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【インタビュー】原木椎茸栽培とともに歩んだ50年 〜中山茂廣さん〜

皆さん、こんにちは。
相知町地域おこし協力隊の山口です。

自己紹介から始まり、4本目の投稿となります!

今回は、原木椎茸栽培のプロと蕨野の皆から呼ばれる、
中山茂廣(なかやま しげひろ)さん(74歳)にインタビューを行いました。
中山さんは、蕨野で生まれ育ち、長年棚田でのお米作りと原木椎茸の栽培、林業をされてきました。
その年月、なんと約50年!


「経験だけは豊富だからね」と
原木椎茸の栽培について、たくさんお話してくださりました。

原木椎茸って?

はじめに、原木椎茸の栽培を始めようと思ったきっかけを教えてください。

「蕨野の棚田でお米作りをしていましたが、それだけで生活をすることは厳しく、何か他のことはできないかと考えたのがきっかけです。棚田で野菜を作ることは難しいのですが、椎茸は元々山村地域の産業で、林内栽培に適していたので、始めてみようと思いました。」


椎茸は変温性という特徴を持っていて、気温の変化が刺激となり椎茸が発生するんですが、蕨野は標高が300mほどあり昼夜の寒暖差があります。
なので、椎茸の栽培にはとてもいい環境だったんだそうです。

蕨野の棚田の中にある原木椎茸のほだ場


そもそも原木椎茸栽培とはどんなものなのか簡単に説明しますね。
伐採した天然の木に、椎茸菌を打ち込んで栽培する方法のことを言います。
クヌギやコナラ、シイ類の木を一般的に使いますが、中山さんはクヌギの木を使います。
(ある人が言うには、クヌギの木が1番美味しい椎茸ができるんだとか。)

クヌギを伐採し、打ち込むために一定の長さに切ったもの(これを「ほだ木」といいます)を用意します。
そのほだ木に椎茸菌を打ち込み、2夏寝かせます。
その後、写真のようにほだ木を並べて椎茸ができるのを待ち、収穫します。

ほだ木の準備から椎茸ができるまで、トータル約2年の月日がかかります。

ほだ木にある小さい白い円のところが、椎茸菌を打ち込んだ場所です


近年は、菌床栽培と呼ばれる椎茸の栽培方法が主流となっているそうですが、ずっと原木栽培にこだわって栽培している理由を聞いてみました。

菌床しいたけは、おがくずを固めた20センチ四方ほどのブロック(菌床)に種コマを打ち、湿度の高い真っ暗な室内で発生を促して育てられます。
人工的に養分を与えることで、3〜6カ月のサイクルで次々に収穫できるので、1年中出荷ができるのがメリット。
https://shiitake-himeno.co.jp/blog/341


「自然に勝るものはないからです。自然の中では、適度に光があり、適度に風があります。この「適度に」ということが、椎茸の栽培においては非常に大事なんです。そうした自然の環境下で育った椎茸は、味も食感も全然違います。肉厚でコリコリとした食感と椎茸の濃い香りを感じられることが私の栽培する椎茸の魅力です。」

この場所は、適度な光と適度な風が揃った最高の場所なんだそうです


私が大阪に住んでいた時に椎茸といえば、乾燥されたものというイメージでした。中山さんの椎茸は、味も濃厚で歯応えも抜群、そのまま食べるのが1番の贅沢だと感じるほど、立派な椎茸でした。


高級椎茸『山鮑』

中山さんは以前、『山鮑(やまあわび)』と呼ばれる高級椎茸を作っていたそうです。
今作っている椎茸も十分に立派で価値がありそう。
『山鮑』とはどんな椎茸だったんでしょうか。

「極稀に収穫できた肉厚の椎茸が、「まるで鮑」の様な食感で美味しかったため、『山鮑』という名前で販売することになりました。無農薬、無肥料の昔ながらの自然栽培により栽培した椎茸です。」

引用(http://yamaawabi.jp)


「『山鮑』には、①傘の直径8cm以上・②厚み3cm以上・③重量100g〜150gと明確に定められた基準があります。この基準を満たす椎茸はとても希少であると同時に、栽培にとても手間がかかります。クヌギの原木に椎茸菌を打ち込み、椎茸が成長し始めるまでは他の椎茸と工程は同じです。」

「椎茸が出始めてからが勝負。山鮑になりそうな椎茸を探し1つ1つに袋をかけていき慎重に成長を見守ります。寒さから守り、過乾燥になるのを防ぎ、雨に濡れないようにするために行う作業で、『山鮑』の栽培には欠かせません。」

引用(http://yamaawabi.jp)


インタビューを隣で聞いていた奥様も、「そうそう、あの作業が本当に大変」とその時を思い出していた様子。

「せっかく袋をかけても、山鮑として出荷できるものは非常に少なくて。生産性が合わなくなり辞めてしまいました。若かったなら頑張ろう!と思えたかもしれませんね。」

引用(http://yamaawabi.jp)


食感が違ったのか、香りが違ったのか、他の椎茸とどう違うのか、『山鮑』ぜひ食べてみたかったです。


JGAP認証のおかげで気づいたこと

JGAPとは「Japan Good Agricultural Practice」の略で、直訳すると「日本のよい農業の実践」です。世界的な取り組みであるGAPの基準をもとに、日本の生産・社会環境に合わせた、より実践的な農業生産工程管理への取り組みを指します。
https://minorasu.basf.co.jp/80460


どうしてJGAP認証を取得しようと思ったんですか。

「人との繋がりの中で、椎茸栽培を熱心に行っている人がいると話が広がり、『東京オリンピックに出品してみませんか」と』声がかかったんです。オリンピックに出品するためには、JGAP認証が必要だったので取得しました。」

 原木椎茸の講演会をした時の資料などを見せてもらいました


「JGAPに出すためには、農薬の管理、作業場所の整理整頓、日誌の作成など色んな作業が必要でした。様々な作業を見直している中で、私たちは食べ物を扱っているのだから、作業場を綺麗にしておくことは当然の事だと気づきました。それまでは土足で出入りをしていた場所も土足厳禁にしたり、埃が舞ってしまわないようにシートを引いたりと衛生面に気を使うようになりました。」

日常の中の当たり前になってしまったことって、何がよくて何がダメなのか、気づくことは難しいですよね。
分かっていてもやってしまうこととかもあったりして。

「結局、東京オリンピックは無観客での開催となってしまったため、出品には至りませんでしたが、椎茸を生産する上での感覚が変わる大切なきっかけとなりました。」

中山さんにとって、このJGAP取得に向けた取り組みは認証を得る以上の価値になったんですね。
実は、この中山さんが取得したJGAP認証、原木椎茸としては日本で初めての認証となったんです。
今だに、原木椎茸でJGAP認証を受けている方は少ないんだとか。

最後に

「椎茸栽培ももうあと何年続けようかな‥・・」
「次の目標はないし、そんな気もない‥‥、もうキツか」と話す中山さん。

けれど、お孫さんを自動車学校に通わせてあげるために、これを張り合いにもう少し頑張る。これが唯一の楽しみなんだと話す中山さんはとてもいい笑顔でした。

何かを楽しみだと思うエネルギーってすごく大事ですよね。
長年続けられる原動力がどこにあるのか、ぜひ次の方にも聞いてみたいと思います。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!
次回もお楽しみに!

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