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【本日の本質】情報

心理学の有名な実験に「スタンフォード監獄実験」というものがある。

この実験においては、被験者を看守役、囚人役に分けて模擬的な監獄でそれぞれの役割を演じさせる。すると次第に看守役はより看守役のようにふるまうようになり、最後には囚人へ虐待を始めた。

この研究は、非対称な権力を与えられることによって元の人格とは関係なく、より暴力的になってしまうことを示唆し、権力に盲従する人間の恐ろしさを示すものとして、各種メディアで話題を呼んだ。この実験は最も有名な心理学実験とも呼ばれることがある。

地味に写真などが豊富に含まれたモダンな公式サイトがあるので、興味がある人は見てみるといいかもしれない。

スタンフォード監獄実験はそのキャッチ―さゆえに、しばしば人間の残虐性・あるいは暴力の本質を語る際に引き合いに出されるが、この実験にはしばしば疑義が投げられる。

疑義としては例えば音声記録からは、研究者から看守役を暴力に誘導するような発言があったとの指摘、BBCによる再現実験で得られた異なる結果、そもそもの実験自体の極めて主観的な性格などが挙げられる

いずれにしろ教科書の一番初めに出てくるような心理学実験ですら再現性に対して様々な疑義が投げられている。

一方で昨今「大学の研究」がSNSで持つ権威は強力なものとなっている。

Twitterでは毎日のように「○○大学の研究による生産性の劇的な改善法」が万単位のRTを受け、Youtubeでは「論文紹介Youtuberによる本質講義」が数百万再生される、最近は知事も似たようなことをやっている。

Twitterで暴れる戦士たちは昨今では論文を添付することによって自分の信念があたかもエビデンスに基づいているかのように語りはじめた。

大学もやや誇大宣伝気味のプレスリリースを最近は出しがちだ。

若手研究者が流行りの分野での「革命的」論文を紹介することで分野におけるプレゼンスを確保しようとする動きもみられる。

一方でそれらの「バズ」がスタンフォード監獄実験のように長期的に検証されることはほとんどない。

しかし一方では「再現性の危機」(replication crisis)が医学、心理学、生命科学の分野で報告されている。Natureに報告された50パーセント以上の科学者が自分の行った実験すら再現に失敗したとの報告が多くの科学者に衝撃を与えたことは記憶に新しい。

この再現性の危機の時代に、Twitterで流れてくる「論文」「学術情報」たちにどれぐらいの信頼性があるか、は推して知るべきであろう。研究者の発信であっても、Twitterには怪しげな研究者が跋扈している。せいぜい自分の知らない分野で知識を蓄えたいのであれば、メタレビューなど信頼性の高いとされているものを読むか、それなりに定評のある教科書を読むしかないだろう。

さてそれでもこの混迷の時代、情報の海を渡っていくにはどのようにすればよいのだろうか?

『BALDR HEART』は以下のようなキャッチコピーでこの時代の指針を明快に示している。

見えるものを疑え、見えないものを信じろ。

皆さんも『BALDR HEART』『CHAOS;CHILD』『最果てのイマ』をプレイし、正しい情報の扱い方を身に着けよう。

【本日の本質】Twitterを信じるな俺を信じろ

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