【ぶんぶくちゃいな】まだまだ続く、中国の「新型コロナ」戦時気分

前号「『戦勝』に酔う中国政府vs.『戦争』責任を問う市民 」でご紹介した、武漢市中心医院の艾芬医師のインタビュー記事騒ぎ後の1週間、中国ではメディアを舞台に、さまざまな「情報合戦」が展開された。

「合戦」と呼んでいいのかどうか、迷うところなのだが、間違いなく政府はメディアや報道を利用して情報を待つ人たちの心をつかもうとしている出来事が続いた。今回は簡単にその動きをまとめておきたい。というのも、今後もし、今の事態を振り返って考えるときにきっと参考になるような気がするからだ。それくらい、メディアに流れる(流される)情報の一つ一つが意味を持っている。

簡単に今週の中国メディア(ネット中心)に流れた記事の傾向をまとめてみると、

- 海外から持ち込まれる新型コロナウイルスの「輸入例」報道
- 習近平の武漢視察をきっかけにしたらしい、フェーズの変化を思わせる記事(野外医院の閉鎖/湖北省・武漢市の新感染者ゼロ報道など)
- 1月や2月の武漢治療現場の「証言」ドキュメント
- 故・李文亮医師事件の調査報告及び関係者の「インタビュー」記事
- 米主要メディアの中国追放関連

となるだろうか。

もちろん、どれも報道としては当然出てくるだろうし、また出てくるべきものなので、ある意味不思議はないものばかりなのだが、どうも「キレイ過ぎる」のだ。

というのは、突然の「非常事態宣言」「都市封鎖命令」が起こり、一挙にボルテージが上がった恐怖の中で起こったことがすべて報道されたわけではない中で、多くのメディアで予定調和のように似たような傾向の記事が並び、またその多くが削除されずにいつまでも参照できているというのは、中国のメディアウォッチングをしてきた身からすると、ある種の「異常事態」である。

裏を返せば、そうやって記事になる前に「消された話題」がかなりあるということでもある。具体的にどんな話題が消されたのかはわからないが、水面に浮かんでいるこれらの話題記事を広げて眺め、そこから透ける「水面下」を拾ってみたい。

●コロナウイルス逆輸入の「恐怖」

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