ワールドトリガーから学ぶコーチング(3rdシーズンEp8感想)
アニメ「ワールドトリガー」をご存知でしょうか? 少年誌ジャンプ・ジャンプスクエアに掲載されている漫画が原作になっています。
これはコーチングの観点からも非常に面白い番組です。この記事では、コーチングセッションそのものといえる最新話(3rdシーズン、エピソード8)の考察と、ワールドトリガーの魅力について書こうと思います。アニメをご覧になってない方にも伝わるように噛み砕いて書きましたので、ぜひ読んでみてください。
※2021年11月現在、各種動画サイトなどで配信中です。詳しくはこちら。この話だけでもアニメをご覧いただけるとより伝わると思います。
画像引用: Twitterワールドトリガー アニメ公式アカウントより
あらすじと背景
最新話を理解するのに必要な背景をお伝えします。全般的なあらすじはwikipediaをご覧ください。今話は、メインキャラクターの千佳が自分の本音と向き合うまでの話です。
主人公たちは、ネイバーフッドと呼ばれる別世界にさらわれた家族・友人を救うために、救済に向かう組織に所属しています。隊員たちは3~5名のチームを組んで日々の戦闘訓練を行なっています。千佳は小柄な女の子ですが、トリオンと呼ばれる潜在能力が非常に高いため、近距離で戦うのではなく銃撃をメインとするスナイパーの役目を担っています。
千佳は、過去のトラウマから"人を撃つことができない"ため、戦闘を補助する役割でチームに貢献してきました。しかし、遠征メンバーの選抜にはチーム戦で勝ち進む必要があり、新戦略を立てるところが今回のテーマでした。
「お前、本当は人を撃てるんじゃないのか?」
戦略を立てているところに、最近チームに加入したヒュースが千佳にこう質問しました。チーム戦で勝つには千佳のトリオンを最大限に活用するのが勝算が高いため、千佳の本当の気持ちを知るための素直な質問でした。
ヒュース「自分は人を撃てないと信じ込んでるだけの可能性もある。」
ヒュース「俺は、千佳は人を撃てると思っている。」
トラウマをえぐるような質問ですが、周りのメンバーは千佳をかばいつつも逆に質問をします。
他メンバー「千佳ちゃんが人を撃てるとどうなる?」
他メンバー「千佳が撃てるとお前が思う根拠はなんだ?」
ここで、辛い質問を投げかけたヒュースを責めてはいません。感情的に論破するのではなく、議論を始めています。こういうところも良いコミュニケーションが取れてるチームだなあと思います。
建前と本音
千佳「たぶん、自分のせいで相手が傷つくのを見るのが怖いから」
千佳は、自分の気持ちに確信が持てず、たぶん、とつけて話をしました。訓練であっても実際の戦闘を連想してしまうから、撃てないのはそのせいだ、と周りの人もフォローしてくれます。視聴者からしても「小さい女の子だし優しいからそうだよね…」という気持ちにさせます。
しかし、追い討ちをかけるように、
ヒュース「千佳が敵を撃たなければ、仲間が死ぬ場合もある」
と言われ、千佳は過呼吸に陥ります。この言葉を聞いて、おそらく自分が本当はどうしたいのか、どうするべきなのか、を考えるきっかけになったのだと思います。
その後、信頼できる先輩に励まされます。
先輩A「ヒュースくん、ズバズバくるから圧倒されちゃうよね」
先輩B「かなり主観的な意見ではあったけどな」
先輩A「無理しなくていいんだからね。今のままでも勝算は全然あるんだから」
千佳の味方である態度で、優しい言葉をかけてくれました。
千佳「うまく言えるかわからないんですけど...私」
先輩「大丈夫。ちゃんと聞くよ」
この先輩なら話してみよう、という気持ちで自分の昔の体験を語り始めます。ひとしきり話したのち、
千佳「何が言いたいかっていうと...」
(深呼吸)
千佳「私は、本当は、人を傷つけるのが怖いんじゃなくて、人を傷つけたことを誰かに責められるのが怖いんだと思う...」
千佳が自分の本音を初めて他人に話し始め、先輩方もハッとさせられました。人を撃つことで「怖い・ずるいって思われないか」「恨まれないか・憎まれないか」という気持ちがブレーキになってたことを吐露しました。
千佳「他の人より弱いんだ、って思い込んで、だから許してくださいって」
千佳「私が撃たなかったら仲間が死ぬかもって言われて、それならきっと相手が人間でも撃つって私も思った」
千佳「結局いつも自分のことばっかり考えてる...」
「人を撃ちたくない」は建前で、「自分を守るために撃たない」という本音と、「自分のことばかり考えてしまう」弱さを認めた瞬間でした。それでも先輩方は受け入れてくれたおかげで、弱い自分でも大丈夫だ、と心が解きほぐれたような表情になりました。
先輩「やれることをやっていこう、千佳ちゃん」
先輩「千佳ちゃんには今でもいっぱいできることがあるんだから」
自分の本音に気づいた後
今話の最後に、千佳はヒュースに自分の意志を伝えに行きます。
千佳「仲間はきっと撃てない私を責めない。でも、だからこそ、、私もちゃんと戦いたい」
自分の弱さを他人に話すことができ、自分が本当にどうしたいのか、自分に何ができるのかを見つめ直し、結論を出し、すっきりした表情になりました。
今話のタイトル「意志」とは、まさに千佳が志を立てた瞬間のために付けられた良いタイトルだなと思いました。
登場人物とコーチング
今回は、ヒュースも先輩方もコーチとしての役目を果たしていました。
それは、相手の本当の力を(本人よりも)信じて伝えることであり、どんなあなたでも聞き入れるという姿勢でもあります。一部、トラウマに対して強引な質問の仕方もありましたが、それでも「だからあなたはダメなんだ」ではなく、「本当はできると私は思うけど、なぜ?」という気持ちからの質問だと思います。
何より、答えは自分自身で持っていて、それに向き合う勇気と、どうしたいか、という自分自身の意志を再確認する、これがまさにコーチングセッションのプロセスと同じだなと感じました。
次回、自分の意志で戦うことを決めた千佳がチーム戦でどんな活躍をするのか、楽しみです。
ワールドトリガーに少しでも興味を持たれた方は、是非ハマってみてください。
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