とかげ 吉本ばなな


どうしてもどうしてもさわりたくて、もう気が狂うほど、いてもたってもいられなくて、彼女の手に触れることができたらもうなんでもする、神様。


そう思った。そう思ってした。自然も不自然もない。せざるをえない。思い出した。本当はそうだった。何となく気があるふたりがいて、何となく約束して、夜になって、食べて飲んで、どうする? となって、今日あたりはいけるとお互い暗黙の打ち合わせをしている、というものではなかった、本当はただたださわりたくて、キスしたくて、抱きたくて、少しでも近くに行きたくてたまらなくて一方的にでもなんでも、涙がでるほどしたくて、今すぐ、その人とだけ、その人じゃなければ嫌だ。それが恋だった。思い出した。


吉本ばなな「とかげ」より


私も思い出しました。そうだった、それが恋だった(と語れるほどに経験もないし、こういう風に思っていても実際は核心的なことはなんにも言えないしできない人生)。

恥ずかしいほどにストレートな言葉。だけど歳とるほどに「まいっか」が増えていく気がしていて。特に恋愛に関して。だから結構ささりましたね。思い出しました。




「とかげ」は短編集で、上記はそのうちのひとつ「とかげ」からの抜粋。

今日時間をつぶすために入った図書館でなんとなく手に取り、ぱらぱら読んでいたんだけれど、いい出会いに恵まれました。


これまでに吉本ばななさんの作品は「キッチン」を読んだことがありました。「キッチン」も「とかげ」も、死の気配というか、闇みたいなものが、全体を包んでいるんだけれども、その中にも人の不器用な優しさがじんわりと描かれていて、救いようがあるというか、読んだ後に温かい気持ちになるところがとても好きです。うん、私の語彙では良さを語りきれません(当たり前)。



とかげ、この後早速ぽちってしまいそう。本に関してはありえないほど、財布の紐が緩い。。


備忘録でした。良い週末を〜




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