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商業宇宙ステーションの行方は?ドバイで開催された世界最大級の宇宙開発カンファレンス「IAC2021」レポート

宇宙開発分野では世界最大級のカンファレンスイベント「国際宇宙会議(通称IAC)」が今年も開催されました。宇宙産業の今を知ろうと、開催地のドバイには世界中から6,000人を超える宇宙関係者が集結しました。

IACは1950年から毎年開催されていて、今年は72回目。2018年からIACに毎年参加しているワープスペースのCSO・森は、各国の宇宙機関のブースだけでなく、民間企業のブースが明らかに増えてきているのを感じたといいます。

コロナ禍で1年越しの開催となったドバイ会場では何が語られたのでしょうか。話題になったトピックや会場の様子を、森が振り返ります。

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UAEの宇宙飛行士のおふたりと撮っていただいた記念写真

有名企業が続々と参入する宇宙ステーション計画

今年最もインパクトがあったトピックは、商業宇宙ステーションです。

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Lockheed Martin ・Nanoracks・Voyager Spaceの連合が商業宇宙ステーション「Starlab(スターラボ)」を構築する計画をIACの開催直前に発表していました。それに続くように、IACの初日には、Blue Origin・Sierra Space・ Boeingらの連合が商業宇宙ステーション「Orbital Reef(オービタルリーフ)」を構築する計画を発表しました。

これまでも、民間宇宙ステーションの構築を構想している企業はありました。でも、燻っていたんですよね。それぞれ技術力はあるのですが、宇宙ステーションのような大型プロジェクトを単独で進めるのは難しいのです。

ところが今回は、民間宇宙開発をリードする企業が連合を組んで、本気を感じさせるプランを見せてきました。

宇宙ステーション勢力図

民間宇宙ステーションの構築計画は、コンソーシアムの戦いになるでしょう。勝敗は、輸送技術と居住区域を開発する有人滞在技術で決まります。そこに、小型衛星の放出機構やロボットアームなどのオプションが加わり、差別化が進められていくわけです。

7企業・団体が出展したJAXAブース。世界から注目を集めたのは?

IACでは、各国の宇宙機関の展示ブースの一部を自国の民間企業に貸し出すケースが多くあります。

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日本も例に漏れず、JAXAブースを借りて、ワープスペースを含む7社のベンチャー企業や組織が出展していました。

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左から、浅川さん(Pale Blue)、
國井・森・常間地(ワープスペース)、川﨑さん(Yspace)

なかでも、水から小型衛星の燃料を作ろうとしているPale Blueや月面から打ち上げるロケットを開発するYspaceは注目を集めているように見えました。世界的に見ても、事業がユニークですからね。

ワープスペースはというと、サービスの仕組み……地球中軌道に3機の衛星を打ち上げて、地球低軌道の観測衛星コンステレーションに通信を提供する計画を説明したCG動画を流しました。

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ワープスペースの事業を紹介する様子

余談ですが、「衛星百景」というイラスト入りのクリアファイルとトートバックを配布したら、もう大人気で!

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左上に入っているワープスペースのロゴを見て、ブースを探して来てくださった方が多くいて、すごい波及効果だなと。衛星間光通信をやっている企業のグッズなんてニッチすぎて、コアな宇宙ファンにしか届きませんが、こういう日本文化との組合せは馴染みやすくていいですよね。

新規参入が相次ぐ光通信分野

光通信関連のブースが増えていることにも気づきました。

地上局サービスを手掛けるノルウェーの企業・KSATは、光通信を使ったサービスを開始しています。商談を見越していたのか、事業責任者が来ていて、商業化が進んでいることが窺えました。光通信は、軍事利用か科学目的の研究開発が中心だったのが、ビジネスで利用され始めようとしています。

これは、5年前には考えられなかったことです。打ち上げられる衛星の機数が増えたことで、通信の需要が一気に増えつつあるのでしょう。

さらに、光通信がテーマのトークセッションもあったんですよ。これは、衛星間光通信の端末製造ではマーケットリーダーのMynaric(マイナリック)というドイツの企業がスポンサードしていたものです。

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Mynaricが主催のトークセッションの様子

「日本のスタートアップ企業」とワープスペースのことを名指しで言及していただけたのは、嬉しかったですね。

光通信の端末を製造するメーカーはいるのですが、ワープスペースのようにサービスを提供する……スマホに例えると、iPhone自体を作るAppleと通信を提供する電話会社がいますが、電話会社にあたるサービサーはまだまだ少ない状況。ワープスペースの事業のユニークさを改めて感じました。

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