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去年のお笑いに対してのアンサーソングの様なM‐1準決勝


遂に決勝進出者が発表されました。

アキナ、マヂカルラブリー、見取り図、錦鯉、ニューヨーク、おいでやすこが、オズワルド、東京ホテイソン、ウエストランドの9組が決勝進出を決めた。

筆者は「オンラインチケットよしもと」の配信サービスという手法で時間差で準決勝の漫才を堪能しました。見終えた後はすぐに「GYAO」の方でLIVE配信による決勝進出者発表の流れです。

そして、前回の記事で書いた決勝進出者の予想が下記になります。

オズワルド、からし蓮根、アキナ、コウテイ、ウエストランド、マヂカルラブリー、ニッポンの社長、ニューヨーク、金属バット、ぺこぱ

太字が決勝進出を決めた組です。 ・・・何とも言えない的中率。

準決勝進出者 26組 

決勝進出者 9組  ※決勝当日はさらにもう1組敗者復活枠がありまーす

筆者予想的中率 5/10

まぁ、そこそこの的中率ですが、筆者が全芸人中でTOP3で推している金属バット・ニッポンの社長・ロングコートダディが全落ちなのはショック。がしかし、敗者復活戦が同時にご褒美になりました。

逆に推しだけど、予想に入れてなかった錦鯉が決勝進出。錦鯉が発表された瞬間に隣にいた金属バットの友保まで一緒に万歳してハグしていたのが面白アツかった。

準決勝をフルで見たのは正直初めてだった筆者。審査員が8名いました。6名が構成作家。残り2名がM1決勝を放映するTV局関係者(テレ朝、ABCテレビ)です。全ネタ終了後の約2時間後に発表なので、中々に審査が難しそう。「えぇ、この人が審査するのかよ。。。」って方がごく僅かに混ざってたのが少しショック。


と、まぁ準決勝を見た感想を書きます。その場のウケを基準に分けてみると


ウエストランド、おいでやすこが

この2組が”1,2を争う程”ウケてた様に思えます。ネタ中に「確実にいったな」っていう感覚。この2組が落ちてたら「何で落ちた?審査員頭おかしいのか」と炎上しちゃうやつ。共通していたのが”自分達に起きた不運”を掴みに盛り込んでちゃんとウケたので、良いスタートダッシュを切ってました。準決勝観に行くお客さんなんて殆どが”お笑いガチ勢”でしょうから、ちゃんと芸人のプライベート事情も把握済みです。決勝でやったらポカンとされるので注意。


アキナ、見取り図、ニューヨーク、オズワルド

ここもウケ的に確かな手応えがありました。ネタ後に「これは・・・いったんじゃないかな!?」っていう感覚。他の組と比較してみて徐々に確信に変わっていく雰囲気。制作陣的にもM1決勝進出の経歴のある”安定感”のある漫才師として、大会の事を考慮すると是非いて欲しい、という感じです。


マヂカルラブリー、東京ホテイソン、錦鯉

ここは何とも言えないゾーン。上記の4組と差がないぐらいにはウケてたのですが、所謂「飛び道具」「話題性」的な枠で、ネタのクセが中々のもの。本番の空気やネタのチョイス次第ではちょっと怖かったりする。金属バットや滝音、ぺこぱ辺りもこのラインには乗ってたはずですが、ギリギリで落ちたっぽい。上4組は大会の基盤として必要不可欠で、スパイス的な役割としてこの3組が選ばれたって感じ。


こんな印象でした。あくまで筆者の印象。



そして今回書きたかった内容はここから先です。タイトルの”去年のお笑いに対してのアンサーソング”の意味について書きます。

まず去年(2019年)のお笑いのテーマ・トレンドというが

「誰も傷つけない笑い(≒優しい笑い)」

「お笑い第7世代」


でした。このキーワードに当てはまらない芸人達は露頭に迷い、それに相反する芸風を披露した芸人は、炎上や自重せざるをえない空気になって肩身が狭くなっている事にかなり疑問がありました。

このキーワードを利用して毒素が強いモノ、尖っているモノ、古くからあるモノを否定して、優しさと新しい価値観で押し殺していく様が非常に気に食わないです。テレビではやたらお笑い第7世代と新しい価値観を紐づけして30代以降の世代の芸人が冷遇されたり、好感度No1芸人のサンドウィッチマンに見習って「コンビ仲が良いんですよ」をやたらアピールする連中が増えたり、、、 「新しい」という言葉で誤魔化してお笑いをやらないのは話が違うからな!!!

