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『隠れアドレリアンⅠ』:アドレリアンの分類

前回からの続きです。

元々の英語は『Crypto-Adlerian』で、cryptoはギリシャ語に由来しており、『隠れた』、『秘密の』を意味します。最近では暗号通貨に関する話題の時にクリプトという言葉が使われています。「暗」の部分ですね。

このタイプは以下のような特徴があります。

  • アドレリアンであるとは公言しない

  • 自身の思考や論理、実践についてアドラーの功績を認めない

  • アドラーの概念や技法に酷似しているにもかかわらず、自分のものとして説明する

認知療法を開発したアーロン・ベックはこのタイプの良い例であり、例えばベックによるスキーマの使い方とアドラーのライフスタイルの信念には類似性があると指摘されています。

上記のような特徴だけを見ると「ベックは泥棒だ!」といった議論が出てきそうですが、本論文の著者であるLen Sperryは「必ずしもそうではない」と言っています。彼は以下のような話をしています。

著者にはアドラーのアイデアを盗んだ人々についてのいくつもの会話が思い出される。最も顕著なのはハインツ・アンスバッハーとの会話だ。(中略)彼は隠れアドレリアンという言葉には価値を見出さなかった。(中略)ハインツは、歴史上のある点において、無関係の人々が同じ時間軸の中で類似の理論や方法を考え出す可能性があることを信じていた。しかし、歴史上は大抵、洞察や方法をたった一人の功績にしようとするのである。さらに、アンスバッハーは誰が最初にそのアイデアや洞察を得たのかについて議論することには意味がないと考えた。それよりも、彼はその洞察が広まり、専門的実践に取り入れられることの方が重要だと考えたのである。

拙訳:アドレリアン 35(3) p.217

アンスバッハーの見解はなんて懐が深い、また視野が広いのだろうと訳していて感じました。今だと、野田俊作先生の理論や概念をアドレリアンがどう扱っていくのかという問題のひとつの軸にもなりうると思っています。

次回は、『アドレリアンⅢ』です。


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