眺めている。ただ眺めている。それだけ。テレビの画面に映し出された景色のような視界。絨毯の赤がいつもより鮮明に感じる。部屋は時間の割に暗い。少し俯いた姿勢の視線の先にはドールハウスがある。落ちているみたいな調子で。ずっと昔、こんなお城に住みたいと思っていた。ぬいぐるみたちはその周りに転がって、あちらやこちらを見ている。それをただ眺めている。効率の良い行動はなにひとつ思い浮かばない。

日が傾いていく。照らされていたはずの背中は影が差しているのか、つめたくなった。夕焼けの赤い光が弱まって、影の色が濃くなっていく。青く、黒く。私の影がどんどん伸びて、小さな城を覆い始める。

とうとう日は落ちた。すべてが影になったこの部屋で私はドールハウスを眺めている。効率の良い行動はなにひとつ思い浮かばない。暗い部屋に目が少しずつ慣れて、青いような暗闇の中がだんだん見えてくる。ただ眺めている。それだけ。




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