2022年注目の芸人⑥
前回がキングオブコント編だったので、今回はM-1です。今年も開催の合図が発信されました。
近年は圧倒的な盛り上がりと影響力を持つモンスターコンテンツですが、その反面、審査員への誹謗中傷問題、芸人間でのM1実績マウントなどの負の部分と裏側を可視化することによってのドキュメンタリー化、ルール違反に対しての処置等の賛否両論な部分が目立ちはじめました。これまで長く審査員を務めたオール巨人、上沼恵美子のお二人も辞退宣言をした事もあり、今年のM-1は開催前にして既に不穏な空気とフラストレーションが溜まっている状態です。そんな混沌とした空気にラストイヤーを迎える金属バット、ランジャタイがさらに混沌を作るのか。それとも同じくラストイヤーの見取り図がビシッと決定打を放って大団円とするのか。新たな審査員のメンツによっては俄然有利に働きそうな真空ジェシカ。やっぱり今年も最有力なオズワルド・・・なんて事を妄想で膨らませているお笑いガチ勢も多くいる事でしょう。
また何かと話題に事欠かなそうなM1ですが、上記で取り上げた組や決勝進出歴がある組以外にもまだまだ今年M1で注目に値する組が沢山いますので、ここから先はそんな芸人達を紹介していきます。
■ショーレース な芸人(M-1グランプリ編)
・怪奇!YesどんぐりRPG
ギャガー3人によるトリオユニット。3年程前に芸人間で流行った”プレイヤーチェンジ”をきっかけに徐々注目を浴び、遂に今年はR-1グランプリでサツマカワRPGとYes!アキトが初の決勝進出。着実に露出度を上げてきています。トリオでのイメージからそれぞれピンでの活躍が目立ち始めており、集大成として今年のM1ではそろそろ”予選の賑やかし枠”から”本命”へとステップアップする頃かなと思います。
未だかつて「ギャグ」をベースとした組がM1へ決勝進出したことはありません。マヂカルラブリーやランジャタイ等の登場で「これは漫才なのか?」論が度々繰り広げられますが、怪奇!YesどんぐりRPGまで「ギャグ」という明確なカテゴリに振り切っているとお笑いガチ勢もライト勢も満場一致で「これは漫才じゃない」ってなりそうだし「でも、まぁ景気づけにこれはこれで良し!」ってなりそう。現在日本は高騰薄給なのでギャグで一発景気づけに。・・・やっぱり”賑やかし枠”でしたね。しかしどうせ賑やかし枠なら決勝の舞台で目立って欲しい。
・カナメストーン
学生時代からの友達同士のコンビであり、現在進行形で同居している超絶仲良しな2人。2人共見た目からインパクトがありキャラ立ち充分。さらにはオシャレ好きなファッショニスタな一面を持っています。とにかく、芸人として”華”を感じるコンビです。
漫才はボケツッコミ共に一言で表すなら”エキセントリック"なのですが、それぞれ違う毛色のエキセントリックさを持っており、ボケの山口 (緑)は不気味なエキセントリック。ツッコミの零士(オレンジ)はポップなエキセントリック。不気味&ポップなキャラ全開なコンビです。
現在ブレイク中のオズワルド伊藤は「理想の漫才師」と語り、真空ジェシカも「信頼できる先輩」「ライブに居れば必ず盛り上がる」と語ってました。他にもランジャタイ、Aマッソなどとも交流があり、今売れている関東発の漫才コンビからの信頼と後押しが絶大です。近い将来売れる雰囲気がビンビンなコンビなのでM1決勝に来れば、もう後は間違いなし。
・シシガシラ
ハゲネタを極めようとしてる!!!
コンプラ強めな現代社会において、特に容姿イジリ等に風当たりが強くなっているにも関わらず、敢えてハゲネタ一本で漫才し続けるその姿が同業者やお笑いガチ勢の心を鷲掴みにします。ハゲでチビで短足で声が変、というイジリ甲斐のデパートみたいな存在の脇田とSupremeのパチモンを売り捌いてそうな詐欺師風な雰囲気の浜中。バラエティの現場に居たら触れずにはいられないコンビです。
とりわけ2020年のM1での出来がかなり良く「これで決勝いけないのか・・・」と思ったぐらいで、翌年の2021年は流石にちょっとネタ切れかなと思っていたのですが、いざ予選のネタを見てみると「まだこんな角度のハゲネタがあったか!!」とたまげてしまいました。コンビ結成からずっと準々決勝までは(4年連続で)進出しているので、あともう少しといったところです。去年のM1で一気に決勝まで行ってブレイクしたモグライダーや真空ジェシカみたいに一気に決勝まで駆け上がってくるなんて事も起こりうるかもしれません。
・ダイタク
双子ネタを極めようとしてる!
