役職・部署不要論
この記事はWARPSPACE Advent Calendar 2020の19日目の記事です。
役職、部署って
弊ワープスペースにて、CEOというファンクションを担っております常間地(つねまち)です。突然ですが、うちの会社には役職は役員(Officer)かそれ以外、しかありません。役員という役職すら「職位」ではなく、あくまでファンクションでしかない、というのが根本の考え方です。
役職がほぼ存在しない一方で、職種はあります。現状はエンジニアとBizDevのみですが、今後は衛星エンジニア、とか地上系エンジニアとか、少し細分化するかなとは思っています。
スタートアップに限らず大企業も含めあるあるなのが「役職インフレーション」です。待遇の一種として、もしくは年次的な出世の枠として多くの役職が生まれがちです。私はこういった設定は全く合理的でなく、組織にとって害悪でしかないと考えています。特にチーム規模の小さなスタートアップにとってはまさに百害あって一利なし。デリゲーション(権限移譲)のMECEなど全くお構いなしにCxOが乱発されているケース、チーム規模が十数名程度なのに役職者が十名以上いるケース、など、スタートアップに接点のある人であれば一度となく遭遇しているのではないでしょうか。
私たちワープスペースには部署も存在しません。開発チーム、BizDevチームという粒度の区分すらありません。MTGもその目的に応じて適切なメンバーが職種関係なくアサインされています。もっというと正社員、業務委託、パートタイムの区分もあいまいです。極力「正社員だから」という区別も無くしています。例えば、ワープスペースには「リゾートワーク」というワーケーション補助の制度があるのですが、「月45時間以上」のコミットメントがあればこの制度の対象となり、正社員かどうかなど関係なく福利厚生のメリットを受けることが出来ます。
なぜそのようなことをしているのか。鍵は次のようなことにあると思っています。一つはMECEなデリゲーション(権限移譲)・権限分配、もう一つは役割分担の柔軟性です。以下、一つずつどういうことか書いていきたいと思います。
MECEなデリゲーション(権限移譲)・権限分配
ここでいう「権限」とは、いわゆる偉いとかどうとかいう「権力」の話ではありません。組織のあらゆる意思決定における責任、というべきでしょうか。下の図のように、会社組織というものは、株主総会から取締役が経営レベルの監督責任をデリゲーションされ、取締役から執行陣へは経営決定そのものをデリゲーションされています。執行陣はさらに従業員に対して業務上の様々な決定、実行権限を委任されています。
例えば、CRO(最高収益責任者)とCBO(最高ビジネス責任者)とセールスヘッドが併存している場合、果たしてセールスに関する責任はCEOまたは取締役会に対して誰が取るのでしょうか?得てしてこの場合、それぞれの役職者間でコンフリクトが起こり、セールスというファンクションにおいて誰の指示を最終的に聞けばよいのか、社内で混乱が起こります。また、一旦役職者としてアサインした場合、よほどのことがないと外しにくいということもあります。完全にMECEな権限分配というものは机上の空論ではあるものの、ちゃんとそこを考えたうえで役職の設計をしないと組織と人財の本来の力を発揮できず、柔軟性も著しく損なわれます。
役割分担の柔軟性
特にスタートアップでは、かなりな高頻度で方向性や施策がピボットないし変更されます。これはスタートアップとしての存在意義そのものであり、どのような変化、外的要因の出現にも柔軟に、かつResilientに適応する必要があります。もし役職や部署が細分的に決まっている場合、組織図レベルに改変、微調整を加えなければ、対応できないということになってしまいます。スタートアップにとって自死に近い行為といっても過言ではありません。
また、人数の少ないスタートアップにおいて、一人が複数のファンクションにアサインされるケースは少なくありません。細かに役職や部署が設定されていたとしても、それを飛び越えてアサインされることが多いとすれば、そもそもそういった設定そのものにどれだけの意味があるのでしょうか。エンジニアであっても、人事的な役割を担うことが得意なメンバーがいるかもしれませんし、一人のエンジニアが、社内システムもみながら、サービス側もみる必要があるかもしれません。あるアスペクトで最適なチーム設計であったとしても、違う次元を加えると全く合理的な区分にならないことなど珍しくないのです。
開発チームとBizDevチームという大まかな粒度で分けるにしても、弊害はなくなりません。どんな粒度でも、「これは開発チームのタスクだろ」とか、「BizDevチームの意見としては」など、およそワンチームではない考え方や言動が蔓延してしまいます。もっというと「エンジニアリング」は「BizDev」の対象ではないのでしょうか?そのまた逆は?私は、そこは全く分けられないと思っています。ですからワープスペースでは、すべてのMTGは職種に関係なく、その目的やテーマに応じて必要なメンバーが適宜アサインされています。もし社内で「開発『チーム』MTG」なるものが行われていたら、私は全力でこれを止めにかかるでしょう。
最後に
会社という組織において、メンバーそれぞれの区別があるとすれば、それはデリゲートされたファンクションしかありません。そこに名前を付けること自体がそもそも必要ないのかもしれません。ただ人間はそこまで識別能力が高くないですから、必要最小限の「役職」や「職種」は必要なんだろうと思います。もし日本からよく分からない「役職」や「職位」、「部署」などが一掃されたら、この国の生産性はもっと上がるんだろうに、と思う今日この頃でした。
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