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Day7 人生は時間をかけて自分を愛する旅(フジコ・ヘミング)

週末は映画を2本、読書を2冊するのが習慣になっています。昨夜いつも通り、ビデオ・オンデマンドで何を見ようかなと作品をウロウロしていたところ、「え!」とおもわず声にだしてそのままレンタルしたのが、「フジコ・ヘミングの時間」というドキュメンタリー映画。

今日はフジコ・ヘミングという人について書きたいと思います。一人でも多くの人に今一度フジコ・ヘミングとその演奏を知っていただき、彼女の生活の愛らしさを感じてもらえたらこれほどのことはありません。

まずは少しフジコ・ヘミングについてご紹介します。87歳の女性。本名はゲオルギー=ヘミング・イングリッド・フジコといい、日本とヨーロッパ・アメリカで現在も活躍するピアニストです。父親はスウェーデン人デザイナーのヨスタ・ゲオルギー・ヘミング、母親は日本人ピアニストの大月投網子、弟は俳優の大月ウルフというアーティステックな家庭でした。

彼女はスウェーデン国籍を持ちベルリンで生まれました。幼少期に日本に移住したのだけれど、父は日本に馴染めず家族3人を残し、1人でスウェーデンに帰国してしまいそれ以来家族は3人になりました。ピアニストの母の教えで6歳でピアノを始め、10歳からピアニストのレオニード・クロイツァーに師事しました。

ピアニストとして活躍しようとした矢先彼女は大病を患い日本へ帰国。母校東京藝大の旧奏楽堂などでコンサート活動を行っていたりしたけれど、貧乏生活が続いていて苦しい期間もありました。しかし、1999年2月に放送されたNHKのドキュメント番組「ETV特集 フジコ〜あるピアニストの軌跡〜」が放映されて人生が一変。大きな反響を呼びフジコブームが起こります。

その後『奇蹟のカンパネラ』のCDデビューを果たし、発売後3ヶ月で30万枚のセールスを記録。日本のクラシック界では異例の大ヒットになり、第14回日本ゴールドディスク大賞の「クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」他各賞を受賞したりしたことから世界を飛び回るピアニストになり、今もそうあり続けています。

彼女の演奏を聞いたことがない人はまず一度聞いてみていただきたいのです。人生のうちでたった6分半。彼女の音楽を聴いて、自分に投資されることをオススメします。私が特に愛してやまないのは彼女が弾く「ラ・カンパネラ」。こちらにYOUTUBEのリンクを貼っておきます。

クラシック界からすれば彼女は異端児なのでしょう。楽譜が正解なのであれば、彼女の演奏が「✖」となることも分かります。独特の間合いやゆったりしたスピードなのでオーケストラや指揮者からも合わせず辛くて叱られることもあります。

でも、このうっとりするような物語感を創り出すことができるのが彼女なのです。彼女の演奏に魅せられた人たちは皆深く感動しています。「この一曲でいい映画を一本見たような気分になる」「音の間が絶妙。ひとつひとつの音に命が吹き込まれている感じ。ひとつひとつの音に意味を持たせている感じ。感動しました」「魂を揺さぶる、とは彼女の演奏の為にある言葉だと痛感します。涙なくしてこのカンパネラは聴けません。こぼれ落ちるような慟哭。それらを誘い、表面化させる力が、彼女にあるのだと思う。芸術とは、そういうものだと思う」といったように。私も初めて彼女の演奏をYOUTUBEで拝見したときに泣いてしまった一人です(笑)

私は彼女の演奏をフランツ・カフカだとかサリンジャーのような小説家の作品と近いものに感じています。一つ一つの音(言葉)に効果的な意味があり、愛と孤独と不安の横溢する繊細な夢の世界を想起させるような圧倒的な表現力。それは彼女の絵画やファッション、生活の中にも表れています。

このドキュメンタリーは、13年間会社員生活を送る私に立ち止まるキッカケをくれました。彼女の感性を解き放ったような生活を見ていると、型にはまっている自分にこれで良いのか…と感じざるを得ません。でも同時に、私の人生は私オリジナルのもの。彼女のように小さい一つずつのことにこだわりを持って丁寧に行えば、それは宝物になるのだとも感じさせてくれます。

人生は怖いくらい自由。何に意味を持たせて、何を貫き、何に時間をかけるかも。それらがいくつも折り重なって貫いた人は輝く。私も彼女のように目の前で起こる出来事や社会情勢、人やモノに対して丁寧に積み上げて自分色を作り上げていきたいと思います。

「エンジェルに試されていると思っているのよ。」とクリスチャンの彼女はほほ笑む。人生は、時間をかけて自分を愛する旅。

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