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ホットドッグと満塁弾

プロ野球で東京ドームと言えば読売ジャイアンツなのだろうが、この日のカードは東北楽天対日本ハムだった。しかも、東北楽天のホームゲームである。

この日は楽天グループの「応援感謝試合」と銘打たれていた。楽天とは電子書籍サービスで大変お世話になっていることもあり、会員限定のチケット抽選会に応募する事ができた。そして見事、「応募者全員サービス」に相当する2階自由席のチケットが当たったのである。

何だかんだ言って、東京ドームでプロ野球を見るのは初めてだった。前年に都市対抗野球で初めてこのドームに訪れたのだが、無機質な雰囲気があまり好きになれなかった。やっぱり野球は、五感を刺激される屋外のスタジアムが良い。

試合はお互い無得点で3回表を終えた。少し退屈な立ち上がりだったので、予定よりも早くドーム内を探検することにした。

1階には様々なブースが設置されていた。ファンクラブやグッズ売店はもちろん、楽天の各種サービスを紹介するブースも目立った。オークション、ショッピング、モバイル、さらには楽天競馬のブースまで。

うーん、でも、すぐに申し込むべきモノでもないな。興味はあるが、野球場で決定するのは気が引ける。

そう思いながら2階席へと戻る道すがら、ふととある売店が目に止まった。そこは飲食の売店であり、メインメニューはホットドッグだった。

東京ドームのホットドッグ。僕はあるエッセイを思い出した。

尊敬するスポーツライターの山際淳司氏は、僕が知る限り日本で初めて「スタジアムグルメ」に言及した人物である。そのエッセイの舞台は東京ドームとニューヨークのシェイスタジアムのホットドッグ。前者も後者も素っ気ない一品なのだが、ワールドシリーズで見た後者のホットドッグはほかほかで美味しかった……という内容だった。

そうか、あのホットドッグなのか。

僕はホットドッグを握りしめながら、再び試合観戦をスタートさせた。4回表になっていた。

グラウンドを眺めると、楽天先発の辛島が突如コントロールを乱していた。四球を二つ与えて、2アウト満塁。思わぬかたちで先制のチャンスを得る。打席には7番のブランドン・レアード。


打率:.188

本塁打:13

打点:36


それにしても、何なんだこの成績は? 打率と本塁打、打点のバランスがおかしい。典型的な「ホームランかそれ以外か」という打者なのだろう。

でも、そういうバッターだからこそ、この場面の緊張感は一気に高まる。成功と失敗は、はっきり決まった方が良い。

ワンボール、ノーストライクで迎えた2球目だった。少し高めに浮いたボールを、レアードのバットは芯を捉える。フルスイングでは無いのだが、流し打ちされたボールはゆっくりと、大きな弧を描いてレフト外野席へと吸い込まれていく

鳴り止まない歓声がホームランバッターを迎える中、僕はホッドックが食べかけだった事に気がついた。

口を大きく広げて、がぶりつく。サルサソースがたっぷり塗られたその品は、さっき食べた時よりもソーセージからは肉汁が溢れ、バンズもほのかに熱くなっている気がした。

やっぱり、グッドプレーが見られる場所ならば、美味しい一品と出会えるのかもしれない。僕はついでに、ビールも一気に胃の中へと流し込んだ

どうもです。このサポートの力を僕の馬券術でウン倍にしてやるぜ(してやるとは言っていない)