191010NBA_上海

【ぶんぶくちゃいな】 「カネか自由か」、凄まれたNBAは自由を選んだ

まさか、こんなことになるとは。1週間前には誰もとんと予想もしていなかった事態が起きた。たぶん、ご本人も、そして中国政府自体も。

きっかけは今月5日、一つのツイートだった。「FIGHT FOR FREEDOM / STAND WITH HONG KONG」(自由のために闘う 香港とともに)なんてツイートは、ずっと香港事情を追ってきたわたしからしたらもう見慣れ過ぎていて、あっという間にタイムラインの底に沈んでいくようなものだった。

だが、そのツイートは違った。つぶやきの主はダリル・モーレー(Daryl Morey)、アメリカのプロバスケットリーグ「NBA」のチームの一つである「ヒューストン・ロケッツ」のGM(ゼネラル・マネージャー)だったからだ。

ヒューストン・ロケッツといえば、中国のみならず世界中で多くのファンを集めた、中国出身の選手ヤオ・ミン(姚明)が所属していたチームである。おかげで今の中国ではトップの知名度と人気を誇るチームとなっている。その責任者が、中国政府が「暴徒」「暴動」と断言する香港のデモ隊が叫ぶスローガンを公的な場でシェアしたことに、中国人NBAファンから激しい非難が巻き起こった。

「中国でどこのどいつがこれを発見したんだよ? 中国でツイッター見るのは今はほぼ違法行為だぜ?」という皮肉の声もあったが、そんな「違法行為」に対する疑惑など、「ポリティカル・コレクトネス」の前にはなんの役にも立たなかった。

事態はまず、中国で激しい討伐戦を巻き起こし、ヒューストン・ロケッツのボイコット、そしてモーレーGMの罷免要求にまで発展した。だが、それはさらに大きな騒ぎへと広がったのである。

●「謝罪はしない」とコミッショナー

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