「ニュースターを発掘するため」とか言って古いモノを排除し、新しいモノにしか価値を見出せないR1運営陣、お前の事だぞ。

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(筆者も正に岩井状態)

「優しい笑い」「お笑い第7世代」そのものを否定しているわけではありません。傷付ける範囲が少ない笑いは非常にクリーンで後味が良いし、第7世代の顔であり、キーワード発案者の霜降り明星だって売れるべくして売れた才能の塊だと思ってるし、フワちゃんのズバッと言うキャラもテレビ的に面白い。それを悪用したり変な捉え方をしてそこに相反する存在を排除しようとする連中が気に食わない。


と、愚痴になり過ぎたので話を戻すと、今回のM1準決勝はそんな去年のお笑いに対してのアンサーソングの様なメンツとネタって感じがしました。

お笑い第7世代にカウントされず「優しい笑い?なんだソレ?」と言わんばかりの「異端児」達の逆襲


こんな雰囲気を感じました。準決勝進出者のラインナップを改めて確認してみると

ぺこぱ、キュウ、錦鯉、コウテイ、滝音、ランジャタイ、祇園、学天即、ダイタク、カベポスター、オズワルド、ロングコートダディ、ニッポンの社長、ニューヨーク、タイムキーパー、ゆにばーす、おいでやすこが、マヂカルラブリー、からし蓮根、東京ホテイソン、アキナ、インディアンス、ウエストランド、見取り図、金属バット、ラランド

象徴的な存在の金属バットを始めとして

フレッシュさの欠片もない錦鯉

ワーキャー人気ゼロの破天荒芸の ランジャタイマヂカルラブリー

もうネタの内容そのものが毒素満点の ニューヨークウエストランド

気付いたら自分達のホームが全焼してた おいでやすこが

(ここにDr.ハインリッヒや真空ジェシカまで準決に上がってたら審査員泣くだろうなぁ。。。)


漫才の内容にも「誰も傷つけない笑い」に対して芸人側からの心の叫びがネタになるぐらい。ウエストランドぺこぱがそんな昨今のお笑いに対して漫才を通して物申してました。

ウエストランドの場合

「もう無理なんだよそんなのは!!こっちは無作為に傷つけるお笑いやってるんだから!!」

「お笑いは今まで何も良いことがなかったヤツの復讐劇!芸人の一番の目的は復讐なんだよ!!」

もうストレートに「誰も傷つけない笑い」に対して「無理だよバーカ!」と言わんばかりのアンサー。最高。特に「芸人の一番の目的は復讐」って言葉はめちゃクチャ刺さりました。筆者は芸人じゃないですが、凄い共感します。

ぺこぱの場合

「俺はな、”絶対に人を傷つけない優しい笑い”っていう重い十字架を背負ってるんだぞ!」

これまた興味深いのが「誰も傷つけない笑い」という言葉が生まれた根源の様な存在のぺこぱがそれをネタにしている事。ぺこぱによるセルフ皮肉ネタでした。

準々決勝でもスリムクラブが新しい価値観?的なものにグサッと刺してみたり。他にも誰か昨今の”お笑い”に対しての皮肉ネタを披露している組があった気が。


お笑いを目指している人が全員が全員ってわけじゃないけど、若い頃から不当な扱いを受けて、馬鹿にされてきた人間が「どうせこの先笑い者になる人生なら、笑わせる側に回ってのし上がって、金儲けして、チヤホヤされないと損だ」ってメンタルでやっている人がかなり多いと思う。筆者も芸人を目指そうと思った事は何度もありますが、正にこんなメンタル状態。まぁ引っ込み思案過ぎて出来なかったら、放送作家を目指すわけですが。作家の養成所に通った経験として、そんな筆者と同じ様な経緯とメンタルの人が実際多かったですしね。

だからこそ、昨今の「誰も傷つけない笑い」という強迫観念にはある種拒絶反応みたいなものがどうしてもあります。そんな負の念を笑いに変えたいのに、それを否定されてしまっては「どうしたらいいんだよ。。。」といった感じです。もう病的だけど「誰かを傷つける笑い」を奪われたら、もう生きる気力が湧いてこないんですよ。頼むから活力を奪わないでくれ。


最後は筆者の闇な部分を見せてしまいましたが、お笑いガチ勢ならちょっとはこの気持ちに共感したのではないでしょうか。

でもやっぱりそんな異端児達による逆襲劇が今年のテーマなら、やっぱり決勝に金属バットがいた方が映えるよね。

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