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読んだ本で振り返る2023

晦日。大掃除をして年末の特番を見て、レコ大を見てるとついに2023年も終わるんだなとしみじみしました。

本を読むかニコニコ動画を見ることしかしていなかった僕にとって一年間を振り返るのは簡単なことです。読んだ本を列挙すれば良いんです。

単に列挙してもどうしようもないので、特におすすめできる本をいくつか紹介します。量子論についての本は別の記事で紹介しているのでぜひそちらを。


おすすめの本

まずは万人向けの本から

プログラミングのための確率統計/線形代数

 この2冊はめちゃくちゃ面白いです。特にAIやデータサイエンスに興味がある人で数学に自身がない人にはおすすめです。どちらも一貫した大原則を掲げて、それに沿って話が進んでいくのでとてもすっきりした構成になっています。
 確率の方では「確率は面積だ!」という原則。線形代数の方では「行列は写像だ!」という原則。その一貫した姿勢でそれぞれの概念を見ていくことで統一感のある理解が得られます。
 さらに、説明が面白く、かゆいところに手が届くQ&Aがたくさん載っていてめちゃくちゃ参考になります。数学がある程度できる人でも応用分野からの新たな視点が得られるのではないでしょうか?

動かして学ぶ量子コンピュータプログラミング

 何度おすすめしたか覚えてないくらいあちこちでおすすめしているんですが、ここでもおすすめします。本当にいい本です!
 量子コンピュータの本の多くは数学、物理、計算機の知識を前提としていて、理系大学生でも読むのが大変です。そんな中でこの本は数式が一切出てきません。とにかく実践あるのみという姿勢で、QFTもグローバーも直感的に説明されています。さらに、量子スーパーサンプリングや量子機械学習などの古い本には触れられていないような話題も扱っていて参考になります。
 タイトルの通りプログラミング重視の内容なので情報系やプログラマの人におすすめです。量子コンピュータは気になるけど数学は自信ないって人にもおすすめです。

白と黒のとびら

 小説です。物語を読み進めるうちに、いつの間にかオートマトンについて理解できてしまう不思議な本です。
 形式言語が魔法の呪文として登場し、オートマトンが祠として登場します。主人公が魔法使いになるための修行をしていく過程を追体験することでオートマトンが理解できるという仕掛けになっています。「形式言語=呪文」という対応のお陰で、「オートマトンの勉強=魔法の勉強」という構図ができてめちゃくちゃワクワクします。
 情報系の人はもちろん、計算理論を専攻していない人も読みやすい本だと思います。何なら言語学とか人文系専攻の人にもおすすめできます。

ファインマン計算機科学

 ファインマンの本はどれも面白いです。中でもファインマン計算機科学はファインマンの思想が色濃く出ていて、計算機科学の教科書の中でもトップクラスの面白さだと思います。
 ファインマンは物理学者なので計算機のイメージがない人も多いと思いますが、彼はロスアラモス時代に計算機での計算を担当していました。その後も量子コンピュータの源流となるアイデアを提唱するなど計算機に精通していました。ファインマンは「自分で理論を再構築する」という思想を持っていて、この本でも計算機とは何か、どうあるべきかなど基本的な問いから始めて一歩一歩丁寧に議論を進めていきます。現代のコンピュータサイエンスはとても複雑なものになってしまいましたが、この本では最もプリミティブな計算機の議論を展開していて、今にも通じる計算機の根本的な部分を理解できます。
 ファインマンが書いているので物理の話も出てきます。なので物理系でコンピュータサイエンスに興味がある人におすすめです。

コンピュータシステムの理論と実装

 きれいな理論だけでなく、実際にコンピュータを作るためにどのような技術が必要なのか。それをハンズオン形式で学べる最高の本です。
 現代のコンピュータは物理的な集積回路から、ユーザーが使うアプリケーションまでいくつもの階層に分けで設計されています。その設計をコンピュータアーキテクチャと言いますが、これは理論を知っているだけでは活用しにくいものです。それで、コンピュータの設計を1から追体験することで実践的に理論を理解し、実際にどのような技術が使われているのか知ることができます。章立てもわかりやすく、すべての章が同じような形で構成されているので読み進めるほどにテンポよく読めるようになる点も魅力です。
 情報系に人は必読です。情報系以外の人も、前提知識がいらない本なのでコンピュータアーキテクチャの入門書としておすすめです。

読んだ本一覧

すべて読み終わってるわけではないです…

1月

プログラミングのための確率統計
ファインマン物理学Ⅲ 電磁気学
動かして学ぶ量子コンピュータプログラミング
プログラミングのための線形代数
線形代数の世界
PythonによるAIプログラミング入門
ネット右翼になった父
ユリイカ1月号
現代思想1月号
圏論の歩き方
圏論の道案内
図式と操作的確率論による量子論
量子力学の考え方
シュレーディンガー方程式
量子情報理論
量子化学 真船
量子計算と量子情報の原理

様子
量子コンピュータの勉強をぼちぼち始める。そのための準備として線形代数と確率をしっかりやろうとしてた。あと、圏論に興味を持ち始める。chatGPTの影響で機械学習関連の勉強をするようになった。

