ノン・フィクショナル・フィクション
『退屈な人生に一滴の刺激を!テンペストα!』
大きな電光掲示板にこれまたデカデカと映し出された奇怪な文字群に脳内を踏み荒らされた後、路地裏の喫茶店に入った。
退屈な人生かぁ。俺はこんなに頑張ってるのに…プク…ククク…頑張ってるのに…クク…報われない…アハハハ!
その店のコーヒーは不味かった。まだタピオカジンジャーティのほうがマシなくらい。
勤め先の食堂で食券を選んでいるとき、後ろに並んでいる二人組の男たちがこんな話しをしていた。
「俺たちは、真面目にここまで努力してきたし、ここまで躓くこともなかった。良い給料を貰って女にも困らない。セーフだよ」
「同感だ。友よ」
セーフってなんだろうと思ってしまった。何がセーフなんだろう。
気になってしまってスマートコンピュータでセーフの意味を調べたら『定められた基準に収まってことなきを得ること』といった検索結果が表示された。
ここでもまた『定められた基準』という文字の羅列に引っかかった。
ハッ
そこで何時ぞや雑誌で見かけた記事を思い出した。
人生の達人を自称する人物が遺したとされる「人生はRPG、つまりゲームなんだ」という金言が紹介されていた、あの記事。
ゲームのルールという基準の中で彼らはセーフを勝ち取ったのか。
んん……度し難い……。
お気に入りの中華定食は冷めきっていた。