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小型ロケット市場の二極化が激化か、SpaceXに続く事業者の明暗 【宇宙ビジネス最新動向解説:Small Satellite Conference 2024-中編】

2024年8月3日 - 8月8日の6日間、ユタ州立大学にて、世界最大の小型衛星関連の学会であるSmall Satellite Conference 2024が開催されました。本記事では、CSO&米国CEOの森による現地レポートをお送りします。
(前編はこちら、後編はこちら、昨年の記事はこちら

2024年のSmall Satellite Conferenceは、小型ロケット打ち上げ市場の変化を象徴する場となりました。昨年までは世界各国の事業者の多くがブースを出展し、SpaceXによる市場の独占を防ぐために鎬を削っていましたが、今年は経営が厳しい企業や開発状況が芳しくない企業が姿を消し、出展したのはRocket Lab社やFirefly社など、わずか5~6社に限られました。米国のRelativity Space社やAstra Space社、ドイツのRocket Factory Augsburg社といった企業もブース出展しておらず、市場の選別と淘汰が進行していることが明らかになりました。

一方、日本の小型ロケット打ち上げ事業者であるインターステラテクノロジズ社はブースを出展しており、激しい淘汰圧のある中でも存在感を示しています。森はこの現象について、技術シーズの不足が主な要因だと分析しています。

本シリーズの前編でも述べた通り、近年、安全保障側からの小型衛星の需要は減り、より大型で高重量の衛星を打ち上げるニーズが増加しています。そのため小型ロケット事業者には、地球低軌道に100-250キログラム程度の打ち上げ能力から、1 トン近い打ち上げ能力を持つロケットの開発が求められています。もちろん、こうした輸送能力を持つロケットを各社開発しようとはしていますが、対応するエンジンやロケットの開発には極めて高い水準の技術とプロジェクト管理体制が要求されるため、開発や試験を遅滞なくスケジューリングすることは困難を極めます。しかし当然顧客側にもスケジュールはあるため、対応が遅れる小型ロケット事業者は顧客を失い、経営難に陥るリスクが高まっています。

今後、小型ロケット事業への新規参入は巨大資本の介入がない限りますます難しくなる事が予想されます。こうした背景から、小型ロケット市場が成長し、新規参入が林立する状態から、少数の質の高い企業が生き残る、新たなフェーズに突入したことが伺い知れます。

(執筆:中澤淳一郎)


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