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【ぶんぶくちゃいな】香港最新見聞:香港の「劣化」とそこに生きる人たち

ちょっとバタバタが続いている中でスキを見つけて、香港に行ってきた。昨年もちょうどこの時期にあるメディアの現地取材のお手伝いで香港入りしていたので、約1年ぶりの現地入りとなった。

行ってみての正直な感想は、「香港が劣化している」ということ。この「劣化」というのはそこで暮らす人たち自身が望んだものではなく、とにかく全体が「いろんなことに手が回らなくなっている」という印象を受けた。

まず、今回は近頃では珍しく、香港の「ナショナルフラッグキャリア」と呼ばれる航空会社を利用した。新型コロナ期以降、この航空会社のチケットは一つ時間帯を外すと一挙にコロナ以前の正規料金の2倍もする価格が提示されるので利用を避けてきたのだが、つい最近、香港人観光客に大人気のディスカウント航空会社が価格を改定したことでふと思い立って価格を比較してみたら、うまくナショナルフラッグの低料金スポットを見つけた。だが、それ以外の選択肢を選ぶと価格は約5倍となっており、ナショナルフラッグといえどもいったいどんな人が利用するのだろう?とクビを傾げざるを得ないシステムになっていた。

ともかく、そんなこんなでなんと今月に入ってチケットを予約して飛んだのだが、そのナショナルフラッグでまず最初に、まさか……と思うようないくつかの事態に遭遇した。

一つは、食後の珈琲や紅茶のサービスが提供されなかったこと。まぁ、行きの便ではちょうどそのタイミングで飛行機が揺れ、「機内サービスを一時中止します」というアナウンスが流れた。これは、つい先日シンガポール航空が気流に巻き込まれてかなり深刻なけが人を出す事故があり、それを受けた措置で仕方のないことだった。

しかし、帰りの便では気流には遭遇しなかったし、さらにいえばもう一つのレーンで食後のコーヒーサービスを提供しているのを目にしていた。だからてっきり自分のところにも来るはず、と思っていたのだが、到着した後で振り返ってみると、それがなかったことに気がついた。なぜもう一方のレーンでサービスがなかったのかはわからない。だが、こうした客観的理由のないサービスのアンバランスさを正常だとはいえないはずだ。

もう一つびっくりしたのが、通路側に座っていた筆者の足にそこを通りかかった客室乗務員がけつまずいたことだった。けつまずかれて筆者自身も初めて「あら?」と気づいたくらいで、それほど足を広げて座っていたわけではなかった。なのに、けつまずいた乗務員はそれで一瞬多少前のめりになりながら、振り向きもせず、こちらに声もかけることもせずに、そのまま前に向かって歩いて行ったのである。

彼がなにごともなかったように振る舞ったのは、たぶんそれが彼の勤務経験上、すでに「よくあること」だからだったのだろう。だが、これまでの同航空の搭乗体験からすれば、またサービス業としてもそれはありえないことで、本来なら少なくとも振り向いて声くらいかけるはずだった。だが、乗務員たちはすでにそういうことにも「慣れっこ」で、あるいは「かまっていられない」状態になってしまっていた。

その原因は、乗務員不足、つまり新型コロナ期に大量解雇した結果の人手不足によるものなのだろう。ネット上にもさまざまな乗客の不満に対して、「以前は複数で担当していた客席ブロックを一人で担当しなければならなくなった」と内部告発者が書き込み、「慌ただしさと忙しさから細かいところに目がいかない」と窮状を訴えているのをよく目にするようになった。

筆者自身はディスカウント航空運賃と比較した結果の搭乗だったので、ディスカウント航空だと思えばそのサービスに文句は言えないと思いつつ、それでも約5倍の運賃を払った(かもしれない)搭乗客はどう思うだろう?と気になった。正直、コロナ前にはほぼ今回と同様の運賃でこの航空会社をたびたび利用していた筆者にとっても、「劣化」イメージはショックだった。

実際に街に降り立つと、こうした「劣化」をあちこちで目にすることになった。


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