【ぶんぶくちゃいな】左派から民主派へ、そして本土派へと転身した香港人ジャーナリストが残したもの

今年も残すところ、あと1週間。誰もが年末の仕事を慌ただしく片付けながら、今年を振り返り始める頃だろう。もちろん、このまま仕事モードでお正月突入の方々もおられるだろうが。

今この瞬間、筆者のフィールドである中国は、3年前から次第に厳格化され、すでに異様ともいえるほど人々の生活を締め上げていた新型コロナ感染措置がやっとのことで緩和されたと思ったら、大感染が始まった。当初、北京など華北地方中心だった大型感染が、ドミノ倒しのように今週に入って上海の友人からも感染報告が上がり始めた。

この「時間差」は、感染しているオミクロン株の「亜流株」の違いによるものらしい。措置緩和と同時に北京で大感染を引き起こしたのはBF.7と呼ばれる株で、専門家をして「上海や広東省の感染例より症状が重いようだ」と言わしめた。それが今、上海にも広がり始めたというわけだ。

感染が広がっているのはもちろん大都市だけではない。大都市には若い世代が多く、ネット利用も盛んだから目に付きやすいだけだ。すでに高齢者が多く、また医療体制が行き届いていない農村部からも感染の報告が上がり始めた。今週の「ニュースクリップ」でも取り上げたように、本来なら医療資源が豊富な都会の、それも著名人の間からもかなりの感染による死者と思われるケースが出現しており、そこから推察するに条件的に大きく劣る農村住民の被害はもっと甚大なものになるはずだ。

だが、かつて3年間も厳しい措置を取ることに全力を注いだ政府の存在感はここにきてすっかり薄くなった。コロナがまだ収まったわけではないと分かっていたのに、措置緩和の発表とともにすっかりやる気をなくしたかのようだ。この国には政府に不満を申し立てる制度はなく、また怒りのデモを行おうにも、大感染のさなかでその余力もないまま、人々はパニックに陥っている。医療関係者や専門家は必死にそれぞれのできる範囲で情報発信を続けているが、あの巨大な権力と権限を持つ政府はこのままいつまで知らんぷりを続けるのだろう?

今まさにこうして起きている事態を横目にしながら、それでも1年を振り返り、今年最後のぶんぶくちゃいなでは一人の人物について記しておきたい。

その人物とは、今年10月5日、新型コロナに感染して亡くなった香港人ジャーナリスト、李怡さんである。

●戦時の中国から香港へ

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