当然ながら、双子の特徴を軸にネタを展開していくパターンが殆どなのですが、”漫才そのもの”が上手すぎてイロモノではなく”王道の域”にすら達しています。もはや双子である事がオマケの様。
ドッシリとした佇まいが醸し出す安定感とハプニングやアドリブも軽々と取り入れて笑いを取るその姿は・・・同じく兄弟漫才師である中川家の様な風格すら感じます。東京吉本の劇場番長!!!
尖った芸風が台頭する昨今のお笑い界。ランジャタイやマヂカルラブリーみたいな感覚的な笑い。真空ジェシカや金属バットみたいな教養と雑学が必要な笑いなど・・・見る側もある程度の下地が必要な笑いが増えてきています。その点、ダイタクの「双子」という分かりやすさは見る人を選ばないので、今年のM1はその要素が追い風になるんじゃないかなと思います。
・パンプキンポテトフライ
去年のM1で面白かったので紹介したかった組。
突拍子もない事をしでかすボケの山名(現坊主・元ロン毛)と独特な声質とボキャブラリーでツッコむ谷のコンビ。つまり、カナメストーンと同じく、これまたボケツッコミ共に”エキセントリック"さがウリの漫才コンビです。近年の漫才におけるトレンドスタイルなのかもしれません。その最先端にいるのが真空ジェシカや東京ホテイソンとかでしょうか。
そういう意味では今年のM1は同カテゴリ―にカナメストーン、真空ジェシカ、東京ホテイソンなどとの枠争いが熾烈な気がしますが、最近はツギクル芸人グランプリ2022、ABCお笑いグランプリ、TV番組『ゴッドタン』での「この若手知ってんのか2022!?」などのネクストブレイク系の番組にも次々と出演を果たし、勢いに乗りまくっています。
※ちなみに最近筆者は「真空ジェシカ」にドハマり中です。『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』とYouTubeとXVIDEOSにアップされてる真空ジェシカ関連の動画見漁りまくっています。そのせいか、見取り図やオズワルド以上に今年のM1決勝進出の可能性が高いとすら思ってます。真空ジェシカはネタと大喜利が強すぎる。。。
・フースーヤ
去年のM1で面白かったので紹介したかった組。part2。去年のM1準々決勝は凄かったですね。「中華コレクション」のネタ、めちゃクチャ面白かったです。敗退した組の中では一番面白かったし、何より”見直して”しまいました。
かつては芸歴1年目で彗星の如く現れ、そのハイテンションかつ適当なノリとポーズが中高生間で流行り、センセーショナルなデビューを飾ったコンビです。
しかし当時は「一発屋」というカテゴリも飽和状態にあり、こういった芸風で世に出るとお笑いガチ勢からは「ハイハイ、勢いとリズムだけで勝負する系ね。小学生や女子中高生からは支持されるけど、半年経たないで飽きられてポイされちゃうヤツ」といった感じに”一発屋予備軍”に対して特に風当たりが強かった時期だった記憶です。筆者も当時は大学生とかだったのでお笑いに対して人一倍尖り散らかして頃だったので例に漏れずソレでした。当時は他にも8.6秒バズーカーやエグスプロージョンとかが同カテゴリにいましたね。最近ならEverybodyとか。(そしてなぜかコウテイだけは許される謎)。特にフースーヤは運が悪い事にその風潮が一番強かった時期に世に出たので、他の同カテゴリの芸人よりブレイクの規模と期間が弱かった印象です。
そして時は流れて2021年のM1グランプリ。かつてはお笑いガチ勢からは批判強めだった芸風。それを変えるどころか、むしろブレずにそのままの路線で面白さに磨きをかけており、めちゃクチャ面白く仕上がっていた姿に感銘を受けたお笑いガチ勢も多かった事でしょう。一番カッコいいパターンのヤツ。上記の動画をリアルタイムでテレビで見てた頃は「ふんっ、しょうもな。勢いだけじゃねーか」と思っていた筆者も最近またYouTubeでこの動画を見た直後には「ジョージクルーニー卵とじ♪」を口ずさむぐらいに手のひらクルクル状態でした。ちなみに「中華コレクション」のネタは「O・S・K・N お魚FISH(DAIGOポーズ)」がお気に入り。
