いつかの日記(2)

ほぼ一言日記つづき。

--------------------------

うっかり利き手の人差し指を負傷して、そこそこ不便である。患部を庇いながら暮らす面倒くささに若干萎えながら、なんか前にもこんなことあったなと思って確認したところ、約2年前に全く同じ状況になっていた。その時のメモに、食事において箸はきびしいのでフォークかスプーンを親指と中指と薬指で持ち、幼児のようなぎこちなさでガチャガチャと食べるのが楽しいと書いてあった。わかるー。過去の自分の呑気さに励まされる。

--------------------------

好きな絵本の話はいつだってしたい。木葉井悦子「かぼちゃありがとう」、大竹伸朗「ジャリおじさん」。スズキコージの絵本たちは子供の世界からこちらへ流れ込むサイケ。

--------------------------

いまAとBを同時に始めたらAは何時に終わりBは何時までかかる、そういう時間の段差をはかって複数の用事を組み立てることができない。ずっとサボっていてオイさすがに動くか…と思いついた順に「やるべきこと」に手をつけた結果、あらゆるピークが一度にやってきて、ひとり慌てる。ひとり慌てる感覚を「寂しい」と言いがちである。全方位からタイマーの音が聞こえてくる日。

--------------------------

ちびちびと読んでいる『欧米の隅々:市河晴子紀行文集』がめちゃくちゃ面白い。1931年、支那、ロシアを経由してヨーロッパへ、20数ヵ国をまわるとてつもない旅の記録。だけどその大大大旅行のとてつもなさ以上に、「国」という歪な単位によって切り出されるその時その場所の時代の空気を明確に捉えながら、どこへ行っても細部の魂への関心に満ちて、乾いたユーモアの上をゆく市河晴子という人の知力と文章力に圧倒される。

--------------------------

朝の電車、目の前の高校生が(ネアンデルタール)人、(クロマニョン)人、と括弧を埋めたプリントを左手に右手でスマホを早打ちしているのをぼんやり見た。われわれは悠久の時のいちばん前に立ち、運ばれていた。

--------------------------

つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?