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回想:ペアレント・トレーニング(教育センター)

とある公的機関で、ペアレント・トレーニングのプログラムを担当していた。ペアトレは最近それほど話題に上らなくなったような気がするが、当時は割と各地域で活発だったように思う。

その教育センターでは、来所した数組の親子が親と子に分かれ、別々の部屋で親はペアレント・トレーニング、子どもはSSTを並行して実施するというプログラムで(今はもう実施されていないかもしれない)、その前者を担当していた。

ペアレント・トレーニング

ペアトレは10回程度の大筋が決まっている養育支援プログラムで、主にテキストに沿って進行し、毎回宿題が出される。したがって、実施内容についてはレールに乗って進行すればよいので特に困ることはないが、肝になるのは保護者の「実際やってみると難しい」にいかに寄り添うかにかかっているように感じた。

例えば「子どものできているところを見つける」という宿題を出しても、「できないところ」はいくつも出せるのに、「できているところ」はほとんどリストアップできないという場合も多い。そこで、
『食器を片付けられない』ことに注目するのではなく、
『しっかりご飯を食べることができた』ことに注目することを伝えたり、
『忘れ物をする』ではなく『カバンを持って学校に行けている』こと等を一緒に見つけていく。

そういった日常のあたりまえのことを「できていること」として複数の保護者と一緒に発見して共有することで、様々な気づきや応用が連鎖的に生まれていくのは楽しいプロセスだ。

しかし、時々このグループでは扱えない問題を抱えた保護者が来ることもあり、なんとか場をおさめるのに苦労したこともあった。ペアトレはあらゆる親子の問題を扱えるものではもちろんなく、他の支援の形と同様に趣旨や限界をいかに事前に説明するかも重要だろう。

アドラー心理学の観点から

アドラー心理学では、特に子育てや教育において、「褒める」ことはしないのが原則だ。「褒める」ことは賞罰の「賞」を求めるよう子どもを教育してしまうことにつながってしまい、またプロセスではなく結果に注意を向けるよう仕向けてしまうからだとされる。例えば「良い点が取れたね」ではなく「やったね、あれだけがんばったもんね」といったように対応する。

当然、ペアトレのテキストはこのような観点から作られていないため、いくらかの齟齬は出てくる。アドラー心理学の理論や技法を活かそうと思えばある程度のアレンジが必要になるだろう。

とはいえ、全体としてはペアトレとアドラー心理学は割と親和性はあるように思う。宿題の扱い方、子どもの行動への着目、保護者自身の行動の変化を求めること等、大筋では適用しやすい内容となっている。現在の現場でのペアトレの実施状況については把握できていないが、双方の理論を活かす形を求めることは可能ではないだろうか。

ペアトレには”スペシャルタイム”(様々な呼び方があるが)や”ブロークンレコード法”など、現在の臨床の中で役立てられるアイデアがたくさん詰まっていた。この仕事の経験もまた、大きな自分の財産になったと思っている。


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