どうやらフースーヤは・・・面白かったようです。どうもすみませんでした。今年のM1も会場を大いに沸かす事を期待してます。決勝は・・・怪奇!YesどんぐりRPGと熾烈な枠争いになりそうです。
・カベポスター
去年のM1で面白かったので紹介したかった組。part3。敗者復活戦で披露した「路上ミュージシャン」ネタ、かなりお気に入りでした。
カベポスターに至っては既に筆者の”推し”です。「間違いなく、確実に売れる」。そのぐらいに思うまでにネタのクオリティが高いコンビです。大喜利が大好物のボケの永見と心地の良い喋りとバランス感覚の良いツッコミが冴えわたる浜田。パッと見は地味だけど、ボケツッコミ個々の能力値が高い王道タイプであり、コンビバランスが良いです。おそらく売れ方も大きなショーレースで結果を残してからブレイク、という王道路線な気がします。当然今年のM1、期待大です。コントも面白いので、出来ればキングオブコントの方にも是非エントリーしてほしい!
アカデミックな内容のネタが多く、お客さん側もある程度脳を回転させる必要がありますが、2人のゆったりとしたトーンでのやり取りと心地の良い浜田のツッコミのおかげで複雑な内容でもスッと入ってくる仕様になっています。そういった点も踏まえてやはりコンビバランスが抜群です。
※4月に行われたカベポスターの単独ライブ「目覚ましい起床ぶり」を見逃してしまった事を今更後悔。FANYさん、再販してください。
・マユリカ
去年のM1敗者復活戦「ドライブデート」のネタが想像以上に反響があったコンビ。その前の2020年の準々決勝でも全く同じネタを披露してましたね。割と珍しいパターンに思えましたが、結果としてそれが吉でした。お笑い見本市の「ラヴィット」にも度々出演し、あらゆるメディア媒体で「ネクストブレイク」的な立ち位置で特集される事が急増しています。
なぜかずっとほんのり不機嫌なボケの阪本。ネタ中の女役が絶妙にウザくてしばきたくなるツッコミの中谷。コンビ名の由来をはじめ、なんとも形容し難い気持ち悪さを放つコンビです。
筆者の推しであるニッポンの社長とロングコートダディも可愛がっている後輩としてよくそれぞれのネタコンテンツでマユリカをヘビロテ起用していたので結構前からその存在を存じ上げていたのですが、そんな先輩2組よりもテレビ番組で重宝されそうな雰囲気です。特に東京の番組では分かりやすくイジリ甲斐のあるタレントが重宝されやすい傾向にあるので、そういった面からもより今後テレビ番組で活躍出来そうです。
しかし、そんないじられキャラな面だけでなく、ネタや大喜利(主に坂本)のセンス系な面も持ち合わせており、おまけに”幼馴染コンビ”というエモさ面も持ち合わせています。つまり、実は売れるためのレーダチャートが満遍なく埋まっているハイスペックコンビです。三四郎やアンガールズの様にいじられキャラとして重宝されながらも同時にショーレース等にも顔を出すことで「なんだかんだ、ずっと消えずに売れ続けている」息の長いコンビになりそうです。
・ハイツ友の会
ロートーン&ローテンポで毒素強めなネタを繰り出す女性コンビ。コンビのどちらか一方が根暗で猛毒なタイプでもう一方は普通のツッコミという組み合わせはよくあるけど、2人共に同種族な根暗猛毒タイプなので、色がハッキリ出ていて強い。アンタッチャブルみたいな希少価値の高いエンジンをコンビ揃って積んでる様な感じ。というか、アンタッチャブルがもつ要素を全部反対にしたら「ハイツ友の会」が出来上がりそう。
結成から僅か4年ですが、既に複数のNEXTブレイク発掘系のショーレースで結果を出しています。去年のM1グランプリでも準々決勝まで勝ち進みました。今年はM1、キングオブコント、THE Wのいずれかの全国区なショーレースに名を連ねるかもしれません。
今回の記事はM-1グランプリ編なのでアレですが、正直M1グランプリではなく、THE Wもしくはキングオブコントの決勝進出の方が可能性としては高いと思ってます。
