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【STEE 2022】「宇宙の街」ブレーメンでの宇宙産業展示会に参加。さらに増す欧州のプレゼンス

 おとぎ話で耳にする人が多い、ドイツ北西部ブレーメン。実はこのブレーメン、近年、宇宙の街としても注目されています。ブレーメン空港から北側、ウェーザー川の手前にはAirbus等の大手の巨大な工場がずらっと並び、そこではロケットと衛星用の燃料タンクの製造が行われています。一方、川の北側では欧州宇宙機関(ESA)等でのミッションに用いられる無重力実験施設である、ブレーメン大学応用宇宙技術・微小重力センターをはじめとして、アカデミックな航空宇宙の研究開発が盛んに行われています。また、ブレーメン市の政策として、宇宙産業の関連企業に税制優遇も実施されており、川の両側で行われる産学の宇宙開発、その両者を官が施策で支援するという三つ巴の関係が、この古式ゆかしいブレーメンを「宇宙の街」たらしめています。
 ウェーザー川の北側は旧市街もあり観光客が多く訪れる場所でもあり、ワープスペースは11月14-16日の3日間、そんなウェーザー川北のMesse Bremenにて開かれる、宇宙産業展示会としては世界最大の出展者数を誇るSpace Tech Expo Europe(STEE)2022に出展し、弊社CSOの森は現地にてプレゼンテーションを行いました。
(ワープスペースはこの展示会に2019年も参加しています。記事は弊社CEOの常間地の手によるもので、私の記事にはないフレンドリーかつ軽快な語り口が魅力ですので、こちらもぜひ御覧ください。)

メインステージでのプレゼン:光通信の価値とは

ワープスペースCSO・森によるメインステージでのプレゼンテーションの様子。

 メインステージで行われた森によるプレゼンでは、ワープスペースの事業背景となる、地球観測衛星のデータ運用における課題から、その解決策となりうる光通信技術の価値について体系的に解説しました。近年の目覚ましい技術革新により、宇宙空間に人工衛星を打ち上げる、という一連の技術のハードルが下がり、それによって数多くの人工衛星が地球観測を行えるようになり地球観測を行う頻度(すなわち人工衛星データの時間分解能)も改善された一方で、そうした地球観測データを地上へとダウンリンクする通信インフラの成長が、良質なデータを低遅延で提供する際にネックとなってしまっています。そのため、高速かつ大容量な通信ノードによる衛星間ネットワークの構築が必要であり、そこで、信頼性も十分な衛星間光通信が現状の課題の解決策となりうることを森は語りました。
 今回発表したSTEEでは、特に地球観測データを用いるビジネスとその通信に関わる課題に興味こそあれど、詳しくは知らない方が多く、会場では多くの質問を受けることができました。新型コロナウイルスによる影響が比較的収束してきたためか、

「日本の事業者も多く現地入りしており、そうした方々からも新鮮なリアクションを得ることが出来、昨年よりも多くの注目を集めることが出来ている」

と森は述べます。

日本からは山口県内のモノづくり企業による航空・宇宙産業にモノづくりで貢献するネットワークである山口宇宙クラスターや、インターステラーテクノロジーとアストロスケール、SpaceBDもブースを出展していました。他にも丸紅やAGC、住友精機、といった大企業の関係者も現地入りしており、森もドイツで日本の方から多く質問を頂いたと破顔。

一方で、先日パリで行われた首脳会議にて、ESAの年間予算を2019年比で17%増額することが決定したというニュースからも、ESAの動きが今後ますます活発になることが予想されます。その観点からSTEEの各ブースを見てみると、やはりヨーロッパ各国の宇宙機関や民間企業の勢いが増していることを実感します。これまでESAを牽引してきたフランス、ドイツ、イタリア、英国はもちろん、アルメニア、ハンガリー、ポーランドやチェコ、ノルウェー、フィンランドといった東欧や北欧の国に拠点を置く組織の展示も昨年と比較して増えています。
 例としては、ハーフU(1Uの半分、10 cm x 10 cm x 5 cmの大きさ)の光端末ATLASを開発するAstrolight(リトアニア)などはSTEEにてブース展示を行っており、光通信業界にも勢いのある新たなプレイヤーが参入しています。また、光地上局に関連する事業では、OFFICINA STELLARE(イタリア)など、2019年のSTEEでは見られなかった企業も今年は多くブース出展していました。

ブースを出展していたOFFICINA STELLARE(左上)。ポルトガルのCoimbraに本社を置くNeuraspaceも大規模なブースを出展していました(右上)。また各国ごとの企業がまとまって出展しているケースもあり、展示会の裾野の広さを改めて感じます(左下、右下)。

 欧州という舞台にて宇宙産業はますます盛んになり、その認知、広報も進んでいる中で、光通信分野はこのタイミングで解決すべき課題の重要な解決策としてますます重要視されていくでしょう。ワープスペースはこのSTEE2022にて、日本における光通信サービスを担う重要なプレイヤーであることを示すとともに、世界にもその存在を大きく発信することができました。ワープスペースの今後の事業展開にぜひともご期待ください。

(執筆:中澤淳一郎)


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