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がっぱブギウギ

朝ドラにがっぱ餅なるものが出てきた。

青森出身のお手伝いさんが、愛子が残したニンジンを潰してご飯もお砂糖も入れて潰して混ぜて焼いて二人食べてたあのお餅。私は匂いと共に記憶がよみがえってくる。祖母の家で食べるおやつだった。

”がっぱ餅”なんて名前は知らなかった。祖母の家では”かぼちゃのお餅”。かぼちゃとご飯を潰して甘くして、ストーブの上でフライパンで焼くのだ。フライパンにする蓋は桶職人の祖父が作った木の鍋蓋。お餅の甘い匂いと木のやわらかい匂いが暖かい部屋中に満ちていく。焼きあがったお餅は、いい塩梅の美味しいおこげがついて最高なんだ。

子供ながらに粗末な食べ物だから外では自慢できないと思っていて、学校の友達とは話したこともなかったけど、同世代でも知っている人は少ないのではないだろうか。話題になったこともない。すっかり忘れた存在だった。

このお餅を数十年ぶりに食したのはひとくちだらけという駅弁。がっぱ餅ではなくてかぼちゃ餅として一口収められている。懐かしい半分、おばあちゃんのかぼちゃのお餅がよそ行きの味してる感じがして、ニヤけてしまった。

祖母はとにかく甘いものが好きだった。お彼岸に作ってくれるお団子の甘さは尋常じゃなかった。進学した京都から初めて帰省した時にお土産持って行った生菓子は1個ずつ冷凍して大事に食べていたそうな。もっといろんな京都のお菓子をお土産したかったけど、あの生菓子が最初で最後だった。

かすかな記憶を引き出して、祖母の料理を思い出してみる。あれ以来食べたことがない、おいしかった素朴な品々が口の中によみがえってきた。


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