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2020年6月の俳句。

海を越え 働き者と バナナ来る

日本の労働市場を底辺から支えている働き手は アジアや中南米からやってくる。
それはバナナの産地と重なるところも少なくない。


わらべうた 病児を寝かせ 蛍の夜

「門井慶喜著 銀河鉄道の父、講談社」によると 宮沢賢治の父政次郎は 賢治が七つのとき赤痢で入院すると 自ら付き添いを買って つきっきりで看護にあたった。
なかなか寝付けない賢治のために 父・政次郎は賢治のむねを軽くたたきながら 子守歌の代わりに岩手の蛍のわらべうたを歌う。
「ほだんこ ほだんこ そっちの水は うまぐねぇ。こっちの水は うまいぞ。昼は 草葉の露のかげ。ほだんこ ほだんこ こっのほさ こいこい。夜は ピカピカ高提灯」
政次郎は父として過剰な人であった。なかなか自立できない賢治の求めに応じて 父は惜しみなく仕送りを送りづける。
その潤沢な資金によって賢治はおもうままに文学や哲学の本に親しむことができたのだった。


音消しの 砂匂い立つ 走り梅雨

砂地は静かな雨音なと吸収してしまう。
それでもふと窓の外に気持ちを向けたとき 雨の気配が感じられる。


半ズボン 波打ち際を 手でつなぎ

頂きに ピンクがひとつ タチアオイ

タチアオイは本来 上下に複数の花をつけていくのが普通だが、
これは下の花が付かないままに もう咲かないとあきらめていたところ 頂に一つだけピンクの花を咲かせたのだった。


不登校 いのちのサイズに 更衣

学校という場所は必ずしも子供に合わせて 作られているわけではない。
三角の器に四角のものは入らない。そういうときは無理強いするのではなく
子供の気持ちに寄り添ってどこまでも付き合う方がよいと云うのは
自身 不本意な子供時代を過ごし、不登校の息子を育てた経験を持ち、児童虐待について いくつかの本を書いている ルポライター杉山 春さんのことば。


噴水場 「ここで待ってる」 「じゃ行ってくる」

ジインズに 素足を逃がし 試着室

ペダルの素足 燃ゆ アリス オット ピアニスト

アリス=紗良・オット(アリス=さら・オット、Alice-Sara Ott、1988年8月1日 - )は、ドイツ・ミュンヘン出身の女性ピアニスト。
父をドイツ人に母を日本人に持つ。ステージではいつも裸足で演奏する。
2019年2月15日、多発性硬化症と診断されていたことを自身の公式サイトとSNSアカウントで公表した。
アリスさんは、英語、ドイツ語、日本語で、検査の間に絶望感に襲われたこと、適した治療法を見いだし今までの生活を続ける決意などをつづった。
公表にためらいがあったことも明かした上で、「特に若くして罹患(りかん)され病気に直面されている方に少しでも同じく勇気を与えることができたら」と記した。
多発性硬化症は、脳などの神経が冒されて手足のしびれや視力低下が起きる自己免疫疾患。難病に指定されている。


バイクの音 連なる夜明け 卯波立つ

新コロナウイルス感染予防のための県外移動の自粛が解かれた6月19日の翌朝のこと。

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