あなたを幸せにするために。
あなたを幸せにするために私にできる事はなんだろう。
そう考えた時、私の中には沢山の考えが浮かんだ。
例えば、そう。
あなたの隣に、ちゃんといてあげられることが、最低条件だ。
あなたが悲しんでいた時、遠くに居たんじゃ何もできない。
電話やSNSなんて軽薄な手段じゃ、気持ちは伝わらないから。
私はそう思って、あなたの近くに寄り添った。
あなたは「どうしたー?」なんて言って、微笑みかけてくれる。
でも、これだけじゃ、あなたを幸せには出来ないな、と思った。
次にすべきことは、詮索だ。
私がどうすればあなたが幸せになってくれるのか、考えなければならない。
あなたの好物は何だとか、何が欲しいとか、私に何を求めるかとか。
そう思って私は、あなたにこう尋ねた。
「……あなたは、何が欲しいの?」
「うーん……別に、欲しい物なんてないよ。
君と共に楽しく生きれたら、ただそれだけでいい」
あまりにも謙虚な答えに、私は呆然とした。
しかし、よく考えればそれも納得がいく。
私だって、あなたのとなりにいれればそれで幸せだ。
あなたにとってもそれは同じ、ということか。
しかし、今の答えには一つ、特筆すべきことがあった。
それは、共に「楽しく」生きれたら、ということである。
一緒にいるだけでは、彼を幸せには出来ないのだと悟った。
なら、次にやることは一つ。
実行だ。
あなたにとっての『幸せ』が『楽しさ』ならば、私はあなたに少しでも楽しさを味わってもらいたいと思う。
私はTVのリモコンを手に取り、適当にチャンネルをいじった。
確か、この時間帯はイッテQが放送されていたはずである。
案の定、彼はTVに魅入った。
「ありがとう」
彼は私に言う。
私はそれがたまらなく嬉しかった。
彼はテレビに見入っている。
私も、手にガラス製のコップを持ち、彼と一緒にテレビを魅入った──
──ように見せかけて、頭の中ではまた考えていた。
寄り添い、詮索し、実行する。
この三つの手順は完璧だ。
しかし、あと一つ、足りないことがある。
それは何か?
これまた単純だ。
なんなら、これまで三つ、その全てよりも簡単かもしれない。
私が、あなたを幸せにするための条件。
それは──
「あなたが、不幸であること」
私は手に持ったコップを、彼の頭に叩きつけ、すぐに119番に電話した。
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