2月

ベーシック圏論
テンソル代数と表現論
はじめての数論
白と黒のとびら
TypescriptとReact/Next.jsでつくる実践Webアプリケーション開発
アンダースタンディングコンピューテーション
ファインマン計算機科学
村上春樹 雑文集
物価とは何か

様子
量子コンピュータの本を読んでいて「テンソル積」が出てきて意味が分からなかったからいろんな線形代数の本を読んでた。春休みが始まって重めの本を本腰入れて読み始める

3月

現代の量子力学入門
ランダウ力学
数学原論
静かな人の戦略書
松坂線形代数
暗号技術入門
FACTFULNESS
量子力学10講

様子
数学原論とベーシック圏論をずっと読んでた。春休みで暇だったから読書量が増える。

4月

グレブナー基底と代数多様体 上
位相の頭
これからの集合位相
行列解析から学ぶ 量子情報の数理
量子力学の反常識と素粒子の自由意志
基礎から学ぶ量子計算
堀田代数
圏と加群

様子
サークルの新歓が忙しすぎてメンタルが終わってた。2年になったから講義で扱う分野の予習とかもしてた

5月

QCQI
エキゾチックな量子
量子論:その数学および構造の基礎

様子
QCQIの勉強会が始まって本格的に量子情報の勉強を始める。QCQIの勉強会は今でも継続中。同時に量子力学の勉強もちゃんとやり始める。片っ端から量子力学の本を読んでた。

6月

眠れぬ夜の確率論
イラストで学ぶ情報理論の考え方
QBism:量子×ベイズ
量子力学の諸解釈
熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相
清水量子論
解析力学と微分方程式
計算理論の基礎
量子情報と時空の物理
甘利情報理論

様子
講義の確率論がきつすぎた。「量子情報と時空の物理」に影響されて情報理論を本格的に勉強し始める。QCQIが計算機の章に入ったから計算機の話題も多めに勉強した

7月

ジョン・ロールズ:社会正義の探求者
正義のアイデア
権力の読み方
コンピュータシステムの理論と実装
幾何学1 多様体
現代思想7月号

様子
テストと課題に追われた一ヶ月だった気がする。政治学のレポートのために正義論について調べてたからそれ系の本が多い。

8月

現代量子力学入門
情報幾何学の基礎
ルベーグ積分と関数解析
量子測定と量子制御
Pythonによる問題解決のためのアルゴリズム設計技法

様子
最初の一週間は期末の勉強してた。夏休みに入ると確率論の影響でルベーグ積分に手を出したり、オートマトンの講義の影響で「コンピュータシステムの理論と実装」をちゃんとやったりした。情報幾何学の微分幾何学の部分だけやったけどいまいち理解できなかった。

9月

統計力学を学ぶ人のために
大学生の解析力学
力学的な微分幾何学
量子情報科学入門
コンピュータアーキテクチャのエッセンス

様子
本を読むよりもネットに転がってるPDFを読むことが増えてきた。QCQIの勉強会とは別に、物理系の人との量子情報の勉強会が始まる。物理系の人と話して物理やらなきゃってなる。

10月

圏論によるトポロジー
現代数理統計学の基礎
統計思考の世界
現代相対性理論入門

様子
量子情報の勉強会で情報理論の章を担当しててそれ関連の調べ物を大量にする。その分読書量は減った気がする。数理統計学の講義の影響で統計ブーム到来。「統計」「情報」「学習」の三分野の融合に魅力を感じる。文化祭準備でめちゃくちゃ忙しかったけどあんまり鬱にならなかった(えらい)

11月

パターン認識と機械学習
代数幾何と学習理論
現代数理統計学
時空の幾何学

様子
引き続き統計と学習の理論に取り憑かれてる。学習物理学とかにも興味が出てくる。QCQI輪読会と量子情報勉強会を軸にして勉強してた。途中で相対論にはまって、一般までやろうとしたけど期末が近づいてきてやめた。時空の話は面白かったからまたやりたい。

12月

MLP深層学習
量子コンピュータが変える未来
基礎からのベイズ統計学
ゲームデザインバイブル
脚本の科学
Reactハンズオンラーニング
シュレディンガーの猫、量子コンピュータになる
コンピュータの構成と設計

様子
深層学習の理論再ブームが来る。量子情報勉強会つながりで始まったプロジェクトのためにゲームとか脚本関連の本をいくつか読んだ。あと別組織の新しいプロジェクトのためにReactとかNext.jsに再入門した。

さいごに

 振り返ってみるといろんな本を読んでましたが、一貫して「情報がこの世のすべて」という思想を持っています。
 情報を操作するのが「計算」。情報から傾向を読み解くのが「統計」であり「学習」。という考えのもと、「情報」「計算」「学習」が興味の根底にあります。情報に量子がついて「量子情報」になったり、計算に量子がついて「量子計算」になったり、学習に物理がついて「学習物理」になったり。「情報」「計算」「学習」を中心として幅広い分野に興味を持っています。
 最終的には「情報とはなにか」「情報を効率よく扱うためにどうしたらいいか」といった問題に答えることに興味があります。そのためなら何でも吸収したいです。来年も頑張るぞい!


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