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「選手紹介アナウンス完全攻略マニュアル」 3年・中野陽太

1.選手紹介アナウンス完全攻略マニュアル作成の経緯

私は昨年から"選手紹介アナウンス"という特殊な仕事を不定期で任されている。盛り上げたい試合、重要な試合、観客を頑張って集めた試合に適用される、言わば重点的スケット。その需要は果たしてあるのか、ないのか。別にやらなくとも熱い試合は行われるはず。ただ何かの意図があって"選手紹介アナウンス"が適用され、"中野陽太"が抜擢されるのである。
今年もア式部員の名前を何回も何回も叫んだ。その何かの意図に応えるべく毎回声を振り絞った。それは間違いない。


「面白いこと優先」


これが私の行動軸。
"選手紹介アナウンス"の仕事は妙に自分とマッチングし、その成果は早慶戦アナウンスを担当するまでに発展した。それは今年の自分の中で唯一チームの信頼を得られた部分であり、頼られた部分だと自負している。
しかし、残念ながら来年にア式部員を叫ぶ予定はない。


"叫ばれる側の人間でいるから"


選手紹介アナウンスの需要が世間的にあるかは定かではない。

だが、私自身にはかなりの需要が発生している。

ちゃんと叫んでほしい。
ちゃんと盛り上げて欲しい。
ちゃんとやり切って欲しい。

てことは受け継がないとだ。
てことは教えないとだ。
でも誰か見つかってないじゃん。

じゃあ、誰かは置いといてとりあえず"選手紹介アナウンス完全攻略マニュアル"を作成しておこう。
という経緯である。


2.“選手紹介アナウンス”とは

選手紹介アナウンスとは、早稲田大学ア式蹴球部の公式戦前に、晴れてメンバーに選ばれた部員の背番号・異名・名前・出身チーム・学年をプロレスのリングアナウンス並みに叫び倒すことで、スタンドにいる部員のみんな、会場のお客さん、そして叫ばれた選手自身のボルテージを最高潮にぶち上げ、試合に臨むことが出来る環境を提供する魔法の3分間のことである。

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3.選手紹介アナウンスの当日タイムスケジュール

【14:00kick offの場合】
朝練終了後、もらった原稿に目を通して10秒イメトレ
↓会場へ移動
12:50 全体で円陣
13:00 会場周り清掃
13:10 アナウンス集合時間の25分前に意識高めの現場入りをかまそう
● 早めの集合場所到着は心の余裕と肩の脱力を生むぞ。
● 運営の人に挨拶をしてからメンバー表をもらい、手元の原稿と照らし合わせよう。メンバー表の順番通りに読み上げることが重要。ビジョンと連携しての選手紹介の場合は「ビジョン、大丈夫ですか?」と一声かけておこう。
● 早く到着したからには、とにかくぶつくさ唱えまくり反復練習に当てよう。選手紹介アナウンスで噛むことは許されない。唱えることで気をつけるべき点が自ずと見えてくる。また最低2回は時間を計りながら通しで練習しよう。あくまでも試合を盛り上げるためのプチイベント。試合開始がスムーズに行われるように3分弱の尺で収めてあげよう。運営側が慌ただしくなってしまうぞ。
● 明らかに長くて尺に影響する、ちょっと変えたい異名があったら自分好みにアレンジしちゃおう。

13:35 選手紹介アナウンス集合時間
● もし相手側にも選手紹介アナウンス担当の方がいるのなら、心の中で静かに闘志を燃やしておく。アナウンスに勝ち負けはないが、どっちが上手く出来るかは正直気になるところ。その気持ちをぐっとこらえて「僕も今さっき集合してー、すげえ緊張するわー」くらいのテンションで挨拶しよう。決して25分前からいるなんて言っちゃダメ。駆け引きは始まっている。
● ここから選手紹介アナウンスの時間まではイメトレ&ぶつくさ反復練習の追い込みタイム。注意すべき箇所の確認、仮にメンバー変更があった時には選手の順番は大丈夫か注意しよう。時間が近づくにつれて確実に緊張感は増してくるが、入念な準備が精神安定剤と化す。そう、25分前に集合していた自分を思い出せ。

13:45 選手紹介アナウンス本番
● 選手紹介アナウンスのコツは次の項で長々とお話しする。

13:53 両チーム選手紹介アナウンス終了
● 約3分間ひたすら叫び続けることは、カラオケで一曲歌い上げる2倍のカロリーを消耗するとともに少しの達成感と虚無感に襲われることになるだろう。2分間はその場の空気を吸い、喉ボトケが正しい位置に付いているかを確認しておこう。

14:00 応援スタンド到着
● 落ち着いたらしれっとスタンドに戻ろう。「今日のアナウンス良かったぞ!」と言われたら、「おう」と最小限の音量と短さで返事をしよう。まずは喉を守ることが最優先になってくる。

