プロの介護士が教える上手な「水分補給」のヒント。

高齢者の中には喉の渇きを感じにくい方もいるため、1日に必要な水分量が摂れていない場合があります。また、身体が受けつけなかったり、トイレの不安を抱えていたり、さまざまな理由で「摂りたがらない」方もいます。
そんなとき、ちょっとした工夫をすることで、スムーズに飲んでいただけることもあるんです。


■水分をとらない理由を知ることからはじめる

「トイレが近くなるから...」という理由で、水分を控えてしまう方は少なくありません。
介護をする側からすると「そんなことはいいから」と思ってしまいがちですが、高齢の方にとって、トイレ問題は私たちが思っているよりも深刻です。

たとえば、身体が思うように動かせない方にとっては、トイレに行くだけでも大変です。さらにドアの開閉やズボンや下着の上げ下ろしにも苦労します。また、排泄の間隔が近くなったり、我慢もきかなくなり、尿漏れの心配もあります。外出先でも「トイレの場所がわからない」「間に合わなかったらどうしよう」という心配があります。こういった不安が大きなストレスになっていることがあるのです。また、こうした不安を抱えている状態では、いくら水分補給をすすめても、なかなか摂っていただけません。まずは、相手の不安な気持ちを理解することがとても重要です。外出先の場合、「トイレはあそこにありますよ」「〇〇の後にトイレに行けますよ」と、場所やタイミングをお伝えするだけで、水分を摂ることへの抵抗感が軽減されることもあります。水分を飲んでいただくことだけに懸命になるのではなく、本人の気持ちを察して、できるかぎりの不安を取り除いてあげることも大切です。

■誰がどのように伝えるのか工夫をしてみる

家族から伝えるよりも、介護士やケアマネジャー、かかりつけ医から話してもらった方がいいケースもあります。私たちも同じですが、相手やタイミング、言い方によって素直に聞ける時もあれば、そうでない時もあります。
誰がどのように伝えるかということも大事なポイントです。

■好みの味や飲み方を見つける

必ずしもお茶やお水ではないといけないわけではありません。たとえば、はちみつを入れて甘くすると飲める方もいれば、冷たいものより温かい飲み物にすると飲める方、ジュースだと喜んで飲めるといった方まで、人ぞれぞれに合った飲み方があります。

飲み物の種類にこだわりすぎず、「これなら飲めるかな」というものを見つけられると、水分補給の介助が少し楽になります。体調によっても身体が欲する味は変わりますので、その時々で「何が飲みたいですか?」と聞いてみるのもいいでしょう。また、水分は食事やおやつでも摂ることができます。
ゼリーやかき氷、果物などにも水分があります。それに、お味噌汁には塩分も含まれていますので、熱中症予防にもなります。その方にとって「摂りやすい方法・味」を工夫してみてください。


この他にも、手すりやPトイレなどの福祉用具の導入、介護士の訪問時間や訪問回数の調整、オムツや尿とりパッドを着用することで不安が取り除けることもあります。


■最後に

飲めない方、飲まない方だけではありません。飲む行為が分からない方もいます。この場合、傍にいる方がその方の行動を見ながら察知していく必要があります。また、身体の状態によっては、どうしても必要量の水分が摂れないこともあります。「いつもより飲めていないな」というときは、脱水症状が進む前に、早めにかかりつけ医や、ケアマネージャーなどに相談しましょう。

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