茶の湯暮らしのための古町家(明治築)修繕(DIY)レポートその5(前半)
2017年からはじまった和雪庵リフォーム作戦続きです。(その1はこちら、その2はこちら、その3はこちら、その4はこちら)物件選びの記録はTumblrにまとめてあります。
明治からの空間、四畳半と茶室のビフォー
この空間は明治から変わっていません。和雪庵を近所の方に公開したとき、曾祖父がこの家を建てたという近所の方から聞きました。そのときに明治40年築だということもわかりました。
掘りごたつが作ってあった四畳半。
壁には謎の呪文が貼ってありました。
こちらが茶室です。全体的に手を入れなくても大丈夫そうな感じでした。
茶室の縁側です。
縁側の端は壁がありませんでした。寒かったのではないでしょうか?
茶室の畳を上げた場所に炉が切ってありました。コンクリートブロックでしたが…。この炉は使っていたのでしょうか?
床の間です。湊紙が呪文のようでしたけど、金沢ではわりと普通な光景のようです。龍鬢表の紋柄の格が高いです。
床下も撮影しておきました。礎石の上に乗っている作り方です。
欄間障子が無くなっており、謎の欄間が掛けられていました。
一番の驚きは仏壇がそのまま置いてあったのですが、これまた古い大正期くらいのものだったということ。
茶道口には白い和紙が貼られていました。
茶室の湊紙も大きさが揃っていなかったり、壁自体も薄汚れていました。
天井は拭き漆で、照明器具も大正時代のものだそうです。天井には蛭釘はありませんでした。
四畳半とお茶室の作業レポート
まずは時代タンスをどかします。このタンスは使わないので、金沢のゲストハウス町家の初華さんにお譲りしました。今でも初華さんの土間に置いてあります。
時代箪笥を動かしたあと気になったのは左側の壁面です。ベニアが貼ってあるだけでした。相当寒かったと思います。
掘りごたつだと思っていたのですが、どうやらもとは囲炉裏だったようです。それを掘りごたつのように使っていたらしいと、あとから大工さんに聞きました。
畳を上げて床の状態を確認です。隙間が空いてますね。
あちこちに貼られた呪文の正体は長唄。漆喰が剥がれてきたようで、それを止めるために上から貼られていました。
四畳半と茶室は大きな工事が予定されていませんでしたので、作業中は資材置き場や作業場となっていました。このファンシーな照明器具もなんとかしたいですね。
こちらは茶室側の床。補修の跡など何があったのか推理するのが古民家の面白いところです。
最初に切ってあった炉はブロックでできていました。表千家の炉に変えるため、ここは大工さんにお願いして炉を設置してもらいます。
高さを調整するための床下基礎。
畳を入れてからでなければ最終的な高さを調整できないため、仮蓋をします。その間、蛭釘の工事に入ります。
蛭釘は二階の床を支える梁から吊り下げる形で設置されます。小さな釘ですが、天井裏ではかなり大掛かりな工作がしてありました。
蛭釘の設置位置です。
最終的にこのように設置されました。
電熱風炉を利用するためのコンセント口を電気屋さんと大工さんが苦心して仏壇の入っていた床框に設置してくれました。(目立ちません)
茶室の大工作業が落ち着いたところで、四畳半から資材などを移動して壁面をDIYしていきます。和雪庵の壁面は基本的にDIY作業です。また畳を入れる直前に、農業用ビニールシートを床板と畳の間に敷きました。これで床下からの隙間風はほぼなくなりました。
床下から風が入ってくるので、いろいろなもので押さえてあります。
ここはキッチンと四畳半の境目で、キッチンが後に増築されたために、床の高さが合わなくてこうなっています。低いほうが明治の高さです。ちなみに隙間の向こうはキッチンの床下(基礎)です。
時代箪笥をどかした際に出てきたベニアの壁も同時に作業します。二階の押し入れや水屋の天井でお世話になったフローリング材(未塗装)を利用して壁面を作りました。
段差部分の隙間を塞ぎ、隙間風もなくなりました。
縦に長い壁は壁紙で処理します。
段差を超える踏み台も新しくしました。
四畳半の壁面は漆喰を練ってDIYしましたが、これはおすすめしません。うまくヌレールを購入することが望ましいです。撹拌機が必要になる他、水分量の調整が非常に難しいです。
水分量が少ないと、うまく伸びませんし多いと垂れます。水分量を少なくしたために表面がきれいにならなかった例。
一度剥がして再施工。きれいになりました。
慣れてくればキレイに伸ばせます。右上は施工途中。左下面は未施工。
全面施工完了の様子。
色が違うのは乾燥時間の差です。
仏壇の入っていた床の間もかんたん・あんしん珪藻土を施工しました。また床面もDIYです。
お仏壇も清掃してこの位置に収まっていただきました。実は以前の持ち主に仏壇をどうするのか聞いていたのですが、処分すると話していました。そこで古い仏壇はこの先貴重になると判断し、そのままここで保存することとなりました。
床の間の様子です。龍鬢表と湊紙を剥がしました。
以前の龍鬢表は紋縁が立派すぎたので、格を落としました。
床の間照明を増設しました。
四畳半と茶室に新しい畳が入った様子です。
畳ごと入れ替えられるほど畳の保管スペースがないので、畳を炉のサイズに切って、このようにしてあります。
縁側にも畳が入りました。
縁側の壁も追加されました。(ここは大工さんの仕事です)
長くなったので後半へ分けます。