200125_武漢市位置

【ぶんぶくちゃいな】武漢肺炎対応に見る中国政府の醜態

まさか、12月からちらほらとニュースの片隅に流れてくるようになった「原因不明肺炎」が気になってはいたものの、このタイミングでここまでの騒ぎになるとは思ってもいなかった。その後、新型コロナウィルスが引き起こすことが明らかになった。以下、今回湖北省武漢市が発祥地とされるこの肺炎を「武漢肺炎」と呼ぶことにする。

以前も書いたが、わたしのSNSには中国の優秀なメディア人が多く揃っている。そのうち、すでに職業的にはメディアを離れた人も少なからずいるのだが、その彼らは「情報やニュースを正確に世に伝える」という姿勢を忘れていない。そんな彼らの論評やニュースの取り上げ方は、日々のニュースチェックのある種のバロメーターになっている。

しつこいようだが、もう一つ彼らについて特筆しておこう。

実は彼らはちょうど2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の大流行をきっかけに、中国で芽生えた「情報や報道の貴重さ」への関心の高まりとともにメディアで大活躍した世代の人たちである。そんな中国メディアの勃興については拙著『中国メディア戦争』に詳しく書いてあるので興味がある方はそちらを読んでいただくきたい。そんな背景からジャーナリストを目指した彼らの多くは、SARS大感染の原因の一つになった情報封鎖と戦い、またその情報封鎖がもたらした弊害を心から憎み続けてきた。

だから、その彼らが「武漢でなにやら…」とタイムラインにピックアップし始めた肺炎関連報道を決して無視するわけにはいかなかった。だが、その彼らにしても、過去大規模なSARSを経験し、また人間への伝染はなかったものの昨年はアフリカ豚コレラの蔓延が豚肉価格(=中国の物価指数)を引き上げて、社会不安を抑えようとした当局が、春節わずか1週間前になってやっと情報公開するとは思ってもいなかったようだった。

「あの、SARSを経験したのに」――誰もが口々にそうこぼした。

爆発的な患者数の拡大の一方で、現役そして元ジャーナリストたちを激怒させたのは、あの経験をこんなに早く体制内の人びとが忘れきっているという事実だった。ある人は「コロナウイルス」を意味する「冠状病毒」をもじって「もうこれは“官”状病毒だ」と皮肉った。

●武漢という街

ここから先は

7,671字 / 1画像

¥ 300

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。