上記のコント動画の様な「女視点から見るイヤな女を揶揄する」系のネタは女芸人の常套手段であり、代田ひかる、横澤夏子、柳原可奈子などがその系統にあたるので、世間的にも見慣れた芸風です。ある程度慣れ親しまれた芸風による安心感と彼女ら特有の刺激的な猛毒度合いがコントだと受け入れられ易いのではないかと思います。キングオブコント編の方で紹介した方が良かったかもしれない・・・
・ダイヤモンド
筆者の推し。せっかく2021年のおもしろ荘で優勝したのに同年に出場したやす子の方がテレビで引っ張りだこになってました。
筆者が過去に書いた推し芸人の記事から約2年が経ちますが、今に至るまでの間におもしろ荘で優勝したり、ツギクル芸人グランプリ決勝進出したりなど、着実に実績と知名度を上げてきているので、感慨深いです。売れて欲しいなぁ。
推しなので、ここは贔屓目にオススメネタを多めに載せます。漫才が好みだった方は下記動画の様な濃いめなダイヤモンドワールドのネタもどうぞご覧ください。
・ママタルト
「まーごめ。」と言えばこのコンビ。
身長と体重がほぼ同じという嘘みたいな体型なのに、機敏で大喜利も強いという技巧派デブの大鶴肥満。大鶴肥満のインパクトが強すぎて薄れがちだけどかなりクセが強いツッコミを繰り出し、平場では相方と同様にボケたがりに切り替わるツッコミの檜原。コッチも何気に肥満体型なのでブレるおまけ付きです。
とにかく2人共キャラが強く、愛嬌がある見た目をしているので、非常にテレビウケするタイプのコンビです。それに加えて2人揃ってボケたがりの大喜利好きなので”売れるのは時間の問題”という事は同業者もお笑いガチ勢も周知済み。まぁでもやっぱりM1やキングオブコントで結果を残すに越したことはないし、そろそろ決勝の舞台に顔を出しそうな雰囲気です。
オズワルド、真空ジェシカなど今大活躍中の芸人と親しい仲にあり、霜降り明星の粗品も以前から「面白い」と太鼓判を推されていました。新世代を象徴する芸人から一目置かれているママタルトは、さしずめ"最強のNo2"みたいな立ち位置に将来的には定着しそうな気がします。
・カラタチ
アイドルオタクとアニメオタクが織りなす貶し合いと傷の舐め合いがクセになるコンビ。これまで存在してそうでしなかったコンセプトのコンビなので、一見ニュータイプなコンビに思えるが、どことなく平成っぽい臭いを放っているので古臭さも感じる歪な存在なのもまた面白いです。
アニメ、アイドル、ゲームなどなど、平成を彩ってきたサブカルチャー達も令和の現在ではすっかり市民権を得ています、彼らの漫才から出るワードや苦悩も今なら割と多くの人に響きやすい気がします。しかしその反面、かつては「オタク」という存在の希少性や社会と切り離された疎外感を種に”自虐”を利用した笑いが多かったですが、今はそんな「オタク」という要素の特別感が薄れていっている気もするので、期待しているほどの「ヤバい奴らが来たぞ」感は残せないかもしれない。もうトムブラウンとかランジャタイとか出ちゃったからね。
それでも去年のM1グランプリは準々決勝まで勝ち進めています。上記で紹介したカナメストーンやママタルト、パンプキンポテトフライほど「今年来る」感はないですが、案外そういう時に限ってM1決勝進出しちゃったりするのもM1あるあるなので、密かに期待。
・シンクロニシティ
ダークホース。2020年のⅯ1準々決勝敗退組の中で一番面白かったコンビです。2021年は女性のよしおかさんが体調不良でコンビでの活動は休止中だったので出場せず。現在は復帰して活動を再開しているので、是非今年のM1はエントリーして欲しい。
2人共、今トレンドの大学お笑い出身であり、さらには芸能事務所に所属せず、サラリーマンとして働きながら週末に活動といった感じです。ラランドを想起させる経歴ですが、M1決勝へ行く可能性はコッチの方が高いとすら思えるぐらいにネタが面白いです。YouTube等でシンクロニシティ関連のコンテンツはあまりないので、M1を楽しみに待ちましょう。
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