顔。
俺は鳥肌が立つのを感じた。
今、右に、俺とそっくりな奴が立っている。
眼を合わせてはならない、なぜだかそんな気がしていた。
目を合わせた瞬間、俺の心臓の鼓動は止まってしまうような気がしている。
とにかく、見える限りで『奴』は俺とそっくりだった。
着用している服、靴の色、腰の高さ。
何から何まで、俺と同じだ。
というか、完全に俺だった。
ドッペルゲンガーというのだろうか、こういうの。
周りに人は居ない。
ただ、俺と『奴』がいるだけ。
飲み込んだ固唾は、俺の知っているそれよりずっと冷たかった。
胃の中に、冷たくて鈍い感覚が走る。
怖い。
恐怖。
しかし、このまま固まっているわけにもいかない。
俺はゆっくりと、視線を上へと上げた。
眼を、いや顔を見てはならない。
そんな気はしているのだが、このまま立ち去ることも出来ない。
……そして、俺は見てしまった。
俺は悲鳴を上げ、
二歩、三歩と下がり、
それから一目散に逃げだした。
何が見えたか、語るのさえおぞましい。
だが、確かにそこには俺の顔があった。
何の変哲もない、俺の顔だ。
だが、とても怖かった。
ドッペルゲンガーだからという意味じゃない。というか、そもそも俺が見ていたのはただの鏡だ。
じゃぁ、なんでそんなに怖いのかって?
……理由は単純、俺が自分の顔をみるのが怖いレベルの不細工だからだ。
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