見出し画像

静かなるフリースロー

第4ピリオドで残り3.5秒。スコアは74ー76でレバンガ北海道が2点リードしていた。何とか時間を使って守り終えたかったが、ここで痛恨のペナルティ。館内は歓声と悲鳴に包まれる。

このピリオドにおける日立サンロッカーズ東京のラストプレーは、2本のフリースローに決定した。

試合は終始北海道がペースを握り続けていた。開始直後から立て続けに11点を奪うと、そのリードをしっかりキープし続ける。ジャマール・ソープ、ジェロウム・ティルマンの外国人プレーヤーが得点源として機能していた。日立東京も点差を詰めようと試みるが、北海道がすぐさま突き放す。ホームチームにとってストレスが溜まる試合展開が続いた。ここまでは完全な「負け試合のペース」である。

様相が変わったのは第4ピリオドだった。ここまでなかなか決まらなかった日立東京のシュートが、ようやく決まり始めたのだ。残り5分で日立東京が逆転すると、ここから怒濤のシーソーゲームが続く。そして、あのラストプレーへと繋がったのである。

アウェイ席に座る観客たちが悲壮感を漂わせつつ、必死のブーイングを続ける。ホーム席を埋め尽くす観客たちも、少しざわついている。

しかし、コートの1カ所だけから強い静寂が流れているがもわかった。中心に居るのはキャプテンの竹内譲次。彼の両手でそっと掴んでいるバスケットボールが、試合の全てを決める。そのポイントに何故か、視線と意識が吸い込まれてしまった。

それにしても、こういう時のフリースローは、どうして観衆から雑音を奪い去っていくのだろうか――

延長戦も勢いを持続させながら戦い抜いた日立東京は、焦りのあまりミスを続けた北海道の攻撃を抑えきり、86ー83で試合を終えた。ヒーローインタビューの対象は、もちろん竹内だった。

必ず決めなければならない場面で、しっかり成し遂げる。必然への期待が高まってしまうほど、そうならなかった時の失望感は大きい。弾む口振りで接するMCと比べると、竹内の口振りが妙に淡々としていたのは、気のせいではないはずだ

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)