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2030年EV革命が地方観光(地域づくり)に及ぼす衝撃

※この記事はしばらく公開にしておきます。

政策が甘い自治体ほど辛辣な地域環境になる予想

地方議会は首長から「排気ガスを出さなくなって良いやん。環境問題に貢献できるし」程度の認識ではないかと思えるくらいの市政レポートしか届かないのが地方の現状です。この話、ガソリン車のEV化がもたらす地方経済への影響をもっとしっかり考えておかないと、2030年から10年程は厳しい地方行政運営を強いられることになると考えて、対策をしていたほうがよいのではないだろうか? という考えの元、メモしておきます。

ちなみに政令指定都市など、人口の多いところはEV化に対してあまり大きな影響は受けないと考えられます。

レシプロエンジン車が少なくなるということは⁉

自動車産業がEV化へ進むことを考えれば、エンジン部品系部品工場は縮小することは間違いないでしょう。最も大きな痛手はエンジン鋳型を制作している部品工場と考えています。弊社取引先からの情報を聞く限りでは、後継者問題も含めて鋳型工場はかなり厳しい経営を強いられているようです。

ハイブリッド車も残るとはいえ、大量生産の法則から、ハイブリッドよりもEVのほうがコストダウンされるので、レシプロエンジンを載せたモデルは逆に高額になっていき、ますます鋳型工場の需要は下がっていくことが考えられます。これらに伴い、自動車関連業種での一時的な失業者増加が考えられます。「自動運転車が産業構造・雇用に与える影響」(経済産業研究所RIETI/日本生産性本部JPC/岩本晃一氏より)

おそらく軽自動車は最も早くピュアEV化されるでしょう。軽自動車にも衝突防止システムなどの運転支援システムが組み込まれたことで、20〜30万円ほど購入価格が上昇し、最終価格が200万円を超えるようになっている現代。EV化で部品点数も少なくなり、構造も簡単になるため、運転支援システムを入れても価格を下げることが可能となれば、その動きは早いと考えられます。(2025年頃に主力車種はEV化していると思われます)

つまり軽自動車関連の部品工場が多い地区は、ある程度覚悟しておいたほうが良いでしょう。TOYOTAから警告ともとれるメッセージも出ていましたが、自治体はこのメッセージをとらえていますか?

EV車の航続距離とインフラ整備・法令整備の壁

軽自動車に搭載されるであろうバッテリーでは、実用的な航続距離はおそらく100キロ圏内だと想定されます。地域内での買い物や送迎といった用途を考えれば、性能的には200キロ程度を目指したとしても、エアコンの仕様や渋滞、電欠した場合の充電ステーションインフラの脆弱さを考えると、往復100キロ程度の壁が存在すると考えられます。また充電時間に加えて、高速道路で電欠したばあい、原稿道路交通法ではガス欠と同じ扱いとなり、違反対象となります。これらの壁はEVが増加してきたと同時に考えられることで、使用による電池のヘタリなども加味すれば、「気軽にお出かけ」の距離がおのずと決まってきます。

都市圏から100キロ圏内の移動と観光動機

しばらくはガソリン車とEV車は併存するでしょうが、間違いなくどこかの点でガソリン車とEV車の比率は逆転するでしょう。そのときにはガソリン価格の変動も侮れません。

つまり都市圏から「ふらっと出かける」レジャー需要は、しばらくの間おのずと場所が固定されてくる可能性が出てきます。

では100キロを超える地域へ観光に来てもらうためには…よほどの観光動機が存在しなければ、公共交通を利用してまで訪れてくれるでしょうか? また公共交通を利用した場合の域内二次交通は大丈夫でしょうか?

「テレビで見たからちょっと行ってみた」というレジャー需要の幻想は抱かないほうがよろしいかと思います。

忘れがちな大型車について

エンジン部品工場の影響は大型車にも及ぶと思われます。日野といすゞとTOYOTAの提携はそれを表しています。

このことによって考えられるのは、水素パワートレインによる物流改革。そこには無人運転も入っているようなので、水素ステーションとともに道路側インフラの整備も必要になりそうです。バス・トラックともに条件は変わらないと考えていたほうが無難でしょう。

そもそも2030年には人不足が懸念されている

労働市場の未来推計 2030(パーソル総合研究所✕中央大学/2018年10月23日発表・2020年12月25日改訂)より

2030年、団塊ジュニア世代は60歳。定年延長で65歳まで伸びていたとしても、そもそも人手が足りないという予想です。

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注目する場所は人手不足となるであろうカテゴリーと地域です。最も人手不足になるのはサービス業。そして医療です。どちらも無人化しづらい業界でなので、人手不足は深刻になるかと思われます。

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地域に目を向けると、関東圏と中部工業地帯の人不足が目立ちます。これが何を意味しているのかといえば…。現在この圏内からの誘客で成り立っている地方観光ほど誘客のアテが無くなる可能性を視野に入れなければならないでしょう。忙しすぎて遠出をしにくくなる可能性です。

EV化と相乗効果で、レジャーは近隣地域までが標準になるか⁉

100キロ圏内で出かけることが標準となるのは考えすぎかもしれませんが、観光業界の場合入り込み客数などの計測がDX化されていません。規模の大小にかかわらず、数値取得とその変位を観測するデータが揃っていないのは、現在主流となりつつある計画設計手法を行う上で非常に問題となります。つまり小さな変化をとらえられなくて、需要を取りこぼす可能性が出てきます。そしてこの仮説、コロナ禍の行動データからあながち外れているとは思えません。

上記レポートから読み取れることは、外的条件が揃った場合、無理をしてまで遠方まで出かけなくても、近隣で済ませられる事に気がついたことの現れです。現在と比べて5年後の変化を捉えるための準備はできていますか?

