【ぶんぶくちゃいな】「香港の未来」に出口はあるのか

香港の民主派にとって、今週は運命に翻弄された、かつてない一週間となった。

まず、「中国NewsClip」でも触れた「ホチキス十字架事件」の“被害者”林子健氏が月曜深夜、正確に言えば火曜日未明に「虚偽の被害届を出して警察を翻弄した」容疑で逮捕された。

事件の顛末は先週の「ニュースクリップ」でもご紹介したが、改めて触れておく。

8月11日午前11時、香港の政党「民主党」が緊急記者会見を開き、党の執行部メンバーが列席するなか、党員の林子健氏が前日夕刻、旺角(モンコック)地区の繁華街で流暢な北京語を話す男二人に薬をかがされて引きずり込まれた車の中で暴行を受けたと発表した。

11日未明に解放されたという林氏自身の説明によると、男たちは、林氏が先月末に肝臓がんで亡くなった中国の民主活動家、劉暁波氏の友人に頼まれ、劉氏がファンだったイタリア人サッカー選手のサイン入り写真を劉氏夫人の劉霞さんに渡そうとしていることを気にしていたという。「劉霞さんとは直接面識はない」と林氏が言うと、男たちは「お国のことだ、お前が(注:香港の)警察に通報してもなんの役にも立たないぞ」と脅し、殴る蹴るの暴行を加えた後に再び薬をかがされて気を失った。

再び気がついたときには真っ暗な砂浜に倒れており、そこが香港か中国なのかわからなかったという林氏はとにかく道路に出てやってきたタクシーをつかまえて帰宅。自宅から民主党トップに相談をしたという。

記者会見で林氏は、「男たちはさらに北京語で『お前はキリスト教徒だろ、国を愛してるか? 宗教を愛してるか?」と尋ねた。たぶん、聞き分け良くしろ、という意味だったのかもしれないが、それがすごく印象に残っている」と述べ、男たちが「十字架をやるよ」と言って林氏の太ももにホチキスの針で十字架状のものを打ち込んだとその傷をメディアに公開した

その暴力的な「十字架」に香港社会は激震。人々の脳裏には、一昨年8月から年末にかけて、出版社を持つ「銅鑼湾書店」の経営者ら5人が香港やタイから直接中国国内に拉致された事件が蘇った。

あの時、中国当局は最初知らぬ存ぜぬという態度を見せたが、その後中国で勾留されていたことが判明。香港の法律に照らせば違法行為である「越境司法」について、その後も香港政府、また当然ながら中国政府からも情報の開示はない。

中国当局が気に入らなければ、いつでも境界線を越えて香港市民を拉致に来る…あのときの悪夢を思い起こし、市民は震え上がった。

●「なぜ中国当局の仕業といえるのか?」

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