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新たな出会いと始まりの予感

コミュおばさんのシニア起業奮闘記 #004

神戸でのリモートワークも昨日で終わり。今夜には東京に戻る。お盆を挟んでの3週間は、あっという間に過ぎ去った。ワクワクする出会いと始まりの余韻を残して。

コミュニティ・サポートセンター神戸の名物理事長は想像していたよりはるかにエネルギッシュな人だった。御年78歳。Big Issue Japan を運営する知人を通してお会いしたのだが、こちらが退職後の夢をあれこれかいつまんでお話しすると、「いろいろ、やれることはありそうね!」とにっこり。「今どき60代は助走期間。70代が本番で、80代になってちょっと休憩、ってぐらいに思って地域活動やってもらわんと!」

そう、サポートセンターは主な地域活動の担い手となってくれる定年退職後のシニアが、いわばターゲット層。コミュニティー内にある社会課題のあれこれを解決すべく、「あんなことやりたい」「こんなのがあったらいいな」という願いを持つオジサン・オバサンの背中をぐいっと押して、独り立ちするまで伴奏しているらしい。でも、最後まで事業を立ち上げられる人はほんの一握りとか。「ニーズ (needs) とシーズ (seeds) をマッチングさせるのも結構、大変なのよ」とこぼす。

見込みがあると思ったのか、理事長は私に「NPO研修員制度」なるものを勧めてきた。大人のインターンシップみたいなもので、センター事務局に籍を置き、月に数回お手伝いで事業に参画したり会議に陪席し、NPO事業立ち上げを学んでいく制度らしい。大学教員が研究の一環で参加したり起業準備中の人が利用しているという。

「ちょうどいいかも。ぜひ、お願いします。」

1月からしばらくは、拠点の再構築と情報収集や起業準備に費やしたいと思っていたので、この研修制度を利用していろいろネットワークを広げ、情報整理をしてみるのも理にかなっている気がする。NPOという形態そのものにはあこがれも執着もないのだけれど、社会事業立ち上げのノウハウはぜひ学んでみたい。思わぬ展開にワクワクしてきた。

なんだか最近、ついてない?

和菓子作りは「音」がすべてだという甘音屋

姫路の和菓子屋「甘音屋」の店主も、規格外に親切だった。10年ほど前に明治時代の蔵を再生しカフェにしたのを皮切りに古民家再生事業も手掛ける店主は、古民家を扱うときの心構えを教えてくれた。

「大切なポイントは、建物や空間自体に趣やストーリー性があるかどうか、人を引き付ける魅力があるかどうか、まず、きちんと見極めること。」

「一番やってはいけないこと、それは自己満足で終わってしまうことや。」

顔の見えない電話での初会話で、ド直球の神髄をお教えいただいた。まさにその通り。私がいかに実家の古民家を美しいと思ってみたところで、単なる身内びいきであって、だれも居場所としてその空間を見てくれなければ、意味がない。単なる自己満足だ。

言い方は違えど、店主と理事長が示してくれたのは、人が求めるものと自分がやりたいと思うことが合致しない限り事業は成り立たない、ということなのかもしれない。

もっと繋がりのある社会を作りたい。心が響き合う出会い作りを仕掛けたい。出来れば「広報」という本業も活かしながら、もっとまちづくりに関わりたい。

私がやりたいと思っていることは、人に求められているんだろうかー。

偶然、神戸の家のご近所に古民家を活かした「みんなの家 セラビィ」があることをネットで知った。帰京するまであまり時間はないのだけれど、少しだけでも、と立ち寄ってみた。

セ・ラ・ビィ= C’est la vie. フランス語で「これが人生。」

木のくぐり戸を抜けると、まさに癒しの空間だった。開け広げた畳の部屋、床の間、縁側、中庭、前庭。隅々まで優しい光が抜けていく。この空間の中で自由に思い思いに時間を過ごしてほしい、そして自分を取り戻してほしい、そんな願いが込められた地域の居場所だという。

この居場所を4年前にひとりで立ち上げた女性は、この6月、運営母体を「労働者協同組合」なるものに切り替えた。最近できた新たな法人格だ。共感する仲間が増え、ともに運営者として思いを形にし、居場所づくりという事業を展開していくために設立したという。

「みんなで作っていきたいから。来た人が明日からまた頑張ろう、って思えるような場所をみんなで作っていきたいの。」

どれも、いい出会いだった。なんだか、新たな始まりの予感がする。

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