団塊ジュニア世代が老害へと変わる可能性

まず最初に断っておくのは、これを書いている僕の世代です。団塊世代(僕らの親世代)はもうあまり動けませんので、経営の現場から退き、発言力もどんどん低下しています。この世代はマスコミで育った世代で、電算化についてこれなかった世代です。

社内イントラやウェブ広報戦略で、説得に時間をかけるという不毛な時間を過ごした方は多いのではないでしょうか。しかし油断はできません。今度は僕らの番です。

電算化と違ってDX化というのは「効率化」の世界です。つまり決断までの速度が今度は致命傷になります。法令が追いつかないのはこうした現象の一部が顕在化しているに過ぎません。また判断の間違いが取り返しのつかないことになりかねません。これは中国進出企業の何社かを観察していれば、ケースバイとして参考になるでしょう。

これはすなわち、首長の年齢によって観光行政と若い世代の民間観光業者との間に大きな壁を作る可能性が否定できません。なにせ道路インフラ・情報インフラにまで及ぶ変化であり、それは電力供給というエネルギーに関する部分まで絡むことで、広域にまで及びます。

発電においては、再利用エネルギー・自然エネルギー・非火力エネルギーをミックスすることに加えて、非停電・安定電圧供給という課題も取りだたされます。これら人口減少とあいまって遠隔操作による電力関連設備が増加することが考えられる一方、設備のセキュリティ(システムと物理的な設備の双方)対策に対して、リスク管理をどうするかなど、従来とは違った観点が必要です。団塊ジュニア世代がそうした考え方に対して、足を引っ張る可能性が重々考えられます。

「観光動機」を意識する必要

団塊ジュニア世代は、おそらく定年延長や副業などに翻弄されて、団塊世代のような定年後観光へ出かける人数は少ないのではないでしょうか。少なくとも車のEV化によって遠距離レジャーは控えめになることを考えると、遠方へは鉄道での移動やバスでの移動が考えられます。そもそも高齢ドライバーになるため、事故リスクを考えても公共交通という選択肢は自ずと出てくると思われます。

つまりわざわざ出向くだけの理由がなければ、車よりも不便を生じる手段での来訪となるわけですから、出向く期待に応じなければなりません。

このことを前提に考えれば、マーケティングは必須なわけですし、プロモーションに対しても風景がキレイというだけでない、目的を多様化させたプレゼンを用意しなければ、来訪する動機にまで至らないでしょう。

これらユーザーが情報を得てから取る行動まで一連で考えることは、UXデザイン(ユーザー体験設計)と呼びます。

UXデザインの核はストーリーテリングとジャーニーマップと言われていますが、その具体的なイメージはユーザーごとに想定されたシナリオに沿って、「絵コンテ」を描くことです。そこにはユーザー体験に必要な小道具(おみやげや食事など)・大道具(設備や施設、文化財など)を演出する舞台となる場所が必要です。

こうした考え方は従来の観光プロモーションでは考えられないですし、小道具にスマホを活用した測定ポイントを組み込むことで、デジタル測定を可能とします。これらの数値データ変位を観測することで、次々に改良を加えていく考え方は従来の国内観光プロモーションではあまり見かけません。

EV化が加速したことによって、DX化も加速する

地域のインフラ整備にはじまり、行動変化、主力産業のシフト。それにともなうDX化まで複合的に考えて情報収集をすることで見えてくることはまだまだあります。残念ながらこの加速は止まらないと考えたほうが良く、加速度が緩いか早いかだけの差だと考えたほうが対応しやすいでしょう。

ことほむでも、これらのことを頭に入れながらいろいろ考えています。2000年頃に起こったテクノロジーの変化は、紙情報を電子へ置き換えることでしたが、これから起こることは最初から電子化された行動パターンなどのデータを蓄積して変位を見る「効率化」。

しかしその前提には「行動」を促す「動機」が存在しています。この動機の部分は普段生活しているうえでは気が付きにくい「地域の文化」として顕在化されている様々なものです。これらをわかりやすく表現し、必要な人に届ける。この方法としてアニメーションやCGという技法は向いていると考えていますので、次回はそのあたりを掘り下げてみようかと思っています。

関連情報の追加

5月11日、WEB CARTOPにも影響が考えられる記事が掲載されていましたので、リンク追加しておきます。

2021年6月17日にMAZDAのEVプラットフォーム記事が掲載されました。

2021年5月16日と18日、アゴラに関連するような記事が掲載されましたので、リンク追加しておきます。


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