方々はとても丁寧で親切だったのでとても助かりました。ありがとうございました。

しばらくして、郵便で登録審査会の案内の手紙が届く。コロナ禍もあってか、審査会は指定された日時に来てくださいとのこと。時間については何回か電話で連絡があり調整してもらいました。

ネットで見た審査会は何十人かがいっぺんに会場に入って他の人の刀や銃を審査してるのを見ながら待つ〜みたいな感じだったから、少人数だと緊張しそう。えっ何着て行けばいいんだ。スーツ?着物?きれいめカジュアル…!?

所有者変更手続き

実はもう一振、一緒に譲ってもらった脇差がありました。こちらには登録証があったので、所有者変更の手続きを行います。

所有者変更の手続きは簡単で、各県の指定された書式の書類に記入して教育委員会へ送る、以上。問題なく手続きがされれば特に連絡もなし。登録証には持ち主の名前は書かないので差し替えもいりません。刀剣を譲り受けた場合は20日以内に手続きをしましょう!!!

銃砲刀剣類登録審査会

指定された日時、指定された県の建物内の部屋で受付。
控室には待っている人が数人いて、刀っぽいものを持っている人の他に、槍を何振も持ってる人、どうみても銃を包んでいる布を持ってる人などがいました。想像してたより異種格闘技場みがある。

私はもともとオタクが高じて刀も好きだったし、今回の審査会が楽しみすぎて刀を持ち運ぶ用のしっかりしたケースを買ったくらいだったんだけど、きっといろんな境遇の人がいて、渋々来てる人もたくさん居るんだろうなと思いました。阿弥陀丸のオタクで良かった。ありがとう小学生の頃の私。

受付で必要事項を記入して、番号札を貰って順番を待ちます。ほどなくして順番が来て、審査会場へ。会場内はいくつかブースが分かれていて、刀担当と銃担当で分かれている感じでした。
呼ばれたブースで刀を出し、審査員の方に見てもらいます。ドキドキ。刀身や反りを測って、登録されているデータと見比べ、差異がないか確かめているようでした。もしここで登録のデータと不一致なら全国照会、全国でも合致しなければ新規登録。
審査員さんの席と離れていたから何言ってるかほとんど聞こえなかったけど、合致!みたいな言葉が聞こえて、心底ホッとした。良かったー!銘がめちゃ長いから記入係のお兄さん大変そうで申し訳なかった。

審査後、建物内の別の部署で手数料分の収入証紙を購入し、受付に戻って手続き。再交付の必要書類に記入。併せて、所有者変更届に記入(ここで自分でもめちゃ長の銘を手書きで書くことになる)。
登録証は後日郵便で送られてくるとのこと。
再交付手続き完了!一安心!!!

これからの予定

無事に登録証の再交付が出来たので、ここから次のスタート。
まず研師の方に研磨の依頼をしてピカピカにしてもらい、その後、日本美術刀剣保存協会が主催している鑑定審査に出します。鑑定審査では銘の真偽など、刀の価値についての鑑定が行われます。

この刀の銘と経歴があまりにアレなので、本当かな?大丈夫かな?という思いは最初からありましたが、真だの偽だの疑うことはいつでもいくらでもできるわけで、そこで切り捨ててしまえばすぐに終われてしまうんだけれど、今この時点でこの存在のことを1番よく知っていて、信じてあげられるのは世界で私だけで、ここで私が下手をすれば文字通りお蔵入りになってしまう。結果がどうであれそれだけは避けたい。
それにもしこれが偽銘だと言われても、奇妙なご縁でうちに来たこの刀のことはかなり好きだし、それはそれとしてハッキリしといた方が今後にとっても良いはず。

この後どうなるか全然わからないし、全部が徒労や杞憂で終わっても、未来でこの刀の主になる人にナメられないよう今の代で頑張ります。これはオタクの責務だと感じますので。


日本刀って日常に馴染みないし、急に遭遇して困っちゃう人もいると思うので、参考になったらいいなと思って書きました。何かしらの一助になれば幸いです。

(この後の研磨と鑑定審査について記録したくなったら書きますが、この後に何も記事がなかったら何かが上手くいかなかったものと察してください🥹)

kw


→続き書きました!
【日本刀】研磨依頼〜研ぎの旅〜鑑定依頼


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