→ここまでが選手紹介アナウンスの仕事。簡単だね。


4.選手紹介アナウンスのコツ

この項では、あなたが明日の公式戦の選手紹介アナウンスを担当しなくてはいけない、急遽代役を任された時の注意すべきポイントを伝授していく。

大前提
● キックオフの時間に影響してはいけない!
● 選手、応援席、会場の熱量を1℃上げる!
● 噛まない!
→この3つは大前提守ろう。自己満足の選手紹介が1番危険。

コツ
● 名前の文字数によるリズムの変化をつける
実際にやってみるとその重要性に気づくことになる。メンバー18名を同じリズムで読み上げてしまうといたって単調になってしまい聞く方も疲れてしまう。そこで名前の文字数が5文字、6文字、7文字なのかでどこの文字にパワーを使うのかを考える。同じ文字数でも文字の種類によっては叫びにくいものもある。本番は自分自身も高揚してしまい、自分がどのリズムで読み上げているかわからない感覚に陥ることがしばしある。そうならないためにあなたは25分前に集合している。前日から練習しているとなお良い。身に染み着くまで自分の中にリズムを落とし込んでおこう。
● 声量
シンプルに大事。観客席は意外とガヤガヤしているもので、意識を向けてもらえないと選手紹介アナウンスでさえ「え?今してた?」っていうこともある。そんな人たちを全員を振り向かせよう。メンバー全員分を叫び切るペース配分を考えながら、マイクとの距離感を調節しながらやり切ろう。声が割れても声量さえあればなんとかなる。
● ラ行は大チャンス!
名前にラ行を見つけたら大切に扱おう。なぜなら巻き舌を使える大チャンスだからだ。リズムに変化を加える以上に巻き舌をトッピングすることでかなり完成度の高い選手紹介アナウンスに近づく。これはまじでそう。
● 出身チーム・学年は美しい声で緩急をつけてみる
個人的に背番号・異名・名前を叫び、出身チーム・学年を少し太めの美しい声にして緩急をつけるスタイルを推奨する。1回耳を休ませる時間を作ることで次の選手名の叫び声と混ざらないようにする効果がある。ただ声量が小さくなるだけに会場のお客さんに伝わりにくくなるというデメリットもある。さじ加減は君次第。
● 紙の原稿の方がいいと思う
スマホに原稿を入力した方が修正が簡単という便利な面もあるが、本番最中にスクロールすると今どこを読んでいたかが分からなくなりやすい。紙の原稿は次に読む選手のイメージをしやすくなっている。
● ビジョンとアナウンスの連携
ビジョンありで選手紹介をする時はまじで重要。実際に早慶戦アナウンスではビジョンとの連携に全神経を注いだ。等々力陸上競技場には素晴らしい大型ビジョンがあり、早慶戦に合わせて素晴らしい選手紹介動画が作成されてきている。しかし、その素晴らしい選手紹介動画を大型ビジョンで流したところで確実に物足りなくなる。そこに選手紹介アナウンスの迫力ある声が、作成された動画のアニメーションにビシッと乗っかることで初めて鳥肌ものの選手紹介が実現される。私は13000人を前にして強く感じた。噛まない、ビジョンを見る、原稿を見る。とにかく自分の声をノーミスで動画に確実に乗っけた。するとそれに呼応してスタンドが唸りを上げる。自分の声が必要とされているなと1番身に染みて感じる時間になる。逆に、ここに不安要素を感じられてしまうと盛り上がりに欠けてしまう。まさに紙一重のコラボレーション。

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ここで、今年の前期まで早稲田大学ア式蹴球部Twitterアカウントの方で上がっていた選手紹介動画を見てもらいたい。Twitter版は出身チーム・学年は省略してあるが上記のいくつかの点が盛り込まれているので、想像がしやすいかと思う。

→関東大学サッカーリーグに登録された30名+追加登録数名を、録音室と勝手に名付けた大声を出しても許されるであろう建物の一室で録音し続けた。マネージャーほまれのiPhoneのマイクに向かって何度叫んだことか。唾を飛ばして何度「陽太さん、汚いです」と言われたことか。あの空間を見たものはそのシュールさに度肝を抜かれるはずだ。同期の小山は知っているだろう。


5.最後に

たかが3分、されど3分。私は昨年からこの3分の仕事を全うしてきた。次は"叫ばれる側"の人間として盛り上がりを感じたいと思う。

きっといつかこの"選手紹介アナウンス完全攻略マニュアル"を真剣に読んでくれる人が出てくることを祈っている。

そして、来年は私の名前を存分に叫んで下さい。
同期の名前も存分に叫んで下さい。
てか全員ちゃんと叫んで下さい。

きっとこのマニュアルのおかげで来年もさらに熱い試合が待っているかと思われます。
引き続き早稲田大学ア式蹴球部の応援のほど宜しくお願い致します!


この動画は「早慶戦 アナウンス」でエゴサした際に、見つけた動画です。記録に残して頂き誠にありがとうございます。


中野 陽太(なかの ようた)
学年:3年
学部:文化構想学部
経歴:桐光学園中学校→桐光学園高校


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