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【SpaceTechExpo USA】ロケット・衛星開発の現場から見える新潮流とは

去る5月13-15日、カリフォルニア・ロングビーチにて、Space Tech Expo USA が開催され、ワープスペースからCSOの森がパネルディスカッションに参加しました。本記事では、その様子をご紹介します。

 Space Tech Expo USAは、3000人を超える参加者が集う中規模のカンファレンスです。その特色は、リアクションホイールやスタートラッカー、光通信ターミナルやそれらの部品(光ファイバー、コネクタ、FPGA)など、ロケットや人工衛星に欠かせないサプライチェーンに関する発表に重点が置かれている点です。現地に参加した森は、まさに宇宙開発の「現場」のような印象を受けたと語ります。

3Dプリンティング(アディティブ・マニュファクチャリング)がロケット・衛星開発に新風を起こすか?

 今回のSpace Tech Expo USAにて、森は特に、ロケットや衛星の部品などの製作に、素材となる金属を積層することで、さまざまな形状を作り出す3Dプリンティング(アディティブ・マニュファクチャリング)を用いる事例が印象に残ったと述べます。おおよそ10社に1社ほどがこの新しい手法でロケットや衛星のパーツなどを制作しており、3Dプリンティングの活用が徐々に主流になりつつある様子が伺えます。特に注目すべきは世界最大手の工作機械製造会社であるDMG森精機で、コネクタやICなどを除く数多くの大型部品などを鋼鉄やアルミのノズルプリントにより制作していました。衛星やロケットの部品などは、これまで鋳型を用いることで成形していました。こうした鋳型による成形は、規格の決まった部品を大量生産するには向いていますが、特殊な部品を少量生産する際には多くのコストがかかってしまいます。一方で3Dプリンティングは、大量生産する際のコストでは鋳型による成形に及びませんが、特殊な部品を少量生産する際は、出力する模型データとフィラメントさえあれば良いので、研究や開発の場面にて、一点ものを制作し、試行錯誤する際の強い味方になります。
 2023年現在では、NASAのSLSをはじめとする大型ロケットの開発に伴い、Starlink等のコンステレーションによるサービスなど、大量の人工衛星を宇宙へと輸送し、活用することが可能になりつつあります。その際に重要となるのが、ロケットや人工衛星の規格化・コンポーネント化です。これにより、これまで特注であったロケットや探査機の部品の設計を使い回しできるようになるため、大量の打ち上げ需要に答えられるようになることが期待されています。しかしその一方で、今回注目した3Dプリンティングという、大量生産よりも様々な形状を制作し、試すことができる成型手法が脚光を浴び始めているというのも、これまた面白い現象と言えます。このような技術シーズが今後の宇宙開発のサプライチェーンの中でどのような役割を果たしていくのか、目が離せません。

Space Tech Expo USAでも見られる、光通信の重要性

 一方で、Mynalic社CCOのTina Ghataore氏、Tesat Government社(独Tesat社の政府安全保障向け米国支社)GMのJustin Luczyk氏、Xenesis社CEOのMark Lapenna氏、そして弊社の森が登壇した光通信のパネル「The Growing Role of Optical Communications for Terrestrial and (Deep) Space-based Applications」には、およそ150人の聴衆が集い、会場はほぼ満席になるほどの盛況でした。


光通信のパネル「The Growing Role of Optical Communications for Terrestrial and (Deep) Space-based Applications」の様子。左から、Mynalic社CCOのTina Ghataore氏、Tesat Government社GMのJustin Luczyk氏、Xenesis社CEOのMark Lapenna氏、そして弊社の森。

 このパネルでは、地上、宇宙空間において、光通信がどのようなメリットをもたらすか、どのようなニーズがあるか、実装までの課題は何かについて、それぞれの専門の立場から詳しく語られています。特に、光通信は近年活発になってきている衛星コンステレーションの実装において重要な技術であることから、今回のSpace Tech Expo USAでも大きな注目を集めました。今回の会場パンフレットにてメイン登壇社として紹介されている6社のうち、3社が光通信の企業(Mynalic、Tesat、ワープスペース)であることも象徴的です。これらのことから、光通信が今後の衛星開発において欠かすことのできない技術であると、業界全体が認識していることが改めて実感されました。


Space Tech Expo USAの会場パンフレット。メインとして紹介されている6社のうち、3社が光通信の企業(Mynalic、Tesat、ワープスペース)であったことが印